浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2024年10月21日 優しい香りに包まれて

週末の土曜朝、金木犀の香りに包まれながら東京駅に行くと、「中央線本線小淵沢~長坂駅間でシカと衝突の影響で遅れが出ている」との電光掲示が映っていた。
このところ番組でも「列車がシカと衝突し」との情報を何度も伝えている。
10月19日午前6時43分ごろも、列車が「シカ」と衝突し、その影響で遅延が生じた。
遅延したのはJR青梅線で、青梅~立川の上り線の一部列車に最大10分程度の遅れが生じた。

シカやイノシシなどと列車との衝突事故は、山間部を中心に年々増加してきており、鉄道会社の悩みの種となっている。
このうち、電車とシカの衝突件数は年間で5000件とも言われる。JR東日本八王子支社は、東京多摩地区や山梨、埼玉にまたがる中央線、青梅線、八高線、五日市線、横浜線、南武線、武蔵野線を管轄しているが、管轄内での動物衝突事故件数は2013年度に約60件、2014年度は約90件、2015年度は約100件と増え続けていた。
そのため、今年1月にわなの設置で対策を強化していた。
シカの推定個体数は増加傾向であり、平成25年度末では、全国(本州以南)のニホンジカの推定個体数は中央値約305万頭。
さらに、現状の捕獲率を維持したままだと、平成35年度には中央値で約453万頭(平成25年度の個体数の約1.5倍)まで増加すると予測されている。
シカは20世紀初頭に天敵であるオオカミが絶滅した後、狩猟によって増加が抑えられてきたが、狩猟人口が減ったために現在は増える一方で、農林業被害や自然生態系への影響が問題となっている。
つまり鹿の天敵である日本狼などを人間が滅ぼしてしまい、人間の手で鹿の数を調整しなければならなくなったわけだ。

シカと列車の衝突事故は、客車のみならず、貨物列車も同様である。
物流が滞れば経済的にも大打撃。
効果ある対策を講じるためには、シカの行動と習性の知見が必要とのことで、シカの行動調査を実施したという。
「なぜ、シカは鉄路に入ってくるのか」。
シカが出没するのは夜6時から翌朝6時頃まで。
明け方には帰っていく。
つまり、警戒心が強く環境変化に敏感なのだ。
そして、鉄道敷地内のへ単独で侵入した時の方が事故は多い。
シカ侵入防止柵に沿って移動し、わずかに地面との隙間があれば穴を掘ってでも鉄路内に入り込んでしまう。
何故、そこまで執着するのか。
暗闇の中で、レールとその周りに口を付け、鉄を舐めている様子がカメラに映っている。
鉄分を求めシカが鉄道に侵入するという仮説は以前からあったようだがが、仮説通りに"鉄分摂取"の可能性が高いことが確認されたとのことである。
シカは賢く学習能力がある。
ここに好物があると知ったら忘れないという。
歯の老化で寿命を迎えるシカは鉄パイプをかじり、削りとってミネラルを補給。
温泉地や海岸では塩の補給。
シカも必死に生きているのである。

シカの衝突対策としては,「シカ止柵」の設置が進められている。
過去には,ライオンの糞の散布やシカの嫌がる音を発する装置を車両に組み込むなどの取り組みも行われてきた。
しかし導入時やメンテナンスにかかる費用や、慣れによる効果の低下により、決定的な対策は確立されていない。
また列車に排障器を取り付け、衝突した場合の列車の遅れを低減させる取り組みも行っている。
シカ等が接触した際も、車両床下へ巻き込みにくい形状とすることで、早期運転再開を図ったそうだ。
今から6年前の記事では、「シカと電車の接触事故を減らそうと、近畿日本鉄道が導入した「シカ踏切」が絶大な効果を発揮している」とある。
運行時間帯はシカが嫌がる超音波で線路から遠ざけ、終電から始発までの夜間はそれを止め、自由に線路を横切れるようにするという画期的なシステム。
企業のホームページを見ると効果あり!と出ている。
シカが超音波に数年経っても慣れていないならば朗報である。
設置費はいかほどなのだろうか。
お互いに衝突は避けたいものだ。


優しい香りに包まれて
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