寺島尚正 今日の絵日記
2020年7月20日 同期到着
今週7月23日木曜は海の日。国民の祝日である。
本来海の日は、7月の第3月曜だが、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の円滑な
準備及び運営に資するため特別にずらし、4連休とした。
そのオリンピック・パラリンピックが新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となり、
複雑な連休を迎える。海の日といえば、
先日東京と伊豆諸島航路を結ぶ東海汽船の2代目さるびあ丸が
3代目にバトンタッチした話を記した。
その東海汽船は130周年。1つの節目と言える今年に、もう1組船を新旧交代をさせた。
新しいジェットフォイル「セブンアイランド結(ゆい)」を7月13日(月)に投入したのだ。
これは、国内では25年ぶりとなる新造のジェットフォイル。
ジェットフォイルは、水中翼によって船体を海面から完全に浮上させて翼走する超高速船で、
時速80km以上での航行が可能。
元々、航空機メーカーのボーイング社が技術を駆使して開発し、
川崎重工がその製造および販売権を引き継ぎ、
1995年までに15隻を建造した。しかしその後は製造を中止していた。
2020年7月時点で国内7航路、21隻のジェットフォイルが運航されているが、
いずれも製造から年数が経過し、その置き換えが課題になっているという。
この25年間、運航事業者は船齢の若い中古船を購入して若返りを図るなどしてきたものの、
もはや老朽化への対策は待ったなしの状況だそうだ。
一方、今では世界唯一のジェットフォイル製造企業である川崎重工も、
25年という期間を経て、その技術伝承が課題になっている。
「結」の建造にあたっては在職中のベテランに加え、かつてジェットフォイルに携っていたOBも招集したそうだ。
ジェットフォイルの置き換えが進まない最大の要因は、その価格。
「結」の建造費は51億円で、資材の高騰もあり25年前よりもかなり高額になっている。
東海汽船は共有建造制度を使い、さらに東京都が建造費の45%を支援しているという。
この東京都の支援があって、「結」の建造にこぎつけたそうだ。
今造らなければ、技術も部品の調達ルートも途絶えてしまう。
その危機感が東海汽船と川崎重工とで一致し、「結」の建造につながったのだ。
その「結」と交代に、東海汽船の高速ジェット船「セブンアイランド虹」が、
7月12日(日)の運航をもって引退した。
この船は、1981年ボーイング社で竣工した。
欧米での運航を経て2002年東海汽船の伊豆諸島航路に就航。
そこから約18年間活躍してきた。
1981年と聞いて最後の姿を是非見たいと思った。
私が文化放送に入社した年と同じなのだ。その道や姿は違えど同期なのである。
同じ時代を過ごしている点では紛れもなく一緒だ。
欧米の船名は女性名詞と聞く。欧米で活躍していた頃はどんな名前で呼ばれていたのだろう。
乗客の様々なドラマを沢山見てきたはずである。
引退した虹は、雨上がりの16日木曜、
東京竹芝港午前8時50分発の定期船「セブンアイランド結」・臨時便「セブンアイランド愛」と
同時に竹芝を出航し、東京竹芝桟橋に別れを告げた。
7色に施された船体の上でスタッフが帽子を振る。思わず私も手を振った。
「お~い!ご苦労様~。俺はまだ頑張るよ~」返事の様な高めのホーンが竹芝に響く。
湿った風が頬を撫でる。無性に船旅がしたくなった。