1981年にスタートしてラジオ界に一大ブームを巻き起こした伝説の番組『ミスDJリクエストパレード』。およそ30年の時を経て2016年10月に復活し、現在は日曜午後の人気番組として多くのリスナーに愛されています。今回は、この番組でディスクジョッキーを担当する「ミスDJ」千倉真理さんにお話をうかがいました。
※こちらは文化放送の月刊フリーマガジン「フクミミ」2019年9月号に掲載されたインタビューです。
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人生の「厚み」が込められたメール
――2016年10月に番組が復活を果たしてから3年が経とうとしていますが、千倉さんにとってどんな3年間だったのでしょうか。
千倉 80年代に『ミスDJ』を担当していた頃は何の経験もない大学生だった私をリスナーのみなさんが支えてくださったわけですけど、今回の『ミスDJ』は当時から30年以上が経過してのリスタートになりました。だから、いま番組に届いているメールを読むと、それぞれのリスナーさんが過ごしてきた30年間というか、人生の「厚み」のようなものが込められているような気がします。
私自身、毎週の放送が終わるたびに「ああ、もう思い残すことはないな」というぐらいの達成感があるんです。その意味では、ものすごく「厚み」のある3年間を過ごさせてもらったと感じています。――「厚み」というのは素敵な言葉ですね。
千倉 毎週、たくさんのメールが届いて、いつも放送終了後に時間をとって一つひとつ読ませてもらっています。実際番組で読めるのは一握りの数なのに、こんなに毎週書いてくれるのは本当にありがたいことだなと。いろんな人たちのいろんな思い出をいただいてるという感じがします。
それと通常のおたよりとは別に、こういう自作のリクエストカード(右上写真手前)を送ってくださるリスナーさんもいるんです。一曲一曲に対する思いが尋常ではなく熱いですよね。この作者の「36年振りのこういち」さんもラジオネームに表れているように80年代当時のリスナーさんで、1年ほど前に『ミスDJ』が復活したことを知ってまた聴いてくれるようになったそうです。 他にも「神セブン」(特定のアーティストやテーマについて募集したリクエストの上位7曲をオンエアする人気企画)について、どの曲がオンエアされるのかを競馬新聞風に予想してくれる方や、『ミスDJ』が取り上げられた新聞や雑誌の記事を全部ファイリングしてくれている方もいます。そういう意味では、3年前にリスタートするときには予想もしていなかった出会いと再会がたくさんあります。こんなに幸せなことはないですね。人気企画「神セブン」への思い
――「神セブン」企画は特に、思い入れの強いアーティストさんに対するリクエストが多いと思いますが。
千倉 それだけに私もすごく気合を入れて本番に臨んでいます(笑)。やっぱり、いろんな方の思いが集まってくる場ですから。毎回、偉大なアーティストさんにスポットが当たるわけで、本当に「神」ですよね。
西城秀樹さんが亡くなった後に「神セブン」で特集したとき、「いろんなメディアで秀樹のことをやってたけど、これからはラジオにします」という趣旨のメールをいただきました。ラジオだから大好きな曲をたっぷり聴けるということもあるでしょうし、ファンの方たちもすごく心に残ったみたいで。その後も、秀樹さんの曲のリクエストは毎週のように届いています。 佐野元春さん特集のときは、実際に元春さんがスタジオに来てくださったんです。7曲中の1位が「SOMEDAY」だったんだけど、その場でかかっている曲に合わせて元春さんが口ずさんでくれたんです! しかも曲が終わった後にご自分で「いい曲だね」って(笑)。そういうエピソードも含めて「神セブン」は毎回奇跡のような楽しさがありますね。時を越えて「今」を楽しむ
――千倉さんご自身は、ラジオというメディアの醍醐味はどんなところにあると思いますか。
千倉 なんなんでしょうね、この魅力は。ラジオの前にいる人のつぶやきがメールに乗って「聴こえてくる」し、それについてまた番組で話すこともできるし。本当に普段着というか、飾らないメディアなんだと思います。私は、オンエアのときにはアクセサリーや腕時計といった装飾品は全部外してマイクに向かうんです。ヒールのある靴を履いてきた日は、それも脱いで裸足になったり(笑)。理由はよくわからないですけど、「これっきゃない」というか。オンエアする楽曲にもそれぞれ表情があるし、その曲にみなさんの思いも込められているの
で、うまく伝わりますようにという気持ちでいつも本番に臨んでいます。
あと、リスナーさんも「ラジオにしか話せないこと」があると思うんです。今日の放送でも、お母様を亡くしたばかりの方からのメールを読んだんですけど、ご自身も「心の整理ができていなくて、何と言っていいかわからない思いを書いてしまいました」と。私もそこで悩み相談をするわけでもないし、解決策があるわけでもなくて、そのメールを読んで曲を一緒に聴くだけなんですけど。ただ、この番組が一つの思いをぶつけることができる場所でいられることがうれしかったりします。――10月で放送3周年という節目を迎えます。今後に向けての抱負などをお願いします。
千倉 80年代の当時はリスナーさんたちも私も若かったですけど、今はみんな疲れやすい年代に突入しているわけじゃないですか(笑)。でも、10代、20代の頃に抱いていた熱い思いは、そのまま今の番組に息づいています。番組では80年代の曲をオンエアすることが多いわけですけど、それは「昔は良かったね」という懐メロとして思い出すのではなく、当時の息吹をそのままに今ここで再現して、「この先の人生もがんばりましょう!」と前を向くための時間なんだと思っています。
今後は、どこかのタイミングで番組イベントを開催したいです。やっぱり、リスナーさんと直にお会いしたいですよね。やるやると言いながらなかなかできていないですけど(笑)。あの頃から時間を重ねて、素敵な大人になったみなさんとお会いしたいです。千倉真理(ちくらまり)
東京都出身。成城大学卒。大学1年生当時の1981年、文化放送『ミスDJリクエストパレード』のオーディションで優勝。同番組のDJとして1984年3月まで出演。その後、文化放送で『千倉真理の地球はまあるいよ』、『港区海岸一丁目』などの番組を担当。2016年10月から32年ぶりに『ミスDJリクエストパレード』のレギュラーDJを務める。
番組概要
■番組名
『ミスDJリクエストパレード~8116サンデーアップ!』
■パーソナリティ
千倉真理
■放送時間
毎週日曜日 午後13時~15時