寺島尚正 今日の絵日記
2024年7月1日 夏越しの大祓
令和6年も半分が過ぎた。
2024年は、元日に能登半島地震が起き、翌日には羽田空港で航空機事故があり、今年はどんな年になるのだろうと心配した方も多かっただろう。
さて、6月30日は「夏越しの大祓(おおはらえ)」だった。
神社の中には、茅の輪を設け、参拝者は独特の作法で輪を潜る。
夏越しの大祓は、この半年の間、我が身に溜まった「穢(けが)れ」を祓うためのものだ。
日常生活をしていると私たちの体には自然と穢れが溜まっていく。
穢れとは、怒り、憤り、不安、恐れなど「負の感情」だったり、徳を積めない行動などを指す。
そうした穢れを清める手段として、普段は手水をとることや、神社参拝や、お祓いを受けるなどがある。
しかし、知らず知らずのうちに穢れが溜まっていき災難をもたらす恐れがある。
ゆえに、半年に一度、我が身の大掃除をしようという意味だと理解している。
茅の輪とは、その名前の通り、茅(チガヤ)という植物から作った注連縄(しめなわ)を、直径6尺4寸(約2メートル)の巨大な輪にして神社の参道に吊り、神職や参拝者が左右から八の字を描くようにその輪の中を潜っていく。
そうすることで穢れが祓い清められるとされる。
茅の輪を作る材料の茅は、イネ科チガヤ属の植物で、沖縄から北海道まで広く分布し、群生する広線形の葉が特徴の50cmほどの草である。
古くは茅葺き屋根の材料として茎葉を乾燥させて使ったり、チマキを包む梱包材として利用している。
その起源は中国にあるという。
中国では古くから茅は魔除けとして、また神前に備える供物として使われてきた。
漢字の「茅」の文字は、「草の矛(ほこ)」という意味を持つため、葉の持つ矛のような形状が、神威の現れだと考えられていたからだと、ある歴史学者は説く。
このどこにでもある草で作った輪が、なぜ穢れ祓いという神威を持ったのか。
それは「備後国風土記」に記された「蘇民将来説話」に答えがある。
蘇民将来説話のあらすじは、「昔、北海に武塔の神が居て、南海に住む女子に求婚しに行った。
その途中で日暮れになってしまい、一夜の宿を蘇民将来・巨旦将来という兄弟に頼んだが、弟の巨旦将来は金持ちだったにも関わらず頼みを拒み、兄の蘇民将来は貧しかったが精一杯のもてなしをした。
数年後に武塔の神は、八人の子供と共に訪ねて来て、蘇民将来の一族以外を全て滅ぼし、「自分はスサノオの神である。今後疫病が流行った時には、腰に茅の輪を身に付けていろ。その者は蘇民将来の子孫として助けてやる」と言った。
この説話から生まれた民間信仰が、「蘇民将来」と呼ばれる魔除けのまじないである。
元々は茅の輪を腰に吊るすことだった。
なぜ、茅の輪の左右から、八の字を描くように潜るのか。
それは古事記の中に書かれている「国生み神話」でイザナギとイザナミが左右で回り出会ったところで、国や神、スサノオたちを生んだという故事に由来しているようだ。
茅の輪潜りが出来なかったという方は、神社によっては、7月上旬まで設置している所もあるし、撤去されたなら、七夕祭りで参拝すればよいと聞いた。
要は、心の持ちようなのだ。
30日曇天の朝6時すぎ、芝大神宮を参拝した。
誰もいないだろうと思って行くと、60代位のご婦人2人が茅の輪を潜っていた。
その動きがゆったりとしていて、見ているこちらを穏やかな気持ちにさせてくれる。
「今年後半、もう少し余裕をもって行動するようにしよう」そう思った。
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