(かまた みのる)
医師・作家。1948 年東京生まれ。
東京医科歯科大学医学部卒業。
37年間、医師として地域医療に携わり、チェルノブイリ、イラク、
東日本の被災地支援に取り組む。2009 年ベスト・ファーザー
イエローリボン賞(学術・文化部門)受賞。2011年日本放送協会
放送文化賞受賞。
ベストセラー「がんばらない」をはじめ、「なさけないけどあきらめ
ない」「ウェットな資本主義」「アハメドくんのいのちのリレー」
「希望」(東京書籍) など著書多数。
現在、諏訪中央病院名誉院長。
(むらかみ のぶお)
1953年、京都生まれ。
元NHKエグゼクティブアナウンサー。
2001年から11年に渡り、『ラジオビタミン』や
『鎌田實いのちの対話』など、
NHKラジオの「声」として活躍。
現在は、全国を講演で回り「嬉しい言葉の種まき」を
しながら、文化放送『日曜はがんばらない』
月刊『清流』連載対談などで、新たな境地を開いている。
各地で『ことば磨き塾』主宰。
http://murakaminobuo.com
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2016年4月28日
4月24日 第205回放送
熊本県を中心に繰り返し発生している地震で、避難生活の長期化に伴い持病がある方や
高齢者、幼児へのリスクが高まっています。「諏訪中央病院」から医療支援のため2名
の医師が要請を受けて阿蘇市の「阿蘇医療センター」に派遣されています。現地で医療
支援中の医師に電話で聞きます。また、あさって26日は「チェルノブイリ原発事故」
から30年。今月現地を訪れた鎌田さんが「いま日本は何を学ぶべきか」を語ります。
「熊本地震」で甚大な被害が発生した現地に就き、「阿蘇医療センター」で医療支援に
あたっているのは「諏訪中央病院」院長補佐の山中克郎医師と小澤廣記医師のお二人。
今回の地震は、熊本市内と阿蘇など周辺地域を結ぶ幹線道路を分断。市内の中核病院に
通っていた多数の患者さんが医療機関を失い、孤立する患者さんも少なくありません。
車の中で生活する被災者は「エコノミークラス症候群(肺塞栓症)」が懸念されている
ので充分な水分補給、弾性ストッキングの着用、1時間に2分は歩けという助言です。
もうひとつは「チェルノブイリ原発事故」。1986年4月26日に旧ソビエト連邦下
のウクライナ共和国で発生した史上最悪の原発事故。鎌田さんが理事長の「日本チェル
ノブイリ連帯基金(JCF)」は、被害の大きい隣国のベラルーシの放射能汚染地帯に
1991年より25年間、医師団を派遣し、医薬品の支援を続けています。今回の訪問
で「いま日本が学ぶべきことは何か」を探り、「ミンスク第一病院」小児甲状腺がんの
ユーリ・ジェミチェク教授等の助言は「因果関係をハッキリさせるためにも、継続した
観察が大事。内部被ばくを測るホールボディカウンターを使って数値を公表することが
デマや風評被害の防止、不安解消にもつながる」と。隠さないで語ろう!それがいい!
2016年4月18日
4月17日 第204回放送
フランス語とギリシャ語が堪能で、ケンカもめっぽう強く、料理上手で健啖家、その上
女色を好む破天荒な作家がいました。名を「きだみのる」といい、戦前には本名の山田
吉彦で『ファーブル昆虫記』を訳し、戦後はベストセラーが映画化された型破りな男。
ゲストはその痛快評伝『漂流怪人・きだみのる』(小学館)を書いた嵐山光三郎さん。
嵐山さんは、文学評論、旅、グルメと幅広い分野で独特の文体による軽妙な風俗評論や
エッセイで知られ『素人庖丁記』でエッセイ賞、『悪党芭蕉』で文学賞を受賞していま
すが、その嵐山さんが「その境地に近付きたいが到底及びもつかない」という人が作家
のきだみのるさんです。嵐山さんときださんとの出会いは、嵐山さんが28歳のとき。
平凡社の雑誌『太陽』の編集部員として、日本各地の小さな村を旅する企画を提案して
当時75歳のきださんと連れの7歳の少女ミミくんを訪ねると、古寺の中はゴミ部屋。
腐った肉や野菜が散乱し、本や雑誌、書き損じの原稿が散乱。生ゴミの臭いが充満する
中で平然と腹ばいになって原稿を書いていたのがきださん。名著『ファーブル昆虫記』
を訳した人かと仰天の出会い。そして、取材で各地の小さな村を訪ねますが、行き先も
ポンコツ車の運転も全てきださん任せ。しかも行く先々で個性的な人たちに出会う旅。
そして旅の合間、折に触れ若き日に会ったアナーキスト大杉栄たちの話とか、パリ大学
に留学して得た知識も披露し、戦時中に旅したモロッコの話も、満州国建国に一役買う
甘粕正彦大尉に会った話も出る。その上、独特の料理に腕をふるってみせ、本書の中で
イラスト付きでその料理が紹介されています。明治・大正・昭和を生き抜いた破天荒な
作家で社会学者と過ごした日々を振り返りつつ、彼の正体を掘り下げた痛快評伝です。
2016年4月11日
4月10日 第203回放送
鎌田さんは映画が大好きです。高校時代は名画座に通い続け年間150本も鑑賞しては
シナリオを自己流に書いてみたりしたそうです。映画監督になるか医者になるか迷った
時期もあったという鎌田さん。今も映画館やDVDで150本近い映画を観ていますが
その中から今春公開の「人生や愛を考える上で示唆に富んだ佳作映画」を紹介します。
まずはイギリス映画の『さざなみ』。長年連れ添った夫婦の関係が1通の手紙によって
揺らいでいく様子を通し、男女の結婚観や恋愛観の決定的な違いを浮かび上がらせてい
く人間ドラマです。1通の手紙、それは50年前に氷山で行方不明になった夫の元恋人
の遺体がアルプスのクレバスの中から発見されたというもの。以来、過去の恋愛の記憶
を反芻する夫と、妻は存在しない女への嫉妬心や夫への不信感を募らせてしまいます。
2本目はオランダ映画『孤独のススメ』。田舎町で単調な毎日を生きる独身の主人公。
人づきあいを避けひっそりと生活していた彼の元に、突然、言葉も過去も持たない男が
現れ、やむなく始まった奇妙な共同生活。ルールに縛られていた主人公の日常が揺らぎ
始めて、いつしか鮮やかに色づいていく物語。大切なものを気づかない人生は侘しい!
3本目は伊仏英瑞合作『グランドフィナーレ』。伊の奇才パオロ・ソレンティーノ監督
は観衆を陶酔へと誘う壮麗な映像美で「21世紀の映像の魔術師」と絶賛されています
物語です。世界的に知られる英国人音楽家の主人公が今では作曲も指揮も引退、有名人
やセレブが宿泊するアルプスの高級ホテルで優雅なバカンスを送っている。そんな折に
英国女王から出演依頼が舞い込むが、なぜか頑なに断る主人公。その理由は亡き妻との
約束があったから...。村上さんは「家族とは?」を問う是枝裕和監督作品を紹介します
2016年4月 4日
4月3日 第202回放送
"歌は世につれ、世は歌につれ"といいますが、昭和の歌謡曲を聞くたびにその思いを
強くします。鎌田さんの十八番『石狩挽歌』をはじめ数々のヒット曲を放った作詞家で
直木賞作家のなかにし礼さんをゲストに迎えて、2度のがん闘病生活などを伺います。
なかにし礼さんの最初のがんは、2012年に見つかった「ステージⅢの食道がん」。
医師たちは一様に、抗がん剤・手術・放射線の「がん3大治療法」を唱えて手術による
切除を強く勧めたが、過去に心筋梗塞と心室細動を経験し不安を抱えるなかにしさんは
外科手術をためらい、切らずに治す方法はないのか?と必死で探して「陽子線治療」に
辿り着き、国立がん研究センター東病院で、その最新治療法をうけて食道がんを克服。
それから2年半が過ぎた去年の1月下旬に受けた検査で異常が見つり、精密検査の結果
今度は「食道横のリンパ節にがん」が見つかりました。今回も陽子線治療を希望したが
前回の食道がんの治療の際に何度も陽子線を当てた場所なので、更に当てると過剰照射
になり、他の器官を傷つける可能性があり今回は陽子線治療ができないと言われ落胆。
さらに、リンパ節のがんは気管を圧迫しているので一日も早く入院し、すぐに手術する
必要があると言われて胸腔鏡の手術、途中から開胸手術に切り替え4時間以上の大手術
となりました。それでもがんを切り取ることは出来ませんでした。ただし医師は手術中
にがん組織を圧迫する静脈を切ってくれたので圧力が減り穿破を防げたのではないか?
という話です。なかにし礼さんの新刊『闘う力~再発がん克つ~』(講談社)は闘病記
ではありますが、苦難にどう打ち克って、どう乗り越えるかのヒントも載っている1冊
で、書くことで病気の自分に病気じゃない精神的存在の自分が激励して奏功したとか。