寺島尚正 今日の絵日記
2024年11月18日 紅葉進む
都内でも大分木々の葉が色づいてきた。
おなじみの紅葉は、日本を含む中緯度の地域で見られる現象で、1日の最低気温が8℃以下になると始まって、5~6℃以下になるとさらに紅葉が進むといわれている。
ところで、なぜ葉の色が変わるのだろうか。
植物の葉には、光合成を行うのに必要な光合成色素であるクロロフィル(緑色)やカロテノイド(黄色など)を多く含んでいる。
これらの色素のうち、大雑把に言って、クロロフィルが最も多量に含まれていることから、普通、葉は緑色に見えているのだ。
しかし、秋になって気温が下がってくると、光合成の効率が低下し、葉を維持する利益が減少してしまうため、木々は葉を落とす準備を始める。
その準備の一つとして、葉に含まれる栄養素を翌春に再利用するために、幹や枝に回収。この過程で、クロロフィルが分解され、葉の緑色が弱まる。
すると元から葉にあった別の色素(赤・黄・茶)が目立つようになる。
イチョウなどで起きる黄葉はこれが原因である。
紅葉は、クロロフィルが分解されるとともに、アントシアニン(赤色)が作られることで赤い葉になる。
イロハモミジ、ハゼノキ、ドウダンツツジなどである。
また、ブナやケヤキなどでは、葉の中でタンニンが増えることで、濃い茶色(褐色)が目立つ。
タンニンはお茶に含まれることで知られる物質で、そのもととなる物質は多くの植物が持っている。
これが葉の変化とともに酸化などの化学変化を起こし、褐色のタンニンになるのだ。
これを紅葉や黄葉にたいして褐葉と呼ぶこともある。
紅葉や落葉などは、植物が冬を越すために物質やエネルギーを節約するしくみで、季節の変化が大きい地域に適応するための生き残り手段のひとつなのである。
紅葉は、同じ赤や黄色といっても鮮やかさなどには違いがある。
特に紅葉が美しくなる主な条件は3点あるという。
まず日中は、秋晴れが続く必要があるといわれている。
一定量の日差しがないと、光合成による糖やタンパク質の生成を見込めないためだ。
昼間、葉が十分に太陽光を浴びてアントシアニンを合成する化学反応も活性化させれば、それだけ赤色は強くなると期待できる。
一方、夜は急激に冷え込むと赤く色づく紅葉にとっては好条件。
夜間にあまり気温が下がらないと日中に形成されたアントシアニンは次々に消費されていくが、一気に寒さが厳しくなるとアントシアニンの消費活動が鈍くなるためである。
夜が明けても多くのアントシアニンが葉の中に残っているので、深みのある赤になるという。
しかし、晴天ばかりではよくはない。
雨が降らず大気が乾燥し過ぎると、せっかく見事に色づいた紅葉も枯れてしまう。
ある程度の水分を補給するためには適度な降水量が欠かせないのである。
紅葉が、ただ赤や黄色に変わるだけでなく少しでも美しく色づくためには、これらの条件が満たされている必要なのである。
冒頭で、紅葉は最低気温が8℃を下回ると進むと記した。
加えてその8℃を下回るようになって約3週間でキレイに色づくといわれている。
紅葉の名所と呼ばれるような場所は、一般的に標高の高い場所に位置していることが多く、例えば東京の紅葉の名所の高尾山の標高は599mである。
麓の八王子市は標高123m。
標高差は約500mだ。気温は100m上昇する毎に、約0.6℃低くなるので、単純に計算すれば市街地との気温差は、500(m)×0.6(℃/100m)=3(℃)になる。
紅葉が進む条件は「最低気温が8℃を下回る」日が続くことなので八王子市の最低気温が11℃前後になると、高尾山で紅葉が進み始めると計算できる。
また、八王子市の最低気温が11℃前後になるのは例年10月第3週頃なので、この時期頃から高尾山では紅葉が始まり、約3週間後の11月中旬頃にキレイに色づくという風に計算することができる。
実際今年の見頃は今週のようである。
今年は燃える様な紅葉になっているのだろうか。
それを確かめに今度の連休は多くの人が向かうはずだ。
枝々を透きて日の照る紅葉かな 久保田万太郎
- 11月11日
- 11月18日