寺島尚正 今日の絵日記
2023年7月18日 歴史ある長閑な街
先日、静岡県の網代に足を運んだ。
高校からの友人が、網代に住み始め「良いところだから1度おいでよ」と誘ってくれたのである。
決め手は「温泉が抜群なんだ」の一言だった。
網代といえば、小さい頃から伊豆などで地震が起きた際、「網代の震度○」とニュースで伝えられ、耳馴染みがあった。
これは、昭和12年に海抜約70mの高台に網代観測所建てられ、伊豆東部の気象や地震の観測を行っているからである。
午後1時、新橋から東海道線に乗り、約2時間の小さな旅が始まった。
外は暑かったが車内はクーラーが効いていて快適だ。
熱海まで行き、伊東線に乗り換え、来宮、伊豆多賀、そして3つ目が網代。
ホームに降りる人は、10人ほど。その人達の後ろから階段を下ると左手に改札がある。
駅員は見当たらず、交通系カードをタッチして外に出た。
改札を出るか出ないかのタイミングで、ツバメが目の前を横切った。
駅員の代わりにツバメが歓迎飛行をしてくれているようだ。
駅舎内の天井を見上げると、四隅に巣が見える。
巣の中の5羽の雛は、大分成長していたが、親鳥が巣に戻ると、魚市場の競りの緊張感を彷彿とさせる「ビイビイ」と声を出し一斉に要求。
運ぶ親鳥は、ものの数秒でまた外に飛び出していく。
遠くからはウグイスの声も聞こえる。長閑な佇まいにほっとする。
友人も待っていてくれて、早速、住まいに向かった。
家に着くと、既に風呂が用意されていた。
「温泉は62度あるから好みの温度に水を入れてくれ」と友人。
早速、脱衣場で準備をして浴室に入ると、体が熱波に包まれ驚く。
湯気の熱さで62度がどれ程のものなのかが分かる。
井戸水なのだろうか、スイカを冷やしたら10分で食べられそうな冷たい水を最大限注入するが、中々適温まで下がらない。
体を洗い終え、暫く待っている間にも湯気が発汗作用を促してくれ、湯船に浸かる前にミストサウナに入ったお得感があった。
いよいよ湯船に入り、さらに感動。
たまたま温泉水が口中に入ったその味がしょっぱい。海に来た実感が湧いた。
聞けば、カルシウム・ナトリウム硫酸塩泉で、飲泉には向かないが、なめると少ししょっぱく、お湯はつるっとした肌触りが特徴的という。
5分ほど温まっただろうか。温泉から出ると、今度は汗が止まらない。
汗を拭いても拭いても、また吹き出してくる。これも網代温泉の特徴で発刊作用が強い性質があり、浸かれば身体の芯から温まるのだ。
漸く汗もおさまって、4時から営業している小料理屋に行った。
そこは、地元の漁師さんも立ち寄る定評のある店で、コリコリしたイカの刺身、サザエ、伊東沖でとれたマグロの赤身などに感動した。
地元の常連さんに話を聞けば、
「京、大阪に江戸、網代と呼ばれて、港町として栄えたのが網代でさ、江戸時代から港町として有名だったんだよ。
魚も色々美味いけど、アジが有名で、アジの姿造りは、ここ網代が発祥の地なんだ。
あとさ、珍しいのが、海上釣り堀というのがあって爽快だよ!」
地元愛をしっかり感じた。
初めて訪れてもどこか懐かしい。何より温泉が私に合っている気がした。
小さな旅、次に又訪れるのが今から楽しみだ。
友人に感謝である。