寺島尚正 今日の絵日記
2023年1月30日 1月下旬、雪の翌朝日陰にて
今年も1月がアッという間に過ぎていく。
1月20日過ぎ、自称誰よりも敏感だという知人が「目が痒い」と訴え始めた。
「恐らく花粉だ」と。実はスギ花粉は少量だが秋冬にも飛散している。
この春、東京都内で飛散する花粉の量は去年の2.7倍となり、早ければ来月13日ごろから飛び始める見通しだという。
これは都が観測を始めた1985年以来、過去4番目の多さになる。
花粉が飛び始める時期は、例年並みの2月13日ごろから17日ごろとみられ、花粉の量が多い日数は各地の平均で51日と、過去10年の平均の33日より18日増える見通しである。
これは去年、花粉ができる初夏の時期に日照量が多く、スギやヒノキが順調に成育したことが花粉の量が多くなる要因だとしている。
それにしても、いつ頃から花粉症は騒がれ出したのか。
調べてみると、花粉症が始めて報告されたのは、1964年の論文で、意外と最近。
その後、1970年頃から、花粉症の患者が急増し始めた。
日本は、国土の約7割が森林。人工林が日本の森林の約4割をしめる。
人工林のうちスギ・ヒノキ林が7割。
スギ人工林の面積は、国内森林面積の18%、ヒノキの人工林は、全森林面積の10%。
日本にあるスギやヒノキは、戦後の拡大造林政策の影響もあり、1940-80年代頃に植林されたものが大半を占める。
スギが花粉を本格的に飛ばし始めるのは、植えてから約30年後。
つまり、植えてから30年のタイムラグを経て、1940年頃に植えられた木が、1970年頃から花粉を生産し始め、これまでにはなかった勢いで年々花粉の飛散量を増してきた考えられる。
最も多く、スギ・ヒノキが植えられたのは、1960年頃で、少なくともスギは、樹齢50年になるまでは年々花粉の生産量を増やし、その後花粉の生産量は、横ばいになる。
つまり、1970年代以降に植えられた木は、まだ年々花粉生産量を増やしており、それ以前に植えられた木に関しても老齢による花粉生産量の減少は期待できない。
では花粉飛散量を減らすにはどうしたら良いのか。
花粉飛散量を減らすには、少なくとも今のところは、伐採するしかない。
しかし、なかなか伐採は進まない。
1964年の木材の輸入の自由化に伴い、外国産の材が安価に手に入るようになった。
その結果、高価な国産材の需要が小さくなり、スギ、ヒノキの人工林が管理されなくなってきた。
また、伐採した跡地は、放置すれば自然災害につながるため、また樹木を植林しなくてはならない。
スギ、ヒノキ林を減らすには、問題が山積しているのである。
伐採する以外の手段として、スギの雄花だけを枯死させるカビが知られている。
研究によりそのカビをスプレーすることで80%の雄花が枯死するという結果が得られているが、まだ、実用化には至っていない。
このカビの散布に関しては、効果がわかっているのは、スギだけでありヒノキには対応できない。
カビという生物を使うことのリスクが予測しきれないことなどの懸念がある。
花粉生産量の増加に加え、都市部ではコンクリートで舗装された場所が増え、花粉が土に付着することなく何度も舞うことも、人が花粉に暴露する機会が増えた原因だと考えられている。
ある専門家は「日本にどんどんスギ・ヒノキの植林が増やされていたころ、何十年後にこれほども多くの人がその花粉に苦しむことになるとは、誰も思いもしなかった。花粉症は、人間が自然環境に手を加えた結果、作り出してしまった病気とも言われている。自然に手を加えることの影響を予測することが如何に難しく、また、制御不能な事態を起こしうるのかを人類が学ぶ例として、花粉症は捉えられるべきかもしれない」と語る。
日本には非常に多くの杉林があり、全ての杉林を花粉が少ない杉に植え替えるには相当の年月を要する。
杉の伐採が進まないのであれば、自己防衛するしかない。
免疫やホルモンバランスも花粉症症状の程度を左右する。
早寝早起きしたり、バランスの取れた食事をとるなど生活習慣にも気を付ける等が言われる。
実際にバランスのいい食事を摂るようにし、睡眠時間を6時間ほど確保するようになってから花粉症が改善されたという人もいると聞いた。
私も花粉が多く飛ぶと目が痒くなるときがある。
都は、マスクやメガネの着用や家に入ったあとのうがいや手洗いなどの対策とともに、花粉症の症状が出たら適切な治療を受けることを呼びかけている。