気象庁は、７月２２日、関東甲信地方と東北が梅雨明けしたと発表した。
平年に比べ関東甲信は３日遅く、去年より１日早い。
そして翌日、九州南部も梅雨明けし、梅雨のない北海道を除き、これでまだ梅雨明けしていないのは、山口県を含む九州北部を残すのみとなった。

梅雨明けが分かっているのか、浜松町界隈の木々が多い場所では蝉が賑やかに鳴き、暑さを一層倍加させている。
暦の上では「大暑」の日曜朝９時頃、葉の茂る桜並木の下を歩いていると、アブラゼミとミンミンゼミが元気に鳴いている。
「おや、今年はミンミンゼミが早いのかな」
東京での蝉の鳴く順番を、「ヒグラシ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、」と勝手に決めていた。
梅雨明けと同時にアブラゼミが幅をきかせ、１週間くらい後ミンミンゼミが参加という私の中での順番が揺らいだ。
「ミンミンゼミが生き急いでいるのか・・」
そこで蝉について調べてみた。
結論から申し上げると、私のとんだ勘違いだった。

日本には約30種類のセミが生息している。
その中で東京でよく聞くことができるのは５種類。それぞれのセミが鳴いている時期は地域によって差があるのはお断りしておく。
まず、ニイニイゼミ。6月下旬から9月中旬まで。鳴き声は『チーーー』と刻まずに高い音で鳴く。
明け方の日の出の直前、4時15分頃から鳴き始める。日没後も真っ暗になるまで一日中鳴いていて、街灯などがあって明るい場所では20時頃まで鳴いていることもある。
ヒグラシ。7月上旬から9月上旬まで。鳴き声は『カナカナカナ』である。
真っ暗な時間帯が明るさをみせた頃、4時30分頃に鳴き始め、日の出とともにいったん鳴かなくなる。再び15時から16時頃までにぽつぽつと鳴き始め、17時頃から再び鳴き始める。
アブラゼミ。7月中旬から9月末頃まで。鳴き声は、油を炒めるときの音が名の由来といわれるように、『ジリジリジリ』と細かく続く。
5時30分から6時30分頃まで鳴き、いったん鳴かなくなって11時頃から18時頃まで鳴いている。
ミンミンゼミ。7月中旬から10月初旬まで。鳴き声は『ミーンミンミン 』。
気温が高くなる昼間、9時頃から15時30分頃まで鳴いている。
ツクツクボウシ。7月中旬から10月半ば頃まで。鳴き声は『オーシツクツク』を繰り返して鳴く。
6時頃から18時頃まで、一日中鳴いている。10時から11時頃に小さなピークを迎え、17時から18時頃にかけてよく鳴く。

まとめてみよう。
先ず、時期から見た鳴く順番は、ニイニイゼミ、ヒグラシ、そしてアブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシが同じ時期から鳴く。
粘るのは、ミンミンゼミとツクツクボウシ。１０月まで鳴く。
時間帯で見ると、まだ夜明け前、ニイニイゼミが鳴き始め、夜明けの気配でヒグラシが追う。
夜明けと共にヒグラシが早くも一旦休憩に入り、アブラゼミが挨拶がてら鳴き始める。
６時過ぎ、ツクツクボウシの声を聴いたら、今度はアブラゼミが一旦休憩。
そこにミンミンゼミが参入し休憩を取ったアブラゼミが昼前から復活。
ミンミンゼミが午後３時半頃勤めを終えると、ヒグラシがポツポツと鳴き始める。
午後６時頃アブラゼミとツクツクボウシが勤めを終えても、ニイニイゼミは残業だ。
街頭の明かりで夜８時頃まで。ニイニイゼミ恐るべしである。
そして、近年東京でも鳴いているという、クマゼミ。
7月中旬から9月上旬にかけて。鳴き声は『ワシワシ』と、刻みながら鳴く。
5時30分頃から11時頃までと、17時から18時頃までのようだ。
さらにハルゼミの存在も加えておこう。
ハルゼミは最も早く、4月下旬から鳴き始めて6月末まで鳴く。
鳴き声は『ゲーキョゲーキョ』と聞こえる。
ハルゼミは7時30分頃から鳴き始め、9から10時頃に最もよく鳴き、15時過ぎには鳴かなくなるという。
うむむ、正直、私にはハルゼミの存在が実感できいないのである。

セミが鳴いているのは、実はオスだけ。
大きな声で鳴くことで仲間に存在を知らせている目的もあるが、最大の目的はメスへの求愛アピール。
いずれにしても、セミちは、鳴く時期や時間帯を微妙にずらして、命のバトンタッチを試みているのだ。

撞鐘(つきがね)も　響くようなり　蝉の声　　　　松尾芭蕉

梅雨明け　大暑

夏の眩しさ

静かな美