マスターズインタビュー Master’s Interview

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エージェントのパイオニア 団野村が語る「プロ野球」と「メジャーリーグ」

文化放送The News Masters TOKYO「マスターズインタビュー」。

今回のインタビューのお相手は、KDNスポーツジャパン代表取締役でスポーツエージェントの団野村さん。団野村さんは、1957年生まれの61歳。プロ野球選手として活動後、エージェントとして活動するようになって25年。これまで野茂英雄、伊良部秀輝、岩隈久志、ダルビッシュ有など、数多くのメジャーリーガー誕生の裏方を務めてきた。

※「エージェント」とは…プロスポーツ選手に代わってチームと入団や移籍、契約金や契約更改といった交渉事を行うのが交渉代理人(エージェント)。



<エージェントというお仕事について>



1996年に製作されたアメリカ映画「ザ・エージェント」でも知られるようになった「交渉代理人」。「映画と実在の交渉代理人は違うのか?」というタケ小山の素人目線な問いに、即座に「全然違う」と答えた団さん。続けて「映画は2時間で終わるが、我々は2時間では終わらない」と、名言のように語る。1年間かけて選手との絆を作り、交渉のテーブルに着くまでの情報や資料を知っておかなければならないという。

「エージェントの仕事で大事なのは、労使協定をしっかり学ぶことと、ルールをしっかり理解すること。ルールは我々のバイブル。それに基づいて選手が移動したり、2軍に落とされたり、解雇されたり、更新したり、色々なことが書いてあるので、それをしっかり勉強していかなければならない」と話す。

今まで約25年で100人位の代理交渉をしてきたという団さん。タケが気になっていた「選手が先なのか、球団からこんな選手いない?と言われるのか?」という質問には、様々なケースがあるとしながらも、しっかりとしたまなざしで「代理人になった時に恩師に一番うるさく言われたのが『線を引いた時にどっち側に立っているか』…これを絶対に越えてはいけない。常に選手が一番であるということ。」と断言した。

<プロ野球とメジャーリーグの違いについて>



団さん曰く、大リーグは「野球屋さん」。野球がビジネスで、そこを中心に選手を集めてチームを強くし、競争して勝っていく。そこへスポンサーやテレビ放映など、お金が集まってくる仕組み。一方、日本は全くその逆。野球が中心ではなく企業が中心。企業のイメージを大事にしながら、野球が宣伝広告の一部となっている。力の入れどころが違うのだという。メジャーは選手第一!

だからこそ、日本ではスポーツエージェントは煙たがられる存在であるという。「日本の野球は日本文化に根差している。スポーツ文化は非常に良いことだが、労働問題になってくると、スポーツなのかビジネスなのかの区分けができていない。特にアマチュアの選手がプロに入る時、バンザイして入って来る。そこはちゃんとした教育と理解をしてもらわないと、プロに入るとはどういうことなのか、契約書にサインをするとはどういうことなのか、というのが全くわかっていない」と、団さんは語る。また、「そこに代理人はいない。いないし寄せ付けない。選手にその教育をやると球団側は不利になると思っている。不利ということが結局プロ野球社会を不平等にしている。不平等であるからこそ発展性があまりない」と語った。

<野茂英雄の代理人になった時>



団さんが初めて日本球界からメジャーリーグへ移籍させた選手・野茂英雄。
選手の意思によってチームと新しい契約をしない、または契約解除するための制度「任意引退」を利用して交渉を行った。

タケ小山は、一番気になっていた野茂さんのメジャー移籍について、「どちらが先なのか?野茂さんが団さんにアメリカに行きたいと言ったのか?それとも団さんから?」と話を切り出した。団さんは、知り合いを通じてアプローチしてきた野茂さんとお会いして、あれこれ作戦を練ったという生々しい話を披露してくれた。

団さんは、アメリカの状況、情勢を説明し、ルールを2ヶ月位かけて色々と調べることに。日米間のルールだけではなく、大リーグの歴史は結構古く、労使制度など、選手が辞めてほかのリーグに行ったり、ほかの国でプレーしたりという過去の裁判的な歴史もあり、また、独占禁止法から除外されているなど、そういうことを勉強しながら、どうやったら野茂投手が日本からアメリカへ行けるかを模索した。やがて、こうやったら行けるかな、という1つのシステムを見つけた。日米間だけの協約を見ると、「任意引退選手」はアメリカサイドの契約には含まれている。
日本の球団はアメリカで「任意引退」になった選手とは契約できない。

ところが日本サイドの契約には「任意引退選手」という言葉が含まれていなかった。そこが1つの抜け道だと団さんは考えた。調べてみると、かつて西武にいたデストラーデは「任意引退」をしていた。その後、メジャーに戻ってプレーをしていた。そういう例があったので、これはイケると思ったそう。

メジャーリーグに行くまでに「任意引退」が抜け道になったわけだが、では、「任意引退」させるにはどうしたらいいか?そこが一番難しかったという。

団さんは、近鉄との交渉の中で、当時は全く日本にはなかった「複数年契約」を要求した。1994年、野茂さんは怪我をされてあまり投げられなかった。それを理由に、フリーエージェントになるまであと6年間、球団側に保有権があるので、フリーになるまで保証してくれと。近鉄球団に対して「保有権であなたたちは一方的に鎖で繋いでいるのだから、その分保証してください」という論理で話を持っていった。金額も膨大な金額で、「そんなことできない。これにサインしないなら任意引退しろ」という風向きになってきた。もちろん近鉄サイドは、任意引退になったらアメリカに行くという話は知らない!この団さんの考えた「作戦」は功を奏する。

<ポスティング制度について>



※「ポスティング制度」とは…フリーエージェント権を持たない日本のプロ野球選手が、アメリカのメジャーリーグへ移籍を希望し、所属球団の許可を得た場合、メジャーリーグ球団が日本の所属球団から移籍の交渉権を入札で獲得する制度。

分かっているようでよく分からないシステム「ポスティング制度」についてタケが、
「ポスティングになると球団も儲かる?選手は行きたい時に行けるようになったということ?」という問いに、団さんは強い口調で「違う。このシステムだけは問題だらけで、ポスティングというシステムが問題なのではなくて、ポスティングにいくまでが問題」だという。

(日本の選手がプロに入っていずれメジャーに行きたいとして)プロに入りました。3年たってアメリカに行きたいです。球団はダメ、ダメ、ダメという権利がある。
では、どこでポスティングになるのか?それは、球団がOKしないといけない。OKを出す引き金がないという。
球団側に一方的に権利があり、選手側にはない。選手側が引き金を出せる交渉が出来ていないのが問題。まずは、ドラフトの時にどういう交渉をするかが大事。

<これからの野球界、スポーツ界について>



団さんは日本とアメリカとどちらを重点にビジネスをされているのか?を聞いた。
「両方半分半分。考え方としては、海外の意識を日本の選手に持ってもらいたい。外国においては日本の選手の意識を持ってもらいたい」と団さんは語った。

団さんが代表を務める「KDNスポーツジャパン」とは、選手のマネージメントをする会社で、抱えている選手は25人〜30人位とのこと。
過去に、外国人選手を日本の球団に入れて大成功した例は、ヤクルトのハウエル、デシンセイ、面白い例としてはヤクルトでプレーした後、メジャーリーグのレンジャースと契約したバーネットだという。

スポーツ界に身を置く一人としてタケ小山は、締めくくりの質問に
「野球界、スポーツ界、変えられるとしたらどんなことをやりたいか?」を聞いた。
団さんは、「選手がもっと教育を与えられる場を作りたい。野球だけではなく、労働の部分をちゃんと認識して、社会人として、プロ野球選手として、ただ一球団の選手ではなく、一個人として、どういうところにいって、どういうことをしなければいけないのか。何故こういう契約なのか…「何故」というところを追究していってもらいたい」と語った。

日米球界の橋渡し役となり、道なき道を切り拓いてきた団野村さん。
ダンディで優しいお顔の中にも信念を感じさせるしっかりとした眼差しが印象的だった。

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