金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司さんと、団塊世代プロデューサー残間里江子さんが、楽しいセカンドライフを送るためのご提案をお届けする番組『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』。4月からは毎週土曜日の午前6時25分~6時50分にお引越し!
この記事では、青山学院大学 法科大学院 教授を務める大垣さんが、放送された内容をさらに詳しく、読んで得するコラム形式でご紹介していきます。
2020年4月25日の放送では、コロナ渦の日本において多くの人の関心事である、お金の話。給付金や融資のメリットやデメリットについてお話ししました。
10万円が給付されることが決定しましたが......
新型コロナウイルス関連の経済対策で、国民一人あたり10万円の給付が決定しました。
給付金なら、国民全員に審査不要でいきわたりますし返済が不要ですから、おいしい話のように思います。
でも、よく考えてみると、国がくれるお金って、もともとはわたしたちが払っている税金なので、大きな目で見れば自分で自分に払っているようなものです。
そして、最近は予算の額に対して税金が半分程度しかなくて、残りは国債、つまり借金で賄っています。
さらに、その国債はというと、日本銀行が買っているわけなので、ある意味で、お札を印刷機で刷ってみんなに配っているようなところがあり、経済学者の中には、そんなことをすると、お金の価値が薄まってインフレになるだけだと言う人もいます。
でも、わたしは、日本という国にはまだまだ地力があるので、この危機状態にあって、これまでの貯金を払い出しているか、少なくとも、これからの稼ぎを先取りしている状態なので、みんなが、それで乗り切れれば、最終的は辻褄があうはずだと思っています。
ただ、国の地力というのは、結局は、みなさんひとりひとりの力です。なので、今一番大切なことは、コロナ後の復興に備えて、みんなが無事で乗り切ることにあります。
この「無事」という言葉には、コロナにかからず健康であることと、経済的に困窮しないということの二つの意味があります。
10万円の給付金は、経済的な困窮をなんとかしようという施策です。実際、経済全体がストップしてしまって、経済的に苦しくなっている人がどんどんと増えてきています。
つなぎ融資が重要
ただ、これを配るのに時間をかけていては意味がないです。さらに、国民一人10万円というのは全体ではものすごい金額ですけど、さすがに、お店とかで苦しい人に10万円あげても焼け石に水です。
コロナを乗り切るには、もう少し大きなお金をフォローしてあげないといけません。
ここで重要なのは、不足資金を借りる融資の制度です。実は、融資の方は、個人事業主でも数千万円貸してもらえて (たとえばこちらを参照)、さらに、元本の返済は当面不要で、返済期間も15年から20年と長期間に設定できて最初の数年は元本を返す必要がないように作られているものが多いのです。
コロナで皆さんが一番苦しいときは、金利だけをチョコチョコ返済し、本格的に返済を始めるのは落ち着いてきてからということですね。
こういう融資をつなぎ融資といいますけど、これをまずは、迅速/機動的に貸して上げることがものすごく重要です。
その先にはDESを展望(deathじゃない!)
そして、コロナ後にもう一つ提案したいのは、先日エコノミストの高田さんもおっしゃっていた、資本注入です。借入れは元本を返さないといけませんが、株式のような出資金は儲かるまで返す必要はありません。
ちょっと難しい話ですけど、金融の世界には、デット・エクイティ・スワップ(DES、Debt Equity Swap)という仕組みがあります。借金(デット)を資本(エクイティー)と交換(スワップ)するということです。
銀行が危機に陥った会社を救済するために、融資を株にかえて、返済を待ってあげるために使われる仕組みです。
今回コロナを乗り切るために5,000万円のつなぎ融資を受けたが、とてもすぐには返せそうにない。そこで、国がこの融資を株にスワップしてあげる。
国が株主になるというのはあまり気持ちのよいことではないかもしれませんけど、大きな目でみれば、コロナからの再興に国が投資をするのはごく自然なことです。お金を貸してよいなら、投資も同じです。日本全国でやれば、まさに日本の未来に投資していることになります。それこそ国のやるべきことです。
国は、ここまで官民ファンドなどといって、巨額の投資資金を使って、つぶれかけた大企業を救ってきています。こんどは、コロナで傷んだ中小企業を救済してはどうかというわけです。
大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ
◆放送日
土曜 6:25~6:50
◆出演者
大垣尚司(青山学院大学教授・JTI代表理事)
残間里江子(団塊世代プロデューサー、club willbe代表)
鈴木純子アナウンサー