浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2021年12月6日 今日の風味

週末、スーパーへ炭酸水を買いに行った。
家にある焼酎を炭酸水で割って「酎ハイ」を作るためだ。
午後4時の店は夕食までには少し時間があるからか、比較的空いていた。
500ミリリットルのボトルを3本バスケットに入れると、直ぐに、お菓子コーナーを避けて、レジに向かって歩き始めた。
滞留時間が長いとどうしても無駄遣いをしてしまう。
大体スナック菓子を買ってしまうのだ。
次の角を曲がればレジの場所だというところで、右手の棚が視界に入った。

そこには漬物が並んでいた。
「漬物でさっぱりと、というのも悪くない」
そんな思いが頭を通過し切らないうちに、からだは既に漬物コーナーの前にいた。
梅干し、沢庵、べったら漬け。白菜の浅漬けも美味しそう。
「どれにしようか」
全てが美味しく輝いている。
昭和40年代の歌謡曲を歌い終えるほど迷った後、手にしていたのは「しば漬け」だった。
「しば漬け食べたい」
そんなテレビCMがヒットした時には、さほど魅力を感じなかったが、今では、月に1度は食べたくなる。
レジで会計をしながら、ふと疑問がわいた。
「何で、しば漬けというのだろう。紫蘇葉漬けが縮んだものか」

調べてみると
『ナス・キュウリ・ミョウガなどを刻み、赤ジソとともに塩漬けにした漬物。
もともとは「紫蘇漬け」といっていたものが、略されて「しば漬け」となったとされる。』

はたまた、
『大原の寂光院に閑居していた建礼門院に、地元民がシソを使った漬物を献上したところ、その味にたいそう喜んだ。
そして、鮮やかな紫色にちなんで「紫葉漬け(むらさきはづけ)」と名付け、それがしば漬けとなった。』
とも出ている。

建礼門院といえば、平安時代の末期、いわゆる「源平合戦」の後で敗れた平家の娘である建礼門院である。
帝の妃だったが、壇ノ浦の合戦で平家が滅亡した後も生き残り、大原の寂光院という寺に送られ出家。
夫である高倉天皇は既に亡くなっており、その上源平の戦いで子供である安徳天皇と一族を失って、侍女と共に仏に祈る生活を送る建礼門院に里の人が差し入れたのが「しば漬け」だった。

しば漬けの発祥の地、大原はシソの産地だったので自然と保存食の材料にも使われていた。
赤ジソとナスで作られた漬け物は鮮やかな紫で彩りが美しく、それを喜んだ建礼門院が「紫葉漬け」と呼んだのか。
「酎ハイ」を作り「シバ漬け」を皿に盛り、宴を始めた。
いつも以上に丁寧に頂いた。
京の香りを味わいながら。

 今日の風味
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