残業とは、1日8時間(週40時間)を超えた時間外労働を指します。これまで原則、残業時間が月45時間かつ年360時間とされており、特別条項付き36協定を締結している場合は、各社が定めた時間内であれば、上限なく時間外労働を行わせることが可能でした。
しかし法改正により、罰則付きの上限が法律に規定され、さらに特別条項を締結する場合も、年720時間と条件が設けられるようになりました。
大企業では、2019年4月1日より施行されており、既に多くの方が、働き方改革での残業削減などを経験されていることと思います。
中小企業では2020年4月1日より施行されることが決まっており、難しいと考えておられる方も多数いると思いますが、働き方改革というもの自体がコストの削減ではなく、生産性の向上が目的であることを理解しておく必要があります。
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目的を達成するための意識改革
労働時間の短縮を労働者や管理者に伝えるだけでは意味がありません。
残業時間削減後のビジョンを明確にし、労働者が効率よく仕事をこなし、企業に貢献したいと感じさせる方法や、残業自体が減ってしまっても業務には影響が出ないように、ツールの導入や外注、取引環境の改善などの環境設備が必要です。
残業代還元による社員の意識改革
一例としてですが、残業時間を削減する代わりに「浮いた残業代の還元」をすることで、社員の意識改革を狙った例があります。
20時間分の残業代を固定支給し、その他に有給取得・残業削減目標に成功した組織へ特別ボーナスを付与する、全社一斉年休取得日・取得推奨日を作成するなどで、社員自身が業務の効率化を積極的に取り組むようになるといったものでした。
残業時間の削減により、取引先との関係性などに問題が生じるのでは無いかと不安がありますが、このような改革を行うことで結果的に、生産性の向上およびクオリティ向上を行い、双方の利益に繋がり好循環を生み出すことをアピールしました。
法案による影響は大きいですが、働き方改革によって得られる成果も十分にあるということを理解し、どのように労働者や管理者、取引先へ理解してもらうかが大事なのかも知れません。
実現方法は様々なものがあると思われますが、2020年2月25日のラジオ『浜松町Innovation Culture Cafe』では、「働き方改革を本当に進めるには」といったテーマに、ロート製薬株式会社 広報・CSV推進部部長の河崎保徳さんとBusiness Insider Japan編集長の浜田敬子さんにお越しいただき、熱いトークを交わして頂きました!
入山 今、日本中で言われている働き方改革。働き方の注意点にはどんなものがあると思いますか。
河崎 まず、ネックになるのは昭和の感覚を引きずっている上司です。アドバイスとしては、仕事は1人でやるものではなく、仲間を作ってやっていくものです。制度はある程度会社が整えてくれても、本当の壁は上司が持っている昭和の感覚。その上司は自分の感覚が悪いと思っていないことですね。ロートでは、4プラス1日休暇を設けました。有給消化率が悪かったので、正月以外にいつでも長期休みを取りやすいようにしました。この時、大事なことは自分の持っている仕事を誰かに任せることなんですよ。仕事の中身をオープンにすることで、個人からチームでやることがキーだと思います。
入山 なるほど。チームでやれば、お互いに助け合って仕事を回していくことができるってことですね。
浜田 たしかに、チームに仕事を任せるって非常に大事だと思います。今回、コロナ騒動で多くの企業が在宅ワークを推奨しています。先日取材をしたNTTグループは20万人の従業員がいて、ここが変わると一気に変わると思ったんですが、実際は多くの人が出社してました。日本でウイルスが蔓延しているのは、社蓄ウイルスのせいなんです。上司に忖度するという企業や在宅の体制が整っていない企業がまだまだ多いんです。このコロナをきっかけに、働き方を見直そうと積極的になる企業とおよび腰の企業がくっきり分かれています。
入山 コロナが会社の働き方を浮き彫りにしてしまったということなんですね。
河崎 在宅はまだまだウチも進んでいなくて、考えなければいけないですね。製造業は一気には難しいので、部門ごとに在宅をできるように考えていきたいですね。
田ケ原 ベンチャーとかは在宅は進んでいる印象はありますね。でも、職種による気がします。たとえば、営業はノルマがあったりもするので、会社に行ってという印象はまだまだあります。
浜田 在宅をやることで、ムダが見えてきます。会議もオンラインにすることで、見えてくるものもあるんですよ。小さいトライをしてみることが大切ですね。
入山 働き方改革で大事なのは、考えることなんですね。定時にきて、定時に帰るのが普通だと思っていたけど、それだけじゃないんだ。
田ケ原 副業がOKな企業だと思うのですが、長時間労働って会社として、どうされているのか気になります。
河崎 副業は平日の夜か土日の副業はOKとしています。ビジネスマンとしての自立を促すためで、自分がやりたいことをやれるよう、会社は関与しない考え方です。副業をしている社員の働く動機も収入補てんという人はいません。自分の成長や社会貢献、コミュニケーションを増やすためにやっているんです。
入山 カフェ運営やビール作りをやっている人もいるんですか。
河崎 ビール作りをしている社員は、奈良の生まれなんです。発酵技術の発祥なのに、地ビールがないと。そこで、友達と作り始めてますね。
浜田 編集が本業なので、テレビやラジオはいわゆる副業なんですよね。副業の仕事の中で出会った人が面白かったから取材してみようみたいに編集の仕事に活かせるものも多くありますよ。でも、世の中の大企業の多くが副業を認めないのは何でだと思いますか。
河崎 本業がおろそかになるということじゃないですかね。自社では副業をやりながら本業にプラスになるということを証明しつつありますが、やる前の昭和のオヤジたちはでっちぼうこうな方に行ったら一人前になるまで帰ってくるな、みたいなところがあるんですよね。でも、やってみると意外とみんな成長することに気付くんですよね。社員を会社が信じることが大事です。成長のための選択肢を準備することが働き方改革に必要なことだと思います。
入山 派遣社員などに対してはどういった課題があるとお考えですか。
浜田 アルバイトや派遣の人などは、リモートの対象ではなかったりするんです。結局は派遣元に聞かないとできないことが多いです。正社員だけでなく、みんなが幸せになれる制度設計を作っていかないといけないと思います。
入山 正社員だけでなく、誰もが幸せになる制度を作って、会社が社員を信じることこそが大切ということですね。会社が魅力的になることが求められますね。
みらいブンカvillage 浜松町Innovation Culture Cafe
放送日:火曜 19:00~21:00
出演者:入山章栄、砂山圭大郎アナウンサー、田ケ原恵美
過去回:Podcast
毎週火曜日、午後7時から生放送でお送りしている『みらいブンカvillage浜松町Innovation Culture Cafe』。パーソナリティは早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さん、砂山圭大郎アナウンサー。アシスタントはVoicy広報の田ケ原恵美さんが担当します。
「みらいブンカvillage浜松町Innovation Culture Cafe」はさまざまなジャンルのクリエーターや専門家・起業家たちが社会問題や未来予想図などをテーマに話す番組です。自身の経験や考え、意見をぶつけて、問題解決や未来へのヒントを探ります。
毎週火曜、午後7時から絶賛生放送中!!