文化放送・The News Masters TOKYO、マスターズインタビュー。今回のインタビューのお相手は、「紳士服のはるやま」でお馴染みのはるやまホールディングス社長・治山正史さん。これまで細身のスーツや、しわになりにくいスーツなど画期的な商品を世に生み出しています。そのパワーの源は、どこから湧いてくるのか?プロゴルファーで、The News Masters TOKYOのパーソナリティ・タケ小山が迫った。
◆子供のころにみた商売の原点
最初は、治山社長の原点について聞いてみると「実家はどこにでもある商店街の用品屋さんでした」と語りだした治山社長。幼少期のある日、夜中に店の扉を叩く音で目が覚めた。扉の外には、目を真っ赤にはらした若夫婦が「祖父を亡くして礼服がいるんです!」とやってきたところだった。すぐに礼服の用意をということで、当時店主だった治山社長の父は裾直しを、母はお茶を出して接客していたという。
治山「帰る頃には若夫婦は穏やかな顔で帰っていきましてね。そこに商売の原点を見たような気がしますね。」
スーツを取り扱うということは、冠婚葬祭や人生の節目節目に出会うものなので、ハレの日はもちろんのこと、辛い時にも隣り合わせのビジネスなのだ。
タケ「そこに、喜びもありますか?」
治山「あります、あります。未だに接客しますので。」
社長は、続けてこんな体験も語ってくれた。フレッシュマンのスーツをフィッティングしている時、カジュアルな服で来店していたお客様が、カーテンを開けたら別人のようにビシッとしていた。これをみて、親御さんは「我が子が、こんなに立派な姿に…」と泣くという経験もこれまで体験している。それをみて、「お金に関係なく役に立てている」というやりがいを実感するのだそうだ。
◆無茶も言うけど、底抜けにポジティブ
治山社長の特徴は何と言ってもポジティブな面である。皆さんは、この話を聞いてどう思うだろうか。
治山「1万円なくすとしますよね?その後は、落とさないようにと気をつけますよね?5万円落とす前に1万円で気をつけるきっかけをもらえて、ラッキーということですよ。4万円儲かったということだから。ラッキーでしょ?」
このポジティブさには、タケも動揺を隠せないが、要は、捉え方次第で人生はどうとでも変わるのだ。その考え方は、このエピソードからもわかる。
タケ「無理と言われたことも実現してきました。当時、前代未聞だった脚長スーツやシワになりにくい北京オリンピックのオフィシャルスーツ。これらは、すんなりいきましたか?」
治山「 “宝くじは買わないとあたらない”。やらないと変わらないんです。まあ、ハズレくじもいっぱい買っていますけどね!でも”反省すれど、後悔はしない”の精神です。」
一見無茶と思える社長のアイディアに対し、当然部下から反対意見もでる。しかし、それには普段の振る舞いがポイントなのだそうだ。「社長がまた無茶言っているぞ、しょうがないな」という雰囲気、そしてキャラ付けをしておく。さらに…
治山「根拠がなくても自信満々でいる。(根拠はないけど)絶対売れるから!と言うんです。」
そこまで言われたら従業員も「そこまで言うんなら」となり、周りを巻き込んでいくのが治山社長流でもあるのだ。
◆スーツでフルマラソン、スーツでゴルフ
思いがけない成果を出したこともあった。富士山に登ったときのこと、登る時は普通に登り、頂上で自社のスーツを着用し写真を撮影。あたかも「スーツで富士山に登りました!」という一枚をシャレで年賀状に貼り付けて送った治山社長。
冗談でやったはずが、「次はフルマラソンだな」と友人から言われ、やったことのないフルマラソンをスーツで走るハメに。しかし、社長が走る姿は、社員の大きな励みになり、たまたま翌日に行われた社員の表彰式で、社員にあげるはずのMVP賞を逆に、社員から社長にサプライズ贈呈されてしまった。話はここでは終わらない。次はゴルフの18ホールをスーツで回ることになった治山社長。スーツで回っているため周りからは「支配人が回っているぞ」「アホやな」と話題に。
タケ「その時のほうが、スコアが良かったとか?」
治山「そうなんです。」
タケ「こりゃびっくりだ!大振りしないから!?」
さすが、プロゴルファー・タケ。体に制限がかかるため、大振りしなかったことが幸いし、好スコアへと繋がったのだ。意図して宣伝をするつもりはなかったが、心がけていたことを自分で実演した結果、話題になったり、それが人の励みに繋がったりしていることを我々は知らされた。
◆はるやまホールディングスの働き方改革
今話題の働き方改革についてもきいてみるとこんな答えが、返ってきた。
治山「昨年、ノー残業手当を始めたんです。」
タケ「ちょっと待ってください。残業しないほうが得ということですか?」
「残業しなかった社員に手当を出す」という世間とは逆の試みに耳を疑うタケ。店舗によって、一生懸命な店長ほど夜中まで業務をしてしまい、その下の店員も帰れない。そこで会社の方針として「残業しないほうが得」という整備をしたところ残業時間が劇的に減ったのだ。導入当初、1億円ほど人件費は上がる見込みだったが、それより社員の元気を選んだわけだ。もちろん売上も順調に上がってきているという。
しかし、これにはやる前から「働かない者になぜ支払うのか!」と反対の嵐。一方、治山社長は得意の根拠のない「絶対できる!」というスタイルで押し切った。やってみたら危うい場面もなく、むしろ残業しなくてもパフォーマンスが高い店との不公平感が無くなったのだそうだ。
◆はるやまの未来
タケ「はるやまの未来、どうなってほしいですか?」
治山「服に限らず、ファッションに関わることをどんどん作っていきたいですね。」
ジーンズ、ポロシャツのようなファッションの定番。そうした未来の定番を一つでも二つでもつくりたいと考えている。それに合わせてお客、スタッフが明るく元気に健康に人生を歩んで欲しいとも願っている。その一環として、店舗には血圧計や肌年齢診断の器具を置いたり、サプリメントを置いたり、単にスーツを売るだけではなく、お客様の生活自体を健康にしていきたいという衣替えも社内で実行しているのだ。もちろん、社員が一つの方向に向いていくための環境を社長として作らないといけないとも考えている。
タケ「社長にとって、はるやまはどんな場所ですか?」
治山「はるやまは、”夢を実現する場所”です。私個人の夢、そしてスタッフ個人の夢を実現できる場所になったらありがたいですね。そして行く行くは、はるやまが、世間になくてはならないインフラ企業のようになれたらとも願っています。」
大手競合がひしめく、スーツ販売の世界。それが、インフラ企業に?!とも思ったが、ここまでの話の流れ、これまでの実績から、多少現実離れしたことを実現しても不思議ではない。インタビュアーのタケも、スタッフもそう思いながら治山社長とお別れした。