金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司(青山学院大学法科大学院教授)さんと、団塊世代プロデューサー残間里江子さんが、楽しいセカンドライフを送るためのご提案をお届けする番組『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』。
この記事では、「大人ファンクラブってどんな番組?」という方のために、コーナー「大人ライフ・アカデミー」をもとに作成された大垣さんのレポートをお届け。ラジオとあわせてもっと楽しい、読んで得する「家とお金」の豆知識です。
2020年6月6日の放送では、「消費者」「投資家」という耳慣れない言葉が登場しました。
つみたてNISAやiDeCoが流行っているけれど......
今回から何回かにわたって、わたしたちは、金融商品の「消費者」だという話をしようと思います。
つみたてNISAやiDeCoとかで、普通の人が株や投資信託のような金融商品を買うことが身近になりました。そういうわれわれって、金融商品の「消費者」だよねということです。
なぜ念押しするかというと、実は必ずしもそうじゃないからです。
皆さんが企業から商品を買うと、一般には「消費者」として保護を受けます。
ところが、株や投資信託等の取引を規制している金融商品取引法という法律は、銀行や証券会社の窓口で投資信託のような金融商品を買うみなさんを、「消費者」ではなく「投資家」と位置付けています。
では、投資家と消費者はどう違うのでしょう。
投資家とは、簡単にいうと「自分のやっていることが分かっている人」です。きちんと説明しさえすれば、自己責任でリスクがとれる人といってもよいでしょう。これに対して、消費者は、メーカーやお店に比べると「自分が何を買っているか」についての情報に乏しく、対等に交渉する力がない人です。巧みな宣伝に乗せられやすい一方で、騙されると家計に大きなダメージを受けます。だから、消費者保護法という一連の法律があって、消費者は企業との関係では「保護するべき者」と位置付けられています。
確かに、昔は、株式投資をする人はお金持ちでなければ、少ない元手で一攫千金を狙う人が主体だったので、「投資家」という言葉がぴったりあてはまりました。
でも、ある日化粧品をデパートで買った帰りに銀行の窓口で投資信託を買った人を考えてみましょう。
どっちかというと投資信託のほうが化粧品よりはかなり難しそうですけど、その人は、化粧品との関係では「消費者」で、投資信託との関係では「投資家」になります。でも、買っているものがよく分からないという意味では、むしろ、投資信託を買う人こそ「消費者」として保護してあげないといけないようにも思えます。
ところが、法律は反対に、投資信託のような金融商品を買う人は理解能力がある人のはずだから、銀行はきちっと「重要事項説明」さえすれば、その後に損をしても自己責任の問題と突き放してよいと考えるわけです。
でも、投資信託の「重要事項説明」を受けたことのある人で、何を説明されたか完全に分かった人っていますかね。
もちろん、株や投信を買えば値下がりして損をすることがあります。そういうものを買う以上覚悟はできているよね、といわれること自体は当然です。しかし、最近はそういうレベルをはるかに超えてものすごく複雑なものがいろいろ出回っていて、プロの私でも何だかよくわからないものがたくさんあります。そういうものを買わされて「投資家」だからといわれるとちょっと釈然としません。
ところが、政府や偉い先生方はともすると「国民の金融リテラシーが低い」「金融教育が必要だ」などと、われわれの努力が足りないような言い方をします。粗悪な化粧品を買って騙された人に、「化粧品についてのリテラシーが足りない」などといったら、大変なブーイングになるはずです。
そんなわけで、ここから何回かにわたって、金融商品を買う「消費者」の方々に、気をつけておくとよいポイントをお話しようと思います。
大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ
◆放送日
土曜 6:25~6:50
◆出演者
大垣尚司(青山学院大学教授・JTI代表理事)
残間里江子(団塊世代プロデューサー、club willbe代表)
鈴木純子アナウンサー