寺島尚正 今日の絵日記
2024年2月19日 供給は戻るもご多分に漏れず
何時も利用しているスーパーで、少し鶏卵の値段が安くなっていることに気がついた。
丁度1年前、「物価の優等生」と言われてきた卵に、かつてないほどの異変が起きた。
少し前までは100円台で買えていたものがどんどん値上がりした。
JA全農たまごによると、卵Mサイズ1キロあたりの出荷価格(東京市場)は2月14日に335円と過去最高を記録。
175円だった2022年2月の2倍近くに高騰したのである。
その供給減は「エッグショック」と呼ばれた。
ウクライナ情勢などにより、鶏のエサとなる配合飼料や光熱費が上昇し、卵の価格は上昇傾向にあったが、高病原性鳥インフルエンザの過去最大規模の感染拡大が追い打ちをかけた形だった。
卵不足によるメニューの提供制限も行われ、スーパーやコンビニエンスストアでは卵を使った弁当等で使用量を減らしたり、代替品が使われたり、ファミリーレストラン「ガスト」ではパンケーキなどを、「バーミヤン」では天津飯といった、卵を使用する一部商品の提供を2月中旬から中止したのを今でも覚えている。
その高騰していた鶏卵の卸売価格が現在下がってきているのだそうだ。
昨年の品薄高で加工・業務筋の需要が減少。
輸入の粉卵などへの切り替えも進んだが、一部は定着し、今も国産品の需要は十分回復していない。
一方、生産は鳥インフルエンザからの回復が進み、増量が続く見方が強い。
JA全農たまごの2月のM級基準値(東京)は1キロ183円で、高かった前年同月比で4割強下回るという。
しかし鶏卵の経営コストの過半を占める飼料価格は高止まりしていて、鶏卵経営を圧迫。
高騰前の19年比で4、5割上回っている。鶏卵農家も大変である。
また、今シーズンも鳥インフルエンザが発生し、予断を許さない状況ではあるが、業界関係者は「需要を上回る供給が続けば、深刻な需給緩和が継続する」と語る。
消費者にとっては、安いほうが支出額を抑えられる。
その意味で消費者には優しく、台所を支えてくれた商品だった。
ただ昨今では値上げが顕著になっている。
一般的に、これまで卵が安くあり続けた理由は、生産者のコスト削減の努力に加えて、補助金の存在などもある。
さらにスーパーマーケットが赤字でも販売して客寄せ商品として取り扱っていたケースもある。
結果、貴重な動物性タンパク質の摂取源として食卓に君臨し続けた。
アメリカでも卵の価格が上がっているという。
理由は日本と同じで、鳥インフルエンザによって大量の鶏が殺処分されたことと、飼料の高騰が要因だ。
卵はそれでも安価に動物性タンパク質が摂取できる食品のため需要は多いが、供給は絞られてしまった格好である。
安心して国産の鶏卵を頂くために私たちができることは何だろう。
飼料を世界の国に買い負ければ、そもそも卵の生産がおぼつかない。
しかるべき対価を支払っても購入するという姿勢が消費者サイドにもなければ、そもそも飼料が手に入らなくなるかもしれないのだ。
卵の値段の高騰は、単に卵そのものの値上がりだけではなく、いよいよ食の調達環境が変わったのだ、そう感じながら229円のパックをカゴに入れた。
- 2月13日
- 2月19日