(かまた みのる)
医師・作家。1948 年東京生まれ。
東京医科歯科大学医学部卒業。
37年間、医師として地域医療に携わり、チェルノブイリ、イラク、
東日本の被災地支援に取り組む。2009 年ベスト・ファーザー
イエローリボン賞(学術・文化部門)受賞。2011年日本放送協会
放送文化賞受賞。
ベストセラー「がんばらない」をはじめ、「なさけないけどあきらめ
ない」「ウェットな資本主義」「アハメドくんのいのちのリレー」
「希望」(東京書籍) など著書多数。
現在、諏訪中央病院名誉院長。
(むらかみ のぶお)
1953年、京都生まれ。
元NHKエグゼクティブアナウンサー。
2001年から11年に渡り、『ラジオビタミン』や
『鎌田實いのちの対話』など、
NHKラジオの「声」として活躍。
現在は、全国を講演で回り「嬉しい言葉の種まき」を
しながら、文化放送『日曜はがんばらない』
月刊『清流』連載対談などで、新たな境地を開いている。
各地で『ことば磨き塾』主宰。
http://murakaminobuo.com
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2023年10月27日
10月22日 第589回放送
年齢を重ねると程度の差はありますが皆さん病気の一つや二つは持っているものです。
その病気とどのように折り合いを付けながら生きていくのか。それは自分のポリシー、
または自身の生き方の哲学の問題と言う『ドクター鎌田の健康講座』をお届けします。
「手術を受けるか受けないか。どういう治療を選択するのか。これは自己決定していく
しかないのです」と言う鎌田さん自身の体験談。2021年に、不整脈の一つ心房細動
の手術を受けました。太ももから管を入れて、心臓の裏側の細動を起こしそうな心筋を
電気で焼く「カテーテルアブレーション手術」です。3泊4日の入院体験でしたが術後
の「12時間ベッドで絶対安静」のつらさが、患者の立場になって分かったそうです。
特に排便は自尊心が邪魔をして、看護師に後処理をお願いするとことが出来ずに我慢。
排泄の問題は自律と自尊心に直結していることを改めて実感したそうです。また、医師
として患者さんと向き合う時は、患者さんにも無理のない方法で、なおかつ適切で有効
な選択をしてもらうように選択肢を示して、患者さんと一緒に考えて共同決定するよう
に心掛けています。AとBのどちらを選ぶかと選択肢を与えても応えられない患者さん
もいるので「ボクが80歳だったらこっちを選びますが、どうしますか」と話し合う。
90歳の軽度の認知症の患者さんが「膀胱がん」になりました。出血を心配する家族か
ら相談を受けて、患者さん本人の「手術はしたくない」という意思を尊重し、寝たきり
にならないようにウォーキングを継続してもらって、手術はしないことで三者が合意。
80歳で解離性動脈瘤が見つかった患者さんも「手術しない」選択をしました。動脈瘤
に注意しつつ内科的治療のみ受けています。年齢を考慮し話し合うのが良医の在り方。
2023年10月18日
10月15日 第588回放送
初対面なのに旧知の仲のように打ち解けて話が弾むゲストは『テルマエ・ロマエ』など
で有名な漫画家・文筆家・画家のヤマザキマリさん。新刊の『CARPE DIEM』
カルぺ・ディエムは、ラテン語で「今この瞬間を生きて」という意味ですが、国境を越
えた生き方をして多種多様な価値観にふれ考えたマリさんが「老いと死」を語ります。
「あたかもよくすごした1日が安らかな眠りを与えるように、よく用いられた一生は、
安らかな死を与える」レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉です。「よく用いられた一生」
とは、人として備えているあらゆる感覚や感情を駆使しつつ、人間として成熟させた生
き方であるとマリさんは解釈。去年、89歳で他界したヴィオラ奏者の母親の生き方が
まさにその通りだったとエピソードを紹介します。破天荒な「ヴィオラ母さん」の死を
通じて気づいたのは、人生を満遍なく謳歌し、あらゆる人としての機能と感性を使い切
った人間の死は、残された人に生きていく糧を残す「利他」にほかならない!と考える
マリさん。17歳でイタリアに渡り各国で暮らしたマリさんが紹介する有名な芸術家の
名言が心に響きます。芸術家は晩年に近づくほど色彩やかになりパブロ・ピカソの絵も
葛飾北斎の浮世絵も、ポルトガルの映画監督マニエル・ド・オリヴェイラ作品しかり。
「夕焼けは雲があるほど美しい」と語ったのはブラジル人作家パウロ・コエーリョで、
人生も同じで、一生を終える時に夕焼けが映えて見えるのは、山あり谷あり紆余曲折が
あった人生ではないだろうかと共感。ソクラテスの言葉「ただ生きるのではなく、善く
生きるのだ」をマリさんは「命を地球の摂理に背くことなく、人間として備えている機
能の修練を怠らず、満遍なく生きていく」と解釈。命の限り人も懸命に生きましょう!
2023年10月13日
10月8日 第587回放送
「日本最古の歌集」と言われる『万葉集』は、元号「令和」の出典になったこともあり
知名度はありますが、内容は古典好きの人を除き「難しそうで遠い存在」に感じます。
そのイメージを一変させる令和の奈良弁に訳した本が話題で、14万部売れています。
『愛するよりも愛されたい-令和言葉・奈良弁で訳した万葉集①-』の著者で社員1人
の出版社『万葉社』の社長でもある佐々木良さんに出版した経緯などをうかがいます。
『愛するよりも愛されたい』は、去年の10月10日に出版。なんと佐々木さんはこの
日に結婚し、結婚式の「引き出物」に入れました。500部刷ったけれど売れないなぁ
と諦めて引き出物にしたところ、参列者が面白い本だとSNS(交流サイト)で拡散し
話題になり更に広がって『万葉集』を素材にした本では異例の大ヒットになりました。
現在39歳の佐々木さんは「京都精華大学」を卒業し美術館の学芸員として働きながら
32歳の時に作家デビュー。瀬戸内海の豊島と直島の本を2冊上梓して、次の美術書の
準備をしていたところがコロナ禍で出版の話は頓挫。出版社に頼れないなら自分でやる
しかないと「コロナ給付金10万円」を使い香川県高松市で出版社『万葉社』を設立。
美術書は準備に時間がかかるので、手早く出版できる企画を考えた末に前2冊で繋がり
のある万葉の時代の都「奈良」に題材を探し、現代の奈良弁と『万葉集』を繋ぐ企画と
して『愛するよりも愛されたい』を着想。タイトルは奈良県出身の人気タレント堂本剛
さんが所属する「KinKiKids」のヒット曲にちなんでいます。なお2019年
に佐々木さんが記した『美術館ができるまで』は、産廃問題の島から「アートの島」に
変貌した豊島の『豊島美術館』の誕生までを追った著者渾身のノンフィクションです。
2023年10月 6日
10月1日 第586回放送
書店に「私のペースでしおりは進む」今秋の読書週間のポスターがありました。一気に
最後まで読んでしまう本もあれば、中には栞がなかなか進まない本もあります。読後に
何かを得られるのが読書の愉しみです。今週は久々の『ボクたちおススメ本特集』です
鎌田さん推薦は、アメリカ人児童文学作家バーバラ・クーニー作『ルピナスさん~小さ
なおばあさんのおはなし~』という明るい絵本。幼い頃のルピナスさんのお気に入りは
おじいさんの仕事場で、遠い国々のお話をしてもらうこと。大人になって世界中を旅し
て、おじいさんとの約束を果たします。おばあさんになって未だ果たしてない約束を思
い出し「世の中をもっと美しくする」ためにはどうしたらいいかを思案し行動します。
村上さんは、半藤一利の遺作『靖国神社の緑の隊長』を推薦。悲惨な太平洋戦争の真っ
ただ中の極限状況に置かれながら、見事に生きた8人の将校・兵士の逸話をどうしても
次の世代に語り継ぎたいと本書でまとめました。表題の『緑の隊長』とは、戦争の真中
中国大陸で「植樹」を継続していた機動歩兵第三連隊の連隊長・吉松喜三大佐を指す。
大陸緑化に貢献したとして捕虜の身で吉松大佐は、敵国の中国から感謝状が贈られた。
復員後は靖国神社の境内で大銀杏の銀杏を拾い苗木に育てて、各地に送ったそうです。
鎌田さんの2冊目は平野啓一郎著『ある男』です。やさしく誠実な夫で良き父親だった
「ある男」の事故死をきっかけに、名乗も過去も虚偽で別人だったことが判明します。
なぜ彼は「他人の人生」を生きることにしたのか?過去を偽る人物を人は愛せるのか?
村上さんは松谷咲著『15歳の叫び あんな大人になりたくない』を選ぶ。大人が書い
た「生き方の本」は多数ある中で、率直な15歳の中卒少女の気持ちを綴った本です。