(かまた みのる)
医師・作家。1948 年東京生まれ。
東京医科歯科大学医学部卒業。
37年間、医師として地域医療に携わり、チェルノブイリ、イラク、
東日本の被災地支援に取り組む。2009 年ベスト・ファーザー
イエローリボン賞(学術・文化部門)受賞。2011年日本放送協会
放送文化賞受賞。
ベストセラー「がんばらない」をはじめ、「なさけないけどあきらめ
ない」「ウェットな資本主義」「アハメドくんのいのちのリレー」
「希望」(東京書籍) など著書多数。
現在、諏訪中央病院名誉院長。
(むらかみ のぶお)
1953年、京都生まれ。
元NHKエグゼクティブアナウンサー。
2001年から11年に渡り、『ラジオビタミン』や
『鎌田實いのちの対話』など、
NHKラジオの「声」として活躍。
現在は、全国を講演で回り「嬉しい言葉の種まき」を
しながら、文化放送『日曜はがんばらない』
月刊『清流』連載対談などで、新たな境地を開いている。
各地で『ことば磨き塾』主宰。
http://murakaminobuo.com
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2017年7月31日
7月30日 第269回放送
聖路加国際病院の名誉院長日野原重明先生の葬儀が昨日執り行われました。成人病に代
わる呼称として習慣病を提案し「生活習慣病」と呼ぶ契機をつくり、患者本位の医療を
提唱し、終末期医療の充実などに取り組み、百歳を超えても医師として活躍した先生を
知る鎌田さん村上さんが先生の功績を讃え、先生を偲ぶコメントでしめやかにスタート
日野原先生の著書の中にある16世紀のフランスの医師アンブロワーズ・パレの言葉。
「治癒させることは、たまにしか出来ない。苦しみを和らげることは、しばしば出来る
患者の心を慰め、支えることはいつでも出来る」想いを受け継ぐ医療人が増えて欲しい
今週電話で番組参加していただいたのは、石川県の「社会福祉法人佛子園」の理事長で
蓮昌寺住職の雄谷良成さん。雄谷さんのモットーは「ごちゃまぜがいい」ということ。
年齢や性別、障害のある・なしに関わらず様々な人びとが一緒に暮らせるコミュニティ
町づくりを提唱しています。鎌田さんが訪問した「三草二木 行善寺」には温泉があり
障害者の就労支援施設でもあり、デイサービス、夜は居酒屋になる蕎麦屋など、まさに
子供から大人まで地域に住む老若男女が利用する施設です。雄谷さん曰く、育った環境
がそうさせた。祖父が行善寺の住職で、孤児を引き取って育てたり、知的障害児の入所
施設(佛子園の母体)を開設していたので、雄谷さんも幼少から彼らと一緒に家族同然
に育ちました。大学でも障害者教育を専攻。障害者教育の教育者を育てる為に赴任した
ドミニカ共和国で貴重な体験を積み、帰国後は障害児施設を運営する「佛子園」の後を
継ぐことになり、大人になった障害者の働く先を考えて「障害者支援施設」など次々に
運営し現在に至ります。廃寺の活用で障害者と認知症老女の相互扶助の成功例は必聴。
2017年7月24日
7月23日 第268回放送
親や配偶者が認知症になったら、家族はどんな思いを抱え、生活はどうに変わるのか?
あるいは、自分が認知症になったら、どのような感情を抱くのか?そうしたことを知り
たくて認知症に関する本や雑誌が売れています。特にリアルに描いた作品が参考になる
ようです。きょうのテーマは『家族が(あなたが)認知症になったらどうする』です。
今年5月に公開された映画『八重子のハミング』は、若年性アルツハイマー症になった
妻を12年介護した体験を綴った同名の本(小学館)が原作です。介護する夫も4度の
がん手術を受けながら、妻への思いが支えとなり、いずれも生還を果たす。妻は徐々に
記憶を無くしつつも、大好きな歌を口ずさめば笑顔を取り戻すこともあった。そして妻
を介護していくうちに、夫はあることに気づく。妻がゆっくり時間をかけ、自分に別れ
を言おうとしているのだと。原作者は山口県萩市の『金谷天満宮』宮司の陽信孝さん。
電話で登場した陽さんは「娘いわく、監督さんはお父さんのいい所ばかりみた」と身内
ならではの箴言を披露。でも、映画を観た鎌田さんも村上さんも、陽さんの献身的な介
護ぶりはスクリーンからも充分に伝わり、妻が息を引き取る場面の慟哭はまさに事実に
基づくもので、涙を禁じえなかったと口を揃えます。『八重子のハミング』には究極の
やさしさがあり「怒りには限界があるが、やさしさには限界がない」と陽さんの体験が
言わせたセリフも感動的。上映館は『八重子のハミング』ホームページで確認下さい。
「認知症」といえば、注文をとったり・配膳したりする担当を認知症の女性たちが担当
する『注文をまちがえる料理店』という「実験的な期間限定のレストラン」が先月都内
にプレオープンして話題になりましたが、長野県の岡谷市にある託老施設の『和が家』
がカフェを開いて、認知症の方々がユニフォームに身を包み働いている話も紹介する。
2017年7月17日
7月16日 第267回放送
団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者に仲間入りする2025年は、様々な問題が
指摘されています。2179万人のうち支援や介護が必要な人の割合は3割と推計され
地域包括ケアシステムが導入されました。およそ30年前から「諏訪中央病院」中心に
独自の地域包括ケアを実施してきた鎌田さんが「これからの介護と地域」を語ります。
地域に暮らす一人ひとりが、社会とつながりながら、自分らしい「わがまま」な人生を
まっとうすることとは、どういうことか?それを可能にする「地域包括ケア」の知恵を
長年地域医療に取り組んできた鎌田さんが紹介する『わがままのつながり方』を上梓。
「死にたい!」が口癖の寝たきりの患者さんの悩みを解放したケアマネ―ジャーの話や
在宅酸素療法をしている80代の末期がん患者さんの「梅を漬ける希望」が支えた日々
同書には全ての人を包み込み、ともに暮らすネットワークづくりのヒントがあります。
後半は『NPO法人あおもり若者プロジェクト・クリエイト』の活動を紹介。東北新幹
線の全線開業を控えた2009年、当時高校2年生だった現在の理事長久保田圭佑さん
が仲間を誘って立ち上げたグループ活動が始まりです。新幹線の延伸は観光客を増やし
青森県が一大観光都市となる大チャンス。ところが、県民の意識は低く対応は遅れ気味
そこで、高校生が積極的に地元商店街の方々と関わる「一人称のまちづくり」を提唱し
新たなアイディア商品も誕生。高校生の熱い想いは、後輩へと引き継がれ既に120名
が巣立ったと大学2年生の藤田涼さんは語ります。JKAはこの活動を支援しています
■プレゼント■鎌田實サイン入り『わがままのつながり方』(中央法規)を5名に進呈
ご希望の方は住所、氏名、電話番号を明記のうえ応募。7月21日消印有効とします。
なお、ご応募頂いたメール・お葉書は放送で御紹介する場合もあります。
2017年7月10日
7月9日 第266回放送
鎌田さんが作家として知られるようになった『がんばらない』(集英社)は、ラジオが
きっかけで生まれた本です。それ以前に医療従事者向けに書いた内容をNHKの番組で
話したところ大きな反響があり、多忙を理由に3度断った鎌田さんを編集担当者が粘り
口説いて世の出たのが2000年。すぐに60万部のベストセラーになりテレビドラマ
にもなって『がんばらない』は流行語にもなりました。今回はラジオから生まれた本。
文化放送の看板番組『大竹まこと ゴールデンラジオ!』は2007年5月にスタート
して10周年を迎えたことを記念し、朗読コーナー「ザ・ゴールデンヒストリー」から
16話を厳選し『人の数だけ物語がある。ザ・ゴールデンヒストリー朗読CDブック』
(扶桑社)の題で発売しました。今回はゲストに大竹まことさんを迎え、出版の経緯と
「ラジオのチカラ」や「ラジオの持つ可能性」を語り合います。一般に知識を得るなら
書籍の方が優位ですが「紙」からは伝わらない「声や音」で伝えるラジオならでは優位
「情や熱」の伝えやすさは、ラジオに軍配があがると信じています。大竹まことさんの
肝いりコーナー「大竹発見伝~ザ・ゴールデンヒストリー」は毎日を必死で生きる市井
の人々の体験を取材して台本を作り、大竹さんの声を通し飾ることなく伝えている番組
の看板コーナーです。誰にでも運・不運の物語があり、悲憤慷慨の日々も又あります。
それぞれの想いをすくい上げて、聴取者に伝える「やさしい絵本のよう」(鎌田談)。
ラジオはテレビに比べ映像がない分だけ伝える力が弱いと思われがちですが、想像力を
掻き立てる表現ができる媒体なので、聴取者のイメージにあわせて勝手に描かれた物語
が歩きだし、見えない分だけ信頼感が出たり、特性や良さも発揮される媒体と思います。
2017年7月 3日
7月2日 第265回放送
テレビにラジオにインターネットや通信機器の普及で余暇の過ごし方が多様化するなか
愛書家でなくても「雨だから本でも読もう」という気になるのは梅雨の時季だからか?
本について、一か所でも感動する部分があれば買うという鎌田さん。読みながら線を引
き、付箋を貼って、後から読み返す読書家の村上さんが紹介するお勧め本の情報です。
十代に向けたメッセージ本の執筆依頼を受けた鎌田さん。今の十代の考え方を探ろうと
小説や詩やコミックを読んでいます。最果タヒ著『十代に共感する奴はみんな嘘つき』
(文藝春秋)は、詩を読んでいるような小説を読んでいるような、なんだかわからない
不思議な感覚で、十代の気持がスッと入り込んでくるという感想。新川直司著『四月は
君の嘘』(講談社)も「嘘」つながりで、若者を理解しようと思って読んだコミック。
更に、高野苺著「ORANGE」(双葉社)は、いろいろ考えさせられるSF青春ラブ
ストーリーと評する鎌田さん。一方の村上さんは、門井慶喜著『家康、江戸を建てる』
(祥伝社)を挙げる。天正18年、落ちゆく小田原城を眺めながら、関白・豊臣秀吉は
徳川家康に「北条家の旧領関東二百四十万石を差し上げよう」と囁いた。その真意とは
水びたしの低湿地ばかりが広がる未開の土地と、豊饒な所領、駿河、遠江、三河、甲斐
信濃との交換であった。愚弄するかのような要求に家臣団が激怒する中、なぜか家康は
その国替え要求を受け入れ、日本史上最大のプロジェクトを成功に導いた家康の挑戦。
江戸を整備するにあたり、家康は一流の目利きで5人の逸材を発掘し任に当たらせた。
もう一冊。齋藤孝著『型破りの発想力』(祥伝社)は世阿弥や宮本武蔵など5人を挙げ
日本の創造力の源泉である「型を破ること」から生ずる彼らの発想力・創造力を紹介。