寺島尚正 今日の絵日記
2020年11月30日 黄色の敷物
立冬から20日以上経った土曜、甲州街道を歩いた。
甲州街道の沿道に並ぶいちょう並木は八王子市の天然記念物。
大正天皇の御陵造営を記念し、今から約90年前、1927年〜1929年にかけて、
高尾駅前交差点から追分町交差点までの約4キロに、記念樹として植樹された。
毎年11月頃には美しく黄葉し、甲州街道沿道を黄金色に染め、
落ち葉は、小さなつむじ風が起こると、踊るかのように宙を舞い和ませてくれる。
世の中は、新型コロナウイルスに翻弄され、各種イベントや宿泊・飲食店を中心に
大きな影響を受けているが、イチョウは、今年も例年通り黄色く色付き、
落ち始めて扇形の葉が風に乗り踊り始めている。
イチョウはとても古くから存在する植物で、約2億年以上前にはすでに存在していたとされている。
しかし、ほとんどの種類は氷河期などの気候変動によって絶滅してした。
今残っているのは、私たちが目にする一種類のみだそうだ。
ところで、イチョウという名前の由来何だろう。
和名であるイチョウは、中国名の一つの「鴨脚(ヤーチャオ)」だといわれている。
イチョウの葉の形が水かきを持つ鴨の脚に似ていることが由来のようだ。
ただ真相ははっきりとしない。
イチョウは漢字で「銀杏」「公孫樹」「鴨脚樹」と書き、全て「イチョウ」と読む。
イチョウの木が街路樹として人気の理由は、排気ガスや硬い地面という厳しい環境でも強く長生きするため。
春に開花し、夏に緑に茂り、秋には紅葉するため、季節の移ろいを楽しませてくれる。
さらに、イチョウの紅葉は散った後もしばらくは色を失わないため、
まるで地面に黄色い絨毯を敷いたように綺麗だ。
日本で街路樹として最も使われている木はイチョウが8.4%だそうだ。
それにしても、あの銀杏の臭いさえなければと思う。
臭いの訳は、銀杏は栄養価が高く他の生き物から狙われてしまうために、
あの特有の臭いを放っているという。
また、銀杏の実を作るのはメスの木とされている。
そのため最近では、オスの木を植えるところが多くなってきている。
「ならば、始めからオスの木を植えればよかったではないか」と思うが、
開花した際に雄花か雌花か「花」を見るまでは、性別は分からない。
そのため挿し木し、クローンを作ることでオスの木を増やしているのだ。
また葉の形はどれも同じようだが、よく見ると変化に富んでいる。
切れ込みの数や深さ、葉の幅の広がりの角度、葉柄の長さ等、同じものは二つとないのだという。
街路樹で枝を切る機会が多い木は切れ込みが多くなり、
自然に成長させたものは切れ込みがない扇型が増えるのだそうだ。
見慣れているイチョウにも様々な物語がある。