(かまた みのる)
医師・作家。1948 年東京生まれ。
東京医科歯科大学医学部卒業。
37年間、医師として地域医療に携わり、チェルノブイリ、イラク、
東日本の被災地支援に取り組む。2009 年ベスト・ファーザー
イエローリボン賞(学術・文化部門)受賞。2011年日本放送協会
放送文化賞受賞。
ベストセラー「がんばらない」をはじめ、「なさけないけどあきらめ
ない」「ウェットな資本主義」「アハメドくんのいのちのリレー」
「希望」(東京書籍) など著書多数。
現在、諏訪中央病院名誉院長。
(むらかみ のぶお)
1953年、京都生まれ。
元NHKエグゼクティブアナウンサー。
2001年から11年に渡り、『ラジオビタミン』や
『鎌田實いのちの対話』など、
NHKラジオの「声」として活躍。
現在は、全国を講演で回り「嬉しい言葉の種まき」を
しながら、文化放送『日曜はがんばらない』
月刊『清流』連載対談などで、新たな境地を開いている。
各地で『ことば磨き塾』主宰。
http://murakaminobuo.com
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2016年8月 1日
7月31日 第219回放送
「不幸というものは状態で、一度居座ったら動かすのは困難だが、幸福は状態ではなく
瞬間の中にしか存在しない。一瞬一瞬煌めいて消え去るもののような気がする。別れた
のに子どもが産めたのは、付き合っている時間は短かったにもかかわらず、幸福だと思
える時間がたくさんあったからだ。」柳美里さんの私小説『命』(新潮社)一部です。
不倫の果てに妊娠し、男と別れた彼女はかつての恋人『東京キッドブラザーズ』主宰の
東由多佳さんのもとに身を寄せて子育てを考えるが東さんは末期がんに侵されていた。
生まれてきた子の「生」と東さんに迫る「死」。柳さんの作品は、家族や死にこだわり
続けていますが、それは彼女の「生い立ち」や周囲の「環境」に深く関係しています。
幼少期のいじめ、家庭内暴力、両親の離婚による家族の崩壊、自殺未遂。激烈な思春期
を送った柳さんは、人生そのものが小説のようで「いのち」を問いかける生き方です。
福島県南相馬市に震災直後から通い続け、昨年4月長男の高校入学に合わせて移住した
柳美里さん。なぜ被災地に移住を?母親が少女時代を過ごした会津の集落がダム建設で
消えた故郷喪失の記憶と、原発事故で故郷を離れざるをえなかった被災地の人の思いを
近くで感じながら、在日三世の自分にとっての故郷とは何かを考える町として選んだ。
柳さんは、南相馬市のラジオ局「ひばりFM」で番組を担当したり、高校で国語の特別
授業の教壇に立ったり、地域の公的イベントにも参加してすっかり溶け込んでいます。
柳さんの新刊『ねこのおうち』(河出書房新社)は、生後1日で捨てられたニーコと仔
猫たち。そして彼らと関わった人間たちの物語で、皆何かに捨てられた人たち。どこか
捨てられた猫たちの境遇と重なり、彼らと猫たちの生が交錯した時に合点できる物語。