浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2020年10月19日 秋の華

あなたは、競馬に興味がおありだろうか。
この日曜に、中央競馬会初の記録が生まれた。
小生は、競馬にはかなり距離がある。
スポーツアナウンサー駆け出しの頃、つまり40年近く前は
毎週末競馬場に通い、競馬実況の練習をしていた。
各レース、必ず実況用の資料を作る。白い紙に、騎手の上半身が描かれたイラストが18並んでいる。
そのイラストに、1枠なら、ヘルメットを白く塗り勝負服の模様を描き、
馬の名前や参考データを書き込んでいく。
それを「塗り絵」と呼んだ。
馬主からしてみれば、意味のある馬の名前だが、
素人の私にはトチリやすい呪文の様なものが沢山あった。
更に実況の際、重たい双眼鏡を使って離れた位置の順位、
馬についている番号を確認し、実況台にある塗り絵に目を落として馬名を伝える。
くらくらした。その作業にどうしても慣れず、結局生の競馬実況は経験できなかった。
後ろめたい気持ちに加え、予想が当たったことも皆無。
そんな競馬と私の関係だが、今回中央競馬の歴史的瞬間はしっかり見届けた。
G1レース「秋華賞」だ。「秋華」とは、
中国の詩人である杜甫や張衡が「あきのはな」として詩のなかで用いた言葉。
「秋」は大きな実りを表し、「華」は名誉・盛り・容姿が美しいという意味がこめられている。
その秋華賞、芝距離2000m、3歳牝馬(ひんば)つまりメスだけの戦いだ。
桜花賞と優駿牝馬(オークス)に加え、牝馬限定の三冠競走を締めくくるGIレースが秋華賞なのである。
今年、すでに二冠を手中にしている馬がいた。
「デアリングタクト」三冠牝馬は過去「メジロラモーヌ」「スティルインラブ」
「アパパネ」「ジェンティルドンナ」そして一昨年の「アーモンドアイ」といる。
デアリングタクトが史上初と注目されていたのは、
ここまで無敗、つまりデビュー以来4戦全勝で来ていることだった。
無敗の二冠は1957年のミスオンワードも記録している。
しかし、牝馬に無敗の三冠はいない。
レベルの高い競走馬がそろうのに加えて、レースによって競馬場や距離などが異なることから、
3冠達成のハードルは非常に高いからだ。

25回目となる秋華賞、京都市伏見区にある京都競馬場の芝2000メートルのコースで18頭が出走した。
1番人気のデアリングタクトは、中盤から徐々にペースを上げ、
最終コーナーで一気に先頭に抜け出し、1馬身余りの差をつけて、2分0秒6のタイムで優勝。
重ねてデアリングタクトの3冠は、デビューから無敗のままで達成され、
牝馬としては史上初の快挙となった。
「馬7:騎手3」という言葉がある。
これはレースにおける馬と騎手の重要度を表す比率であり、競馬の格言として昔から言われてきた。
実際に走っているのは馬なのだから確かに7割馬の力と聞いて納得する部分はあるが、
厳しい訓練を経て、狭き門を突破し、選ばれた者しかなれないジョッキー。
デアリングタクトに鞍上した松山弘平騎手は「思っていた位置で流れに乗ったいい競馬ができた。
すごくうれしく思うし、こういう馬に出会えて幸せだ」と話した。
デアリングタクトの意味は「大胆な戦法」名前ほど作戦を練らずとも勝てた、
それだけ馬自身の能力が抜きんでている証拠だ。
馬が全能力を発揮するかどうかは少なくとも3割は騎手の技量にかかっていると考えれば、
競走馬の能力差が少しぐらいであれば騎手の腕ひとつで逆転できると言える。
改めて騎手に大きな拍手を送りたい。
ところで今年の競馬はこれだけで終わらない。
競馬の3冠は、3歳の馬だけが出走できるG1レースを3つ制すること。
対象となるレースは馬の性別ごとに分かれており
牝馬(ひんば)は、桜花賞、オークスのクラシックレース2つに加え、秋華賞。
牡馬(ぼば)」オスの馬は、皐月賞、牝馬も出場可能な日本ダービー、
そして菊花賞の3つのクラシックレースが対象。
そして今度の日曜はクラシック競争最後の「菊花賞」。
その菊花賞に三冠をかける馬がいる。「コントレイル」
皐月賞ダービーと勝ち、デビューから無敗。ただ、牡馬の三冠は過去7頭中2頭が無敗。
「シンボリルドルフ」と「ディープインパクト」だ。
次にコントレイルが勝つと、史上初めて同一年に牝馬と牡馬の誕生となる。
来週の日曜も競馬から目が離せない。
コントレイルの意味は「飛行機雲」予想が的中すればもっと楽しいのだろうが・・。
「競馬は人生の縮図であり、これほど内容の詰まった小説はほかにはない」
アーネスト・ヘミングウェイ
秋の華
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