寺島尚正 今日の絵日記
2023年1月9日 便利な縁起物
年が明け、三が日の済んだ6日は、二十四節気の「小寒」。
この日から、立春の前日である節分までが「寒」である。
そして7日は「七草粥」を頂く日だった。
近所のスーパーに行くと、レトルト製品や生野菜の七草が並んでいた。
「1月7日に七草粥を食べるとその一年が健康に過ごせる」と言うことは小さい頃、祖母から聞いていたが、詳しい由来は知らない。
とりあえず、7日に粥を頂いてから調べてみることにした。
「六日のアヤメ十日の菊」とは言うものの、1年はあっという間に過ぎてゆく。
七草粥を食べるのには、2つの理由がある。
無病息災と長寿健康。
無病息災とは、病気をしないこと、何事も達者なことを意味する言葉。
他にも、災害や病気などの災いを防ぐという意味をもっている。
そして1月7日に七草粥を食べるのは、青菜の摂取が不足しがちな時期に、しっかりと体に取り入れるためでもある。
さらに、お正月のご馳走で疲れた胃腸を労るためという説もある。
また、健康長寿とは、いつまでも健康で長生きする、という意味の言葉である。
江戸時代は、現在よりも寿命はずっと短く、その中でも「健康でありたい、長生きしたい」という意味を込めて七草粥を食べたようだ。
七草粥を食べる風習は、中国から始まったとされている。
中国の前漢(紀元前206~8年)の時代に、「元旦は鶏、2日は狗(犬)、3日は猪、4日は羊、5日は牛、6日は馬、7日は人、8日は穀」と、それぞれを占って新年の運勢を見ると共に、占いの対象となるものを大切に扱っていた。
そして7日は、人の日とされ、この日は犯罪者に対する刑罰を行わない日とされていたのだ。
唐の時代になると、1月7日の「人日(じんじつ)」に、「七種菜羹(ななしゅさいのかん)」という七種類の野菜を入れた汁物を食べて、無病息災を祈った。
またこの日は、中国の官吏の昇進を決める日でもあり、朝食は7種の野菜を入れた温かい汁物を食べ、立身出世を願ったとされる。
その風習が日本に伝わり、かつてお正月に若菜を摘んで食べる「若菜摘み」という風習と結びついて、現在の七草粥のスタイルになったといわれている。
若菜摘みは、年の初めに雪の間から芽を出した草を摘み食べると、邪気を払って病気が退散すると考えられていた。
こういった風習は、貴族のものだったが、江戸時代には一般庶民に広まった。
江戸幕府が公式に五節句を認めたからである。
五節句とは、奈良時代に中国から伝わった、奇数が重なる日をめでたいとした考えの事だ。
五節句は、1月7日の人日(じんじつ)、3月3日の上巳(じょうし)、5月5日の端午、7月7日の七夕、9月9日の重陽(ちょうよう)である。
五節句の日は、1月7日を除いて同じ奇数が重なる日。
1月1日の元旦は別格とされ、1月7日が節句に取り入れられている。
中国では奇数は陽の数とされていて、縁起の良い数字が重なることで逆に不吉な日とされ、もともとは厄払いする日として捉えられていたそうである。
1月7日は、将軍以下全ての武士や庶民の間で七草粥を食べる風習が根付いていたという。
推測の域を出ないが、この時期はとれる野菜が少なく、ビタミン不足になりがち。
そこで、庶民にまで行き渡らせて病人を少なくするという施策の1つではなかったか、そんな気さえしてくる。
久しぶりに、私も粥を頂いたが、味も喉の通りも胃袋にも優しかった。
今年、七草粥を食べ損なったという方、「八日の粥」でも悪くない。
適当な野菜を刻んで粥を召し上がれ。体がほっとするはずである。
寒の中、ベランダの沈丁花が春の準備を始めていた。