寺島尚正 今日の絵日記
2024年8月5日 8月の蝉 の抜け殻
8月初めの日曜日。今日も都心は猛暑日となった。
こうも暑いと、飲み物や食べ物も冷たい物に行きがちだ。
そんな中、この時期は冷やしていただく「物価の優等生」といえば、豆腐が浮かんくるだろう。
その豆腐を作る豆腐店の倒産や廃業が急増しているというのである。
スーパーで買い物をしている限り、俄には信じがたく、「豆腐バー」や「豆腐そうめん」、「湯葉鍋」など、どれも低カロリーで安心していただけ、何より価格がリーズナブルなところに魅力を感じる。
以上の理由で、寧ろ豆腐屋さんは攻めている感覚が強くあった。
ところで、スーパーなど小売店向けにパック豆腐などを生産する「豆腐店」の倒産と廃業は、今年1月から7月に計36件発生したとある。
年間で過去最多に並んだ去年の46件を上回るペースとなり、今年このままのペースで行くと、去年を大幅に上回る年間60件台に到達する可能性があるというのだ。
豆腐1丁にかかる大豆原価率は現在、コロナ前を上回る10%台で推移している。
しかし、このコスト上昇分を販売価格に乗せられる店はわずかで、現状では約半数が赤字経営だと聞く。
量産豆腐に多く使用される米国産など輸入大豆の価格は落ち着いたものの、高止まりで推移していて、電気・ガス代や物流費、プラスチック製が多い容器代などのコストも値上がりした。
加えて後継者不足という別の課題も併せて影響を及ぼしているというのだ。
豆腐屋さんは零細が多く、販売するのは資本力のある大手サプライチェーン。
赤字なら値上げすればいいというのは簡単だが、実際には力関係で、切られかねないから、値上げができないことも想像に難くない。
値段を上げても、味や品質をアップさせれば客は離れないと言われるが、安い豆腐でも十分に美味しく、差別化も難しいのが現実だ。
豆腐は生鮮食品などと同様に日持ちせず、「特売品」の目玉として小売業者からの値下げ圧力は高い。
加えて、主要な販売先のスーパーで近年急速に台頭してきた安いプライベートブランドの豆腐製品や、大手メーカーによる安値の大量生産品との価格競争が厳しくなっている。
専門家は、私たち消費者の買い方や習慣も豆腐店の倒産や廃業の急増に拍車をかけていると言う。
スーパーに行けば豆腐でもなんでも手に入る。
一ヶ所で買い物が済めば便利だ。
一方、豆腐屋はスーパーとは別の場所にあるし、スーパーの豆腐よりも2倍以上高いことがほとんど。
消費者が、便利さや安さを求めてスーパーやコンビニに走り、結果として豆腐屋が倒産する。
豆腐屋に限らず、八百屋や魚屋、肉屋、街の本屋も減っている。
専門の個人店から買わないと、技術がどんどん廃れてしまうのだ。
買い物の仕方は自由だし、時代の趨勢といってしまえばそれまでだ。
一方で寂しさを感じる人も少なくないのではないか。
私の住む近くの個人店はパン屋位しか見当たらない。
もし他に見付けたら毎日とはいかないが、応援しようと思う。
行政が大手の不当な零細企業へダンピングを強要していないか調査し、あるようなら指導していくと同時に、専門の個人店には、安心安全、そして美味しいこだわりの品を作り続けてほしいものである。
- 7月29日
- 8月 5日