浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2024年6月24日 梅雨空に漂う甘い香り

平年より2週間ほど遅れて関東地方が21日梅雨入りした。
関東甲信でこれまで最も遅かった梅雨入りは1967年と2007年の22日ごろ。
梅雨入りのタイミングとしては過去2番目の遅さとなった。

梅雨入りが遅くなった理由は、日本付近への太平洋高気圧の張り出しが例年と比べて弱かったためである。
梅雨前線は太平洋高気圧に押し上げられる形で日本列島に近づくが、今年はなかなか北上しなかった。
専門家は、6月まで続いた「エルニーニョ現象」に伴ってインド洋周辺の海面水温が例年より高いことが影響したと説明している。
インド洋で積乱雲が多く発生する一方で、フィリピン付近は積乱雲の発生が少なく対流活動が不活発になった。
この影響で、太平洋高気圧が日本付近に張り出しにくくなったという。
加えて、日本の上空を流れる偏西風が影響している。
平年は西日本から東日本付近を流れていて、その南側に雨をもたらす梅雨前線が停滞しやすくなるが、今年は、偏西風が南に蛇行している。
このため、梅雨前線がなかなか北上できなくなっていたことが、梅雨入りが遅れた原因の一つといえるのだ。
様々な気象現象が梅雨入りのタイミングと重なり、結果的に前線の北上が遅れたようだ。

梅雨入りが遅くなったとなると、今年の梅雨の期間はいつもより短くなるのだろうか。
そうとも限らないようである。
気象庁は6月から7月の東日本の太平洋側の雨量を「ほぼ平年並み」と見込んでいる。
短い梅雨の期間に激しい雨が続く可能性もあるので注意したい。
短期間で大量の雨が降ると、災害の危険が急激に高まる恐れがある。
連日の雨は気持ちが沈みがちだが、梅雨には大切な役割があり、デメリットだけではない。
私達の飲み水として、ダムへの降雨は大切。
そして農業、特に稲の栽培にとって重要だ。
この時期にまとまった雨が降るからこそ、水田に水を張ることができ、田植え直後の稲の成長を促す恵みの雨と言える。
カラ梅雨で日照りが続けば、水が不足し、稲は育たないのだ。
また森の木々にとっても梅雨の雨は重要である。
4月から5月の新緑の季節、木はたくさんの新しい葉をつける。
葉を作るためにはそれだけの養分が必要なので、新緑の季節の直後、木は養分不足になっている。
梅雨の雨は木が土の中の養分を大量に吸収し、光合成による有機物の合成を促進するのだ。
新しく葉をつけた木々にとっては、待ちに待った雨という訳である。

梅雨の影響は陸上だけに留まらない。
梅雨の時期に降る雨は山や田畑を経て川に流れ込み、海へと注がれる。
この時期、冬の間地上に蓄積された有機物が気温の上昇とともに分解されるため、土壌は養分豊富な状態。
その豊かな養分が、海へと流れ込む。
一方、海の中は気温の上昇とともに海水面が暖められ、水面近くと海底の海水がかき混ぜられなくなり、海底の栄養が水面にいるプランクトンに届かない状態になりつつある。
梅雨の雨によって海に運ばれた養分は、魚などのえさとなるプランクトンにとって貴重な栄養源となるのである。

災害級の大雨には注意が必要だが、紫陽花の葉に水玉が乗っているのを見ると、穏やかな気持ちになれる。
傘を差しながら歩いていると植え込みの方から甘い香りがしてきた。
梔子(クチナシ)の花からだった。

今朝咲きしくちなしの又白きこと    星野立子


梅雨空に漂う甘い香り
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ブルーベリーの実は元気
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