寺島尚正 今日の絵日記
2022年9月5日 秋の始まり
9月の声を聴き、新米の季節がやってきた。
収穫されて間もない新米は、古米に比べ水分量が多く、ひとつひとつの粒にみずみずしさがある。
この新米を炊くと、お米がツヤツヤでピカピカ光っている。
こうしたみずみずしさが、口の中に入れたときアツアツ加減と相まって鮮度の高い舌触りに感じるのだ。
お米の約7割以上を占めるのがデンプン質。新米には豊富に含まれている。
水分を含み加熱することで、デンプン質が糊のようになり粘りと旨みを引き出す。
もちもちとして粘りがある新米の秘密が、ここにあるという。
新米と呼ばれるお米は、その年に収穫されたお米を指す。
これには法律によって明確にルール付けがなされていて、収穫した年の12月31日までに精米・袋詰めされたお米のみが「新米」と呼ばれる。
ところで、日本人の「お米離れ」は年々進行していて、農林水産省が2022年8月に発表した「食料需給表」のデータによると、昭和37年度の118kgの消費量をピークに減少傾向となっている。特に、令和2年度の消費量は50.8kgと、近年ではピーク時の半分以下にまで減少している。
一方でお米は100%に近い国内自給率を維持していることから食料安全保障の要ともされているほか、三大栄養素の一つ、炭水化物が主成分であるのはもちろん、体の形成に必要なたんぱく質やビタミン、ミネラルも多く含まれているため、健康面においても大切な作物であると考えられている。
あくまで個人的な好みではあるが、「新米のおかずは何が好き?」と問われれば、私は「塩鮭」と答える。
小学生の頃、昼間、思い切り遊んだ後の夕食に、カリカリに皮を焼いた塩鮭を炊きたてのご飯と一緒に頬張り、口の中で、お米の甘みと鮭のパンチのある塩分と脂の優しさが、手を取り合ってダンスをしている如きの幸福感は、今でも鮮烈に覚えている。
そんな鮭の便りも届いている。
札幌市の中央卸売市場で、秋サケの競りが9月3日の朝行われた。
秋サケの競りは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、去年まで2回続けて行われず、3年ぶりの開催となった。
最も高いものは1キロ当たり1万3999円の値がつき、3年前の最高値と比べるとおよそ1.4倍だという。
関係者は「秋サケの初せりが行われてようやく秋が始まったという感じ」と話す。
鮭には紅鮭、銀鮭などの種類があるが、日本で水揚げされる生鮭のほとんどが白鮭という種類。白鮭だけでも様々な呼び名があるが、その中でも「秋鮭」とはオホーツク海などを数年回遊した後、産卵の時期である秋に日本の川へ戻ってくる白鮭のことを指す。
白鮭は回遊している為、同じ秋鮭でも水揚げされる地域によって微妙に旬の時期が異なる。
「秋鮭」は「あきざけ」「あきさけ」「あきじゃけ」「しろさけ」など様々な読み方がある。
地域によっては「鮭は秋の味覚」という意味で「秋鮭」のことを「秋味」と呼ぶという。
愛宕にある寺を参詣した。萩が咲いている。萩は秋の七草の一つ。
秋の七草とは、女郎花(オミナエシ)、尾花(ススキ)、桔梗(キキョウ)、撫子(ナデシコ)、藤袴(フジバカマ)、葛花(クズ)、萩(ハギ)の7種類。
秋の七草は、春の七草のように食べられる花ではない。その花を愛で、香りを楽しみ、秋を感じ、季節の移ろいと情緒を楽しむことを目的としている。
秋の七草の由来は万葉集に収められている山上憶良の歌からで、なかでも萩は万葉集で一番多く詠まれた植物として有名なのだそうだ。
秋の彼岸は20日から。今年も「おはぎ」頂こう。
秋は食欲旺盛な季節、なのである。