
寺島尚正 今日の絵日記
2025年3月3日 他人事ではない
週末、宮城県気仙沼市にお邪魔した。
東日本大震災で大きな被害を受けた気仙沼市。2011年6月に始めて取材で入って以来、毎年のように話を聞かせていただいている。
あれから14年。東北新幹線の一ノ関で降車、レンタカーで気仙沼へ移動したのだが、地元のFM局は頻繁に山林火災の情報を流していた。
気象衛星ひまわりによる衛星画像では、火災で上がった煙とみられるものが、岩手県南部の沿岸から東へ大きく延びている様子が確認された。
大船渡市の2月の降水量は27日現在、2・5ミリにとどまっている。これは1967年2月の4・4ミリを大きく下回り、同じ地点における2月の降水量の観測史上最低を更新する見通しだ。乾燥注意報の発表も続いている。ただ、火災を広げる要因となる強い風は収まりつつあるという。
1時間ほどで気仙沼に到着したが、大船渡から30キロ以上距離がある筈だが、消防車が2台1組で「カン・カン」と音を出しながらゆっくり進んでいく。
カンカン音は「警鐘」で,火災予防に使用して「火の用心」を広報している。
ところで大船渡市で2月26日に発生した山林火災は4日がたった2日も延焼が続き、赤崎町合足(ごうあし)地区や三陸町綾里(りょうり)の広い範囲が焼けている。焼失した面積は2日午前6時時点でおよそ1800ヘクタールと、1日の朝からおよそ400ヘクタール拡大したという。
1800ヘクタールは、東京モノレールで何駅もある羽田空港の敷地面積は1,515ha。羽田空港の1.2個分の広さが燃えてしまったことになる。
気仙沼で暮らす中年男性に話を聞いたが、「大船渡(の山林火災)は他人事じゃない。見れば分かるけど、ほら気仙沼も山林が多く、見ての通り乾燥した下草がびっしりだ。例年だと、根雪があったり雨が降るのだけれど、今シーズンに限ってはさっぱりだ」と不安そうに語った。場所を移動して標高の比較的高い所で生活する女性に聞くと「今は風向きで煙も見えないけれど、風向きが変わると山を越えて火が移ってくるのじゃないかと心配するお年寄りもいる。消防車のカンカン音を聞くと、火の元確かめてるよ」と話してくれた。
岩手県大船渡市の山林火災を受け、総務省消防庁は周辺の自治体に対して「緊急消防援助隊」の出動を求めていて、宮城県と山形県、青森県、福島県、栃木県、秋田県、新潟県、茨城県、東京都、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県、北海道の14都道県にのぼっている。
大船渡市以外でも東北地方から九州南部まで、太平洋側では広く乾燥注意報が発表されており、中でも関東甲信地方や中部地方は降水量が少ない状態が継続している。山梨県大月市で先月26日に発生した山林火災は、現在も延焼が続いていて、2日も上空と地上から消火活動が行われた。
これまでにおよそ135ヘクタールが焼けたとみられ、空き家1棟が全焼したがけが人はいないという。
現場は、JR猿橋駅から南におよそ2キロ離れた山あいの地域で、山あいにある住宅の管理者が刈り取った草などを燃やしていたところ、山林に燃え移ったと話している。県内全域には乾燥注意報が出されている。
火の勢いが比較的弱まっている南側の山林では、消防およそ30人が山に入り背負った袋に入った水を放水する「ジェットシューター」と呼ばれる装備を使い、くすぶっている火を消していく作業を行ったが、鎮圧には至っていない。
乾燥注意報とは、空気の乾燥から災害が起こる可能性があると予想された日、つまり、火災が起こる危険性が高い気象条件を予想した場合、発表される注意報である。この乾燥注意報は「最小湿度」と「実効湿度」の2つが基準値を下回ると発表される、「最小湿度」とは当日の相対湿度の最小値、「実効湿度」とは木材の乾燥具合をあらわす湿度とされており、当日・前日の相対湿度の平均値を指す。最小湿度約25%、実行湿度約60%より低くなると、木材が燃えやすい、つまり火事が起こりやすく広がりやすい、と考えられている。
当日の相対湿度が低くても、前日まで雨が降っていると、発表されないこともある。3日東京の予報は傘マークがついているが、岩手県・大船渡は5日と6日に雪や雨が降る予報。ここは自然現象にも加わって欲しいところである。
各地少しでも早い鎮圧を祈って止まない。沈丁花が香り始めた。
他人事ではない
春の香り
- 2月25日
- 3月 3日