寺島尚正 今日の絵日記
2024年1月1日 日の出
また新しい年が始まった。
2024年(令和6年)は辰年。
動物にあてはめると竜(龍)だが、竜は十二支で唯一の想像上の動物なので、知っているようでわからないことも多い。
先ず龍の発祥は中国で、現代にいたるまで中国文化の象徴とされている。
空想上の存在であるため、その頃の龍の姿は様々だ。
多くの人が思い描く姿になったのは、龍が中国皇帝の権威の象徴とみなされるようになった漢代(紀元前206年~)になってからという。
日本では、弥生時代には中国の龍のイメージが持ち込まれていたとも考えられていて、弥生土器に龍のような図案が描かれたものが見つかっている。
一方、現在ある日本の龍神信仰につながるのは仏教の伝来による影響が大きいようだ。
仏教で信仰され、仏法の守護神とされている龍は、インドの神話に登場する「ナーガ」。
中国の龍にしても、インドのナーガにしても共通するのは、「蛇」がもとになっており、雨を恵む水の神であったこと。
この性質が、もともと日本の自然信仰にあった水神や蛇神と結びつき、独自の龍神信仰が生まれた。
古くから日本では、川や池、沼など水のあるところには主がいると考え、水を支配する神の化身や神の使いが蛇だと考えられてきた。
やがて、龍神は雨を降らす神から稲作の豊穣神や天候を司る神として信仰されていくようになり、五穀豊穣をもたらすことから、金運や仕事運を上げる御利益にもつながった。
加えて、龍は水中に棲み、天に昇るイメージから運気を上げる縁起のよいイメージが出来上がっていったと言われている。
私の好きな高尾山・薬王院の境内には「八代龍王堂」がある。
八大龍王は、仏教擁護の神の代表的な守護神。もともとは生命の根源である雨や水を司る龍神だ。
日本各地に龍の名称や仏閣本堂などの細工に龍を良く見る。
祖先が暮らしの中で龍に込めた願いに想いを馳せて見て欲しい。
さて、中国の『漢書 律暦志』の中に、辰は「ふるう、ととのう」を意味する「振」で、陽気が動いて万物が振動し、草木もよく成長して形がととのった状態を表すと解釈されている。
中国伝来の十二支は、もともと植物が循環する様子を表しているので、十二支の5番目に、草木の形がととのった様子を表す「辰」がくるのだとある。
また、たつ(竜、龍)は十二支の中で唯一空想上の生き物で、権力や隆盛の象徴であることから、出世や権力に大きく関わる年といわれている。
十二支に動物を当てはめたのは、後付けで、元々は、古い時代の天体と時間を管理するための「暦」のための用語だと聞く。
中国の、古代天文学用語だと考えると良いのだろう。
これらの語句(辰を含む)は、植物の成長する様子から決められた。
5番目に該当する「辰」は、「子(ね)」で生えてきた状態の植物が、ある程度の段階まで育ち、形が整ったことを表す文字だ。
このような形で決められた漢字と、関連性の「ありそうな」動物や、同じ音の動物を当てはめて、覚えやすくしたのが、現在知られているような十二支の動物である。
他は鼠や犬など、日常的な動物であるのに、辰のみが、実在しない龍を充てられた理由の一つには、音の影響があり、もう一つは辰の文字そのものに意味に龍との関連性があったためだという。
ところで、「龍」と「麒麟」はどう違うのだろう。
ビールでおなじみ麒麟であるが、私には龍と似ていて区別がつきにい。
調べてみると『麒麟』と『龍』は、両方とも東アジアの伝説的な生物だが、異なる特徴を持っていた。
まず、外見の違いでは、『麒麟』は頭に角があり、首から背中にかけて鱗がある一方、『龍』は長い体と鱗、四肢には鳥のような爪を持っている。
また、『麒麟』の尾はしなやかな一方、『龍』の尾はしなやかな上に特に長いのが特徴的。
『麒麟』は優れた徳のある人を守り、繁栄をもたらす存在とされ、『龍』は天候や水の管理、権力や知識の象徴として神聖視されている。
このように、両者は異なる役割や意味を持ちながらも、東アジアの文化において重要な存在として伝承されているようである。
辰の入った四字熟語には
吉辰良日(きっしんりょうじつ)とても縁起がいい日のこと。
画竜点睛(がりょうてんせい)物事を完成させる上での肝心な部分を表す。
嘉辰令月(かしんれいげつ)美しくおめでたいよき月日。喜び事の日のこと。
そして、私は今年1年「龍翔鳳舞」の境地で過ごせたらと考えている。
龍が天を飛び、鳳凰が空を舞うように、壮大な心を忘れないようにしたい。
今年もどうぞお付き合いください。
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