富士通でSEとして活躍し、同時に働く母でもあった和田さんは、共働き家庭の家事問題を解決すべく、安くて手軽な「家事代行マッチングサービス」を立ち上げた。The News Masters TOKYOのパーソナリティ、料理が得意なタケ小山が最近気になっていたニュービジネスの担い手にインタビューを敢行した。
◆やってみてわかった、働くママは大変すぎる!
会社員時代、いつか起業をという野心があったという和田さん。会計ソフト開発のSEとして活躍し、その後MBAへの企業派遣留学を経て、新規事業にも従事した。結婚しても仕事は続けるという覚悟はあったが、実際に子どもが生まれてみると、育児と家事、仕事の両立は予想以上に大変だった。
「やる気だけではどうにもなりませんでした。赤ん坊は頻繁に体調を崩すし、看病で自分も風邪をひいてしまうし。最初の半年は親子で体調との闘いでした。働き始めて1年か2年で働くっていいな、仕事ができる人生はいいなと実感していたので、家庭を持っても働く覚悟はありましたが、実際にはとても大変でした。」
◆和田さんとパートナーの家事・育児分担は?
仕事を続けるために、家事や育児をどうしていたのか?タケは率直に聞いてみたくなった。
「夫には、母になっても仕事を続けたいとしっかり宣言しました。女性には選択肢が沢山あるように受け取られがちなだけに、どの選択肢をどれだけ真剣に取り組もうとしているか、キャリアに向かう気持ちを相手に理解してもらうことは必要です。さらに、家事の分担についても、向き不向きで決めるとよいと思います。男女のイメージじゃなくて、ゼロベースで考えるべきです。うちは私が洗濯、夫が料理、掃除は気が付いた方という風に決めましたが、掃除は誰もやらなくなりました(笑)。そもそも!共働き家庭の家事は、二人で分担してもこなせないほどのボリュームなんです。」
事実、家事や育児は2人でも完璧にはこなせない。しかし、解決策はなにかある・・・そしてその1つが家事のサポーターを見つけることだというのだ。
◆働くママのために、自分が家事代行ビジネスを始めよう
勤めていた当時、和田さんは家事・育児に余力を残すために、仕事のチャンスを何度も逃した。家事負担のために仕事に全力で臨めない女性があまりにも多い、実感とともに一大事だと思った。他の共働き家庭の女性にも同じ問題が起きているなら、自分がスピード感をもって状況を打開するサービス、家事や育児を代行する事業を始めないといけない!使命感と情熱が大企業を辞め、ベンチャー事業を興すエネルギーになったという。
「自己資金200万円で小さく始めました。起業のテーマも、自分にとって切実なテーマを選んだことで、気持ちが続いたのだと思います。気持ちが続けば、どんな問題も乗り越えることができると思います。」
現在は、都内にオフィスを構えているが、起業当初はシェアオフィス利用。一時は倒産寸前になったこともあったが、徹底したコストカットで乗り切った。
「大企業の感覚で人件費を使い、時間をお金で買っていると資金がもたない。時間も工夫して捻出するべきだと気づき、経営の考え方が変化しました。ベンチャー経営のだいご味は、不足するリソースをどうコントロールし、結果を出すかということにあると思います。葛藤もありますが、とてもやりがいを感じています。」
◆転職をしたい、起業しようかと思う人にアドバイスは?
「迷っているよりは、小さくやってみることですね。資本金200万円でも多すぎると思うなら10万円でも起業してみるといいと思います。その道がベストかどうか、動いてみると情報が集まってくるものです。考えているだけではなく、一歩進めてみるとよいというのが実感です。失敗したとしても、そこで得た経験や情報が次の一歩に役立つもの。恐れることはないと思いますよ。」
温かな母の顔もある。この日も体調の悪いお子さんを連れての出勤。働く母を応援する企業だけに、社長からして子連れ出勤OKな体制なのだ。しかし、穏やかな人柄とともに、経験に根付いた言葉の端々には時代を捉えた経営者の敏腕さが感じ取れる。タケは、さらに質問を重ねていく。
◆タスカジブランドとは?
「家事が助かる=タスカジ」働く人も「タスカジさん」と呼ぶ。利用者が「ウチのタスカジさんはね・・・」と気軽に話題に出せるように「ハウスキーパー」ではない名前を決めた。
タスカジのサービスはシンプルだ。インターネット上のタスカジのサイトにアクセスして、ユーザー登録をしたら、1500円/1時間~という安価で、自分のライフスタイルにぴったりな家事を提供するハウスキーパーさんと出会える。ネット上で完了する手軽さと、ユーザーレビューをチェックして頼む相手を選べる安心感から人気が広がってきた。詳しい利用方法やサービスは「タスカジ」サイトをご覧いただくとして、昔からある家政婦相談所や既存の家事代行サービスとはどこが違うのだろうか?
利用者が使いやすい価格、安心感
「既存のビジネスモデルよりも安価に設定し、普通の人が日常使いする家事代行をやりたいと思っていました。ある時、海外のハウスキーパーが個人契約だという話を聞き、そうかと。タスカジのビジネスモデルも、個人と個人がネット上で契約ができる仕組みを提供するもの。こちらは双方の間に入らないようにしています。サービスの品質管理やスケジュール管理もしないビジネスモデルを選択することで、管理コストが利用者に転嫁されない仕組みができたということです。
さらに、既存の家事代行のモデルでは、人を選べないということもありました。家の中に入って家事をサポートする人なのに、どんな人かわからないのは不安ですから、「スキル」だけではなく「人柄」までわかる方法として、通販サイトによくあるユーザーレビューを採用しました。」
働き手のやりがい
タスカジでは、1時間の利用料1500円(最高額は2600円)なら2割の手数料を取るので、働き手には1200円(最高額で2100円)渡るという計算になる。一般の家事代行業と比べても、働き手の取り分は各段に多い。利用料の設定も「タスカジさん」が金額を設定でき、腕次第で稼げる。いいレビューがついて、人気が出れば、高く設定しても予約が入るという仕組み。
「自営業的に仕事を管理できるし、ビジネスが可視化されているので、フェアで働き甲斐があるようです。契約は個人ベースですから、利用者と対等なパートナーシップで家庭経営するというイメージです。家事に限らず、自分のスキルと空き時間を売るというビジネスは今後増えていくと思いますが、『タスカジ』が家事代行とか、主婦の働き方の代名詞になるといいと思います。」
予約が取れないスター家政婦さんが誕生
最近では「タスカジさん」の中からマスコミに登場するカリスマが登場している。伝説の家政婦の存在が、仕事のイメージを高め、働き手を増やす一助にならないか、実は人手不足の家事代行業界としても期待が大きい。カリスマにはどんな人がいるのかと聞いてみると・・・フレンチの料理人でフランス家庭料理の名人や、元は保育園の栄養士で、子どもが喜んで食べる野菜料理を3時間で15品以上作ってしまう人、整理整頓の達人など。すでにレシピ本がヒットしている人もあり、3月には2冊の新書籍が発売になるそうだ。
彼女たちだけではなく、他にも予約がとれないタスカジさんも増えてきた。ニーズは高まるばかりなのだが、需要が追い付かないのが悩みだそうだ。
「利用者のほうが圧倒的に多くて、人手が足りません。価格を上げてしまえば応募者も増えるけれど、それでは初志と違ってしまう。今は人材確保が大変です。主婦に向いている仕事だと思うのですが。」
女性が活躍する社会、これからの家庭はどうなる?
少子高齢化で人口が減り、女性の労働力が期待され、ライフスタイルの多様化が進みつつある。家事の担い手も不足していく中、家庭経営の考え方も変わらざるを得ないと和田さんは言う。
「タスカジさんのようなハウスキーパーがパートナーとして家庭に入り、家庭経営をサポートする時代が来ると面白いなと思います。家族形態も、核家族から拡大家族へという時代です。新しいライフスタイルを提案していきたいと考えています。」
ビジネスとしても「家事代行」のニーズは高まるばかりということだ。ただ和田さんが考えるビジネスは、ただ売り上げを上げるということではない、社会貢献という面でもコミットしていけるという確信もあるのだ。和田さんが考えるタスカジの役割には、両輪ある。両輪の一つは利用者、もう一つは働き手だ。
「家事代行を利用すれば、家事にひっぱられて仕事が思うようにならないという状況の解決にもなりますし、当然女性の社会進出にも貢献できます。利用者が増えて一般化すれば、生活も変わると思います。家事は女性がすべきという固定概念が薄れ、罪悪感も軽減されるのではないでしょうか。
両輪のもうひとつ、働き手については、専業主婦は社会復帰が難しいといわれていますが、家事には市場があり、ベテラン主婦の家事スキルは希少で、価値が高いものです。タスカジのような家事代行が、主婦のスキルを活かしたセカンドキャリアとして一般的になるといいなと思っています。予想外だったのは、働き手のみなさんがすごく楽しそうだということです。人に喜ばれているという自覚が喜びになり、仕事が楽しくなる相乗効果につながっているんですね。」
日本のお父さんに要望
最後にタケは和田さんに、日本のお父さんたちへの要望を聞いてみた。
「働くお母さんたちは、どうしたら仕事がうまくいき、家族や子供にベストか、常に考えているんです。一人で抱え込んで悩んでいる人が多いので、奥様に一声かけて、一緒に考えて、解決していこうと思っていただけたらいいなと思います。」
「いやあ、面白かった!」インタビューを終え、タケ小山満面の笑顔である。世の中の変化を肌で感じ、自分の問題としてビジネスを進める経営者というのは、どんなジャンルであっても共通してすがすがしい印象を受けるもの。「仕事も子育てもあきらめず、できないことは誰か助けてもらう」という方針で、自らも子育てをしながら、会社を盛り上げてきた和田さん、働くママとしての自己採点を聞いてみたら、80点。残りの20点は今後の伸びしろということだった。「タスカジ」がこれからどう成長していくのか、5年後、10年後が楽しみだ。
文化放送『The News Masters TOKYO』のタケ小山がインタビュアーとなり、社長・経営者・リーダー・マネージャー・監督など、いわゆる「リーダー」や「キーマン」を紹介するマスターズインタビュー。音声で聞くには podcastで。
The News Masters TOKYO Podcast
文化放送「The News Masters TOKYO」http://www.joqr.co.jp/nmt/ (月~金 AM7:00~9:00生放送)
こちらから聴けます!→http://radiko.jp/#QRR
パーソナリティ:タケ小山 アシスタント:小尾渚沙(文化放送アナウンサー)
「マスターズインタビュー」コーナー(月~金 8:40頃~)