浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2023年4月3日  桜 幸せ

桜の花が散りはじめ、替わってツツジやサツキが、ピンクや紅色、白といった美しい色合いの花を咲かせる時季がやってきた。
ツツジやサツキは花木として公園や庭園で植栽され、古来より観賞用の花として栽培されていた。
奈良時代に編纂された『万葉集』にも、天皇家の庭園にツツジが植えられていたことが分かる和歌が記載されている。
鉢植えや生け花にも利用されることも多く、春から初夏を象徴する人気の高い花だ。
ツツジを漢字で書くと「躑躅」。「てきちょく」とも読む。
「てきちょく」には、「行っては止まる」や「躊躇」など意味があり、見る人の足を引き止める美しさから、この漢字が使われたといわれる。
一方、ツツジには元々、「羊躑躅」という漢字が当てられていた。
葉を食べたヒツジが、躑躅して死ぬことからという。
「躑(てき)」という漢字には、たたずむ・足踏みするという意味が、「躅(ちょく)」という漢字には、あしずりする・あがくという意味が含まれている。
羊がツツジを食べて、足踏みをしながら死んでしまったからだそうである。
一部のツツジは有毒であり、それを食べた羊の苦しむ様子がまるで「てきちょく」しているようであったため、「躑躅」という漢字が使われるようになったと言う説だ。

さて、ツツジとサツキは同じような色と姿形をしている。
まず、花の違いから見ていく。
大きさはツツジが6cmくらい、サツキは4cmくらいとやや小さめ。
おしべの数はツツジが5本以上に対し、サツキは5本。
花の咲き方は、ツツジが一斉に咲くのに対し、サツキはパラパラと咲く。
葉の違いを見ると、大きさはツツジが4~5cmくらい、サツキが2~2.5cmくらい。
ツツジは表面に柔らかい毛があり、サツキはつやつやしている。
開花期はツツジが4~5月頃で、新しい葉が出てから花が咲く。
サツキはやや遅い5~6月頃で、新しい葉が出る前に花が咲く。
ツツジの花が咲き終わる5月頃にサツキが咲き始めたことが、名前の由来なのだ。
ところで、ツツジには先述したように毒性のある朱色の花を咲かせる「レンゲツツジ」や、同じく毒性があり、枝先にピンクや白、黄色などの派手で大きな花を咲かせる常緑性の「シャクナゲ」などがある。
「レンゲツツジ」は特に、庭木として栽培されることが多いため、安易に触ったりしないように注意が必要だ。
小さい頃、友達とツツジの蜜を吸った経験があるが、危険だったようである。
専門家によると「レンゲツツジの仲間は葉、花、蜜に毒がある。一般的に公園に咲くツツジとは種類が違う」というが、レンゲツツジと、毒のないツツジの見分け方については、「区別は難しい。レンゲツツジには園芸用の品種もあり、公園や住宅の庭など身近な場所に植えていないとも限らないため注意が必要だ。混じって咲いていることもある」とのこと。
実際に2015(平成27)年5月、新潟県内で庭木のレンゲツツジを食べたことによる食中毒が発生している。
咲く花々の漢字には物語があるものである。
ツツジの蜜は吸わない方がいい。

夕闇にいつまで白き躑躅かな     久保田万太郎

桜 幸せ
桜 幸せ

桜の後には
桜の後には

水滴の似合う花
水滴の似合う花

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