浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2025年2月3日 夜の桟橋

文化放送から歩いて5~6分の所に「竹芝桟橋」がある。

ご存知、東海汽船等の船が発着し、伊豆諸島や小笠原諸島までの船を運航している場所だ。
竹芝桟橋の待合室の一角には、伊豆諸島の海の幸やお酒、お菓子、そして工芸品等を販売する売店がある。
アシタバやクサヤなどが冷蔵庫にあって、眺めるだけでも島に行った気分になれるので、時折お邪魔している。

東海汽船はホームページも充実しており、運行状況は勿論、ツアーやネットショップを見るのも楽しい。
興味をそそられたのは、神津島の金目鯛三枚おろし。
「東京の島「神津島」は近海の海底地形と温暖な海流「黒潮」に恵まれ豊かな漁場が広がっています。そんな神津島の金目鯛を獲れたその日に調理し、鮮度を損ないにくい真空パックにしてお送りします。お刺身はもちろん、煮付け、焼き物、しゃぶしゃぶにも最適です。その日に漁獲された金目鯛を丁寧に調理(ウロコ除去、ワタ抜き、三枚おろし、骨抜き)いたします。調理した身、アラを真空パックにして鮮度を保持してあります。切り身やしゃぶしゃぶ用の加工も承ります。ご注文時にお申し付けください」
至れり尽くせりだ。値段は3500円。
美味しそうな金目鯛の写真を見ていると、考えようによっては左程高くないような気もしてきた。

そして、毎回目を通している「東海汽船からのお知らせ」に驚いた。

「平素より東海汽船をご利用いただきありがとうございます。

現在、各島出航時に、時折、岸壁と船を結ぶ色とりどりの紙テープが投げられることがあり、客船ならではの見送りの風景として長い間親しまれてきましたが、一方で、かなりの量の紙テープが海洋に流れている状況であり、海洋汚染防止及び安全運航等の観点から速やかに改善を要する状況となっております。

つきましては、弊社船をご利用の皆様には、船の見送りの際の岸壁・本船上からの紙テープを使用した見送りの取り止めにご理解・ご協力をいただきますようお願い申し上げます。実施日:2025年3月1日より

実施日前におきましても、上記の趣旨に鑑み、極力、紙テープのご使用をお控えいただきますようご協力の程、お願い申し上げます。東海汽船株式会社」

比較的長距離の船と言えば、紙テープ。これはセットだと考えていた。

その影で、紙テープに頭を痛める人達がいたのだ。

見送り後にちぎれたテープが船体に絡みつき、船員の作業に伴う転落やケガの恐れが常にあり、安全運航確保の観点からも取り止めの決断となったという。

ところで、船出の紙テープは日本人が考え日本でしか行われていないそうだ。
1899年、当時22歳だった森野庄吉氏はカナダのバンクーバーへ渡りその後アメリカ・サンフランシスコに移り、宿や雑貨店の経営を始め実業家として大成功を収めた人物である。
1915年のサンフランシスコ万博に参加していた笠井商店はラッピング用の紙テープを出品したが、当時のアメリカでは布製のリボンが使われていたため、売れず大量の在庫を抱えてしまった。
そのとき異国の地で困っている日本人の噂を聞いた森野氏は売れ残った紙テープを大量に買い取った。
森野氏は世界各国の船が停泊していた港で船に乗る人たちに「紙テープで最後まで別れを惜しむ握手を!」と売り始めた。
森野氏の経営する雑貨店は港の近くにあり、普段から港で別れのシーンを見ていてアイデアがひらめいたらしい。
森野氏のアイデアは大当りし紙テープはほぼ売り切れたという。
紙テープを使ったセレモニーは人気となりアメリカだけでなく上海やオーストラリア、ハワイなど世界中で行われた。
しかしその後すぐに世界恐慌や第二次世界大戦が起こり、船旅ができなくなった。
戦争が終わると移動手段が船から飛行機に移り、紙テープによる海洋汚染の問題もあり船出の紙テープは廃れ今では日本でしか見られなくなったそうだ。

さだまさしさんの歌に「フェリー埠頭」がある。1991年の作品だ。
二番の歌詞の中にこんな部分がある「ちぎれた紙テープが 思いでの数だけ あなたに手を振るように 水の中で揺れるわ」切ないほど情景と心情を表している。
出港時の紙テープが無くなると聞けば寂しさは否めない。
一方で船員の安全や環境保護が優先されることは当然と言える。
プロジェクションマッピングなどでせめて夜だけでも雰囲気を残せないものだろうか・・。

夜の桟橋
夜の桟橋

幾つもの人生を運ぶ
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