浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2023年4月10日  嬉しい時流に逆行丼

ソメイヨシノは大分花びらを散らし、八重桜が目立つようになってきた。
世の中に目をやれば、値上げ値上げで、最近では鳥インフルエンザの影響もあり、物価の優等生、タマゴの品薄や値上がりも驚かなくなってきた。
そんな中、4月6日から親子丼の値下げをした会社がある。
「なか卯」だ。親子丼の並盛が従来の490円から450円となった。
値下げに伴う「減量」などは一切無く、内容はそのままである。
「なか卯」はじめ、大手外食チェーンはこれまでも極限までコストを削減し、低価格を競ってきた。
「値上げ」圧力は、「卵」に限ったものではない。
人件費、光熱費、物流費、原材料費の高騰、さらに円安など、挙げればキリがないという状況だ。
今回の「値下げ」は短期的には利益度外視とも言われる。
では、どうして出来るのか。

ある専門家は、理由には大きく2つあるという。
その1つは、「タマゴの安定供給」があること。
報道によると、今回の鳥インフルエンザ騒動に関して、なか卯の契約農場はたまたま、その被害を受けずにすんでいるそうだ。
日本全体では採卵鶏の飼育数の1割を超える鶏が殺処分になるほどに鳥インフルエンザが広がっていて、そのため卵の数が不足しているが、なか卯は今のところ安定して卵が入ってきているという。
契約農家も被害がなければ、契約価格で契約した通りの数量をなか卯に納品しても、別に損をすることにはならない。
その意味ではなか卯の経営環境では、これまで通り490円で親子丼を販売しても困らない状況にあるのが、前提条件だという。
では、なぜ値下げができるのか。

親子丼1杯当たり40円の値下げの財源はどこから出ているのかというと、値下げによる客数増と生産性向上。
タマゴなどの原材料費部分は下がらないが、人件費や店舗の家賃や光熱費などいわゆる固定費部分のコストが「親子丼1杯当たり」に換算すると割安になる。
お店の賃料が1日2万円だとして1日500食なら1杯当たりの店舗コストが40円になるところを倍の1000食なら20円ですむ計算だ。
これが「生産性向上効果」で、客数が増えればそれだけ親子丼は安く提供しても利益があがるようになる。
2つめは、広告宣伝に価値を見いだすところ。
この時期に極めて珍しい値下げで、ニュースバリューがある。
多くのニュースメディアが、なか卯の値下げを取り上げた。
その報道を広告宣伝費に換算すれば多大な広告効果があったことは間違いない。
ニュースを見聞きして、多くの新規顧客が「一度食べてみようか」となか卯の店舗を訪問するからだ。
なか卯の場合は親子丼が圧倒的な看板メニュー。

今回、私も、実際になか卯を訪店して親子丼を食べてみた。
注文から3分少々、目の前に来た親子丼。
CMのように丼に軽く振動を与えると、プルプルと具材が揺れる。
とろっとしたタマゴを、レンゲで口に運ぶ。
だしの効いた少し濃い目の味が口中に広がる。確かに美味しい。
私のような久しぶりのお客や新規のお客が増えれば、この先、再訪店するお客も増える。
だから値下げ分のもとは十分に回収できる、という考えだ。
私が訪れた時間は、日曜の午前10時半、昼食にはまだ先の中途半端な時間だったので、客は私の他は男性2人。
1人は、二八蕎麦のざるそば。もう1人は、和風カレーを食べていた。
どちらも魅力的で美味しそう。食べてみたくなった。
目の前の冷水ポットには、氷入りの玄米抹茶が置いてあり、これがさっぱりしていていい。
加えて、琴の演奏でJポップが流れ、素敵な空間だった。
個人的には、まんまと「なか卯」の作戦にはまった。
その一方で、来て良かったと満足している自分がいた。
店を出ると、街路樹のハナミズキが生き生きと陽光を受けている。
散る桜の寂しさを感じさせまいと、白い花弁を広げる、そんな気がした。

嬉しい時流に逆行丼
嬉しい時流に逆行丼

次は私だ
次は私だ

こちらも元気に
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