文化放送「The News Masters TOKYO」内で展開中の経営者の素顔に迫る「マスターズインタビュー」。今回のお相手は、フランスベッド株式会社の池田一実常務取締役。大学卒業後にアメリカに留学し、帰国後は大手電機メーカーを経て、2008年にお父様が社長を勤めるフランスベッドに入社。日本人の眠り、寝具・家具業界の今、経営者としての心構えなどを「The News Masters TOKYO」パーソナリティで、プロゴルファーのタケ小山が迫った。
◆3代目として生まれて
フランスベッドの創業家・池田家の3代目となる池田常務。お父様から言われたことは無いが、「フランスベッドに行くんだろうな」とは心の片隅で思っていたという。そんな想いを抱きながら、大学卒業後はアメリカへ留学。しかし、帰国後、すぐにはフランスベッドに入社しなかった。
池田「”最初からフランスベッドに入社するより、外で勉強した方が良い”と父から言われました。自分も、自力でどこまでやれるのか試したいと思っていました。」
選んだ道は、大手電機メーカー。家電や新しい物が好きという気持ちが後押しした。そこで担当したのはノートパソコンの飛び込み営業。会社四季報をめくっては、電話を片っ端からかけるというアプローチ方法でアポをとり続けた。気になる割合はと言うと5%。100軒に5軒アポを取ってもらえ、訪問先の企業では、自身の所属する大手電機メーカーのブランド力を体感。それを押し出した営業で結果を残した。
◆フランスベッドの由来はソファーベッド!?
いまでこそ、寝具・家具のイメージがある『フランスベッド』。しかしその前身は、『双葉製作所』というスクーターのシートなどを下請けで作る会社だった。
転機が訪れたのは1956年。双葉製作所が日本で初めて、ソファーベッドを開発・展開したときのことだ。これまで、欧米に比べて狭い日本の住宅環境では、ソファとベッドを両方置くのが難しかった。しかし、その両立を「ソファ+ベッド=ソファーベッド」が実現し、爆発的なヒットを記録。
その商品名こそが、「おフランス」の高級感を打ち出した『フランスベッド』だったのだ。
これを契機に、これまで掲げていた「双葉製作所」という会社名を「フランスベッド」に変更。(※現在では、国名は企業名につけられない)今に至るのである。
◆もうすぐ創業70年。眠りにこだわるフランスベッド
「寝る」ことに関しての興味は年々高まりを見せ、今では数多くの寝具が販売されているが、フランスベッドは、他のメーカーとどう差別化しているのであろうか?
池田「そもそもベッドは、アメリカから来たものであるため、そこに住む人の体型から環境まで日本とは全く異なると言っても良いです。フランスベッドでは、人間工学に基づいて、体型や寝つきの良さ、個々の特性にあったマットレスの開発に力を入れています。色んなマットレスを試してもらい、そこからしっくりくるものを利用してもらうのが良い」と語る池田常務。それを聞いたタケが素朴な質問を投げかける。
タケ「いま、マットレスの種類はどれくらいあるんですか?」
池田「1000種類くらいです。ショールームの中では、色んなマットレスを体感していただいています。」
この膨大ともいえるマットレスの豊富さもフランスベッドの自慢だ。
フランスベッドには、「寝姿勢測定器」というものがあり、ある程度個々に合ったマットレスが出てくる。それをベースに、感触や固さなど、データ以外のきめ細かな好みを調整&カスタマイズ。「最適なものを選んでもらいたい」という想いを突き詰めたところ、種類が1000まで増えたのだ。ホテルに泊まるとわかるが、全てのマットレスがジャストフィットするわけではない。
「どこまで、しっくりくるものをコンサルできるのかが、弊社の役目です。」と池田常務は語る。
◆寝具の未来
少子高齢化の中で、次の手が必要になる寝具・家具業界。フランスベッドは、特に介護に資本を注入しているという。出荷状況はと言うと、高級品の出荷実績が増えている一方、中級品の出荷が減っており、「安価なものか高級品か」の二極化が進んでいるという一面もあり決して上手くいっているとは言い難い。
タケ「打開策と言うと何になりますか?」
池田「睡眠工学、人間工学といったデータ的な分析をさらに深堀りしていきたいですね。人生の三分の一は睡眠と言われています。いかに気持ちよく寝てもらえるか、気持ちよく起きてもらえるかを追求します。」
もちろん、フランスベッドの舞台は国内のみにあらず。海外マーケットについても聞いてみた。
タケ「海外展開は、いかがでしょうか?」
池田「今は韓国・台湾など、東南アジアに展開していますが、特に韓国から一番注目されています。韓国は、日本と同様に、高齢化が進んでいるので、電動ベッド、介護用ベッドのニーズがあります。」
今後はアジア以外にも、ヨーロッパ、アメリカへも攻めていきたいという池田常務。少子高齢化は日本だけの問題ではないのだ。
◆経営者としての生き方
フランスベッドの創業家に生まれた池田常務。大手電機メーカーの営業を経験し、取締役にまで上り詰めた今、そのサラリーマン人生を振り返る。
タケ「サラリーマン人生で影響を受けたのは、どんな人でしょうか?」
池田「父って言った方がいいですかね(笑)自分がやろうと決めたところにまっすぐ進んでいく力は本当にすごいと思います。」
過去にこのマスターズインタビューに出演した方々の多くは、「人の意見を聞かない」タイプが多かったが、2代目社長であり、池田常務の父・池田茂さんも例外ではないようだ。しかしその反面、求心力と突破力には目を見張るものがあるのだそうだ。
池田「できないといったらそれで終わり。ダメだと思ったらそれで終わり。メーカーなので、商品を作ろうと思った時にどこまでバイタリティと突破力を持って商品化にこぎつけるか。やっぱり気持ちの部分も非常に大事です。社長、社員含めて、そういった突破力っていうのは誇れると思います。」
最後に経営者として、創業家3代目として、池田常務は会社の未来をどう考えているのだろうか。タケは最後にこう聞いてみた。
タケ「今後の夢や戦略はありますか?」
池田「仕事をしていく中で重要と思っているのは、社員が充実した社会人としての生活を送れるか。フランスベッドで仕事して良かったと思える会社を目指したいなと強く思っています。」
社員の充実した生活を願うフランスベッドの池田常務。しかし、充実を願うのはそこだけではない。日本だけでなく、韓国をはじめとした国々でも迎えている少子高齢化の時代。得意とする介護用ベッドを引っ提げて、フランスベッドは世界をどのように席巻し、充実の輪を広げていくのか。今後の展開にも注目である。