金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司さんと、団塊世代プロデューサー残間里江子さんが、楽しいセカンドライフを送るためのご提案をお届けする番組『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』。4月からは毎週土曜日の午前6時25分~6時50分にお引越し!
この記事では、「大人ファンクラブってどんな番組?」という方のために、コーナー「大人ライフ・アカデミー」で放送された内容を、大垣さんによるコラム形式でお届けします。青山学院大学 法科大学院 教授を務める大垣さんが、聴いて、読んで得する「家とお金」の豆知識をご紹介します。
子供が住宅購入。資金援助はどうやって行う?
今回は、世田谷区の匿名希望の方からお葉書をいただきました。「2020年5月に、長男が都内にマンションを購入します。その資金の一部1,000万円を援助するに当たり、贈与ではなく貸与とするための書類手続き、注意点について教えていただけますか」とのこと。
たぶん、贈与だと贈与税がかかるということを懸念されていらっしゃるのではないかと思います。
返してもらうつもりがないなら、特例があるので贈与でも良いかも
まず、もともとあげるつもりだけれども、贈与にすると税金がかかるから、という理由で「貸したことにする」のはあまりおすすめできません。というのも、親子間の住宅資金の贈与については非課税の特例があるからです。
⇒詳しくは国税庁タックスアンサーNo.4508
1,000万円ぐらいであれば、贈与税はかからないかわずかですむ可能性が高いと思います。
相続税を支払わせてしまう可能性も!?
また、返してもらう気がないのに貸したことにしていると、ご自身が亡くなられたときに、借主である息子さんが貸主でるあなたの地位を相続して一体になってしまいます。そうすると、自分で自分に借金を返しても仕方ないので、債務は消滅します。これを民法の難しい言葉で「混同」といいます。それだけならよいのですが、債務が消滅するとその分息子さんは利益を得たことになりますから、この金額について相続税がかかります。この場合には、贈与のような特例はありませんので、贈与しておけばよかった......と後悔してしまう可能性がないとはいえません。
返してもらうつもりなら
これに対して、子どもを甘やかせたくないし、老後にお金もかかるから本当に返してもらうつもりだということであれば、返し方をきちっと紙で残しておくことと、税務署とかから「ほんとは贈与じゃないか」とあらぬ疑いをかけられないよう、返してもらう口座をきちんときめて返してもらっていることが証拠として残るようにしてください。
要するに、贈与にしても貸与にしても、契約というものは、できるだけやろうとしていることに素直にしたほうがよいということです。
借用書、どんなことを書く?
借用書の内容ですが、返してもらうことがはっきりしているなら、別に専門家を入れてまでやる必要はありません。入れ込むポイントは、
・いくら借りたか。(補足参照)
・最終の期限はいつか。25年とか長期でかまいません。
・元本の返済はいつから始めるか。最初は大変でしょうから、5年据えおいて、その後20年間毎月1/240ずつ(1,000万円だと月4万2千円ぐらい)返すといったかたちがよいかもしれません。
・金利はゼロでも構いません。細かいことを言うとその分贈与が生じていることになりますが、贈与税がかからない1年分の金額である110万円の枠の中で収まると思います。
・あと、振り込む口座を具体的に決めておくとよいと思います。
補足:契約書は、息子さんが「私____は、本日貸主______より以下の金額を借り受けました。ついては、その返済については以下の条項に従って行うことに合意いたします。」という感じで始めます。一般の借入契約はお金を実際に受け取らないと成立しないことになっているので「借り受けました」と過去形で書くようにしてください。
老後のめんどうと相殺してもよいのでは。
もし、老後に同居してめんどうをかける可能性があるなら、返済方法の特約というかたちで、「返済期間中に貸主が借主と同居することになり、借主の介護・看護を受けることになったときは、そのための費用を返済額と同額とみなして毎月相殺します」としておくといった工夫も考えられます。人生100年時代、1,000万円贈与したら、長生きしすぎて、結局足し上げてみると1,000万円以上子どもに負担をかけるといったことがないとは限りません。今後、こういう工夫で、子どもに扶養されているといった負い目を軽くして、お子さんと持ちつ持たれつの関係が築く動きもでてくるのではないでしょうか。
ともあれ、1,000万円という大きな金額。お子さんとよく話し合われて、お互いにとってベストな方法を見つけてください。
大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ
◆放送日
土曜 6:25~6:50
◆出演者
大垣尚司(青山学院大学教授・JTI代表理事)
残間里江子(団塊世代プロデューサー、club willbe代表)
鈴木純子アナウンサー