寺島尚正 今日の絵日記
2019年7月1日 蘇民将来子孫家門
小雨の日曜、神社で茅の輪を見かけた。
「夏越の祓(はらえ)」を迎え、今年も半分過ぎるのだと感じる。
「夏越の祓」は、6月30日に行う祓の行事で、
神社の境内につくられた茅の輪をくぐって罪や穢れを落とすため、
「茅の輪くぐり」とも呼ばれている。
茅の輪とは、茅(ちがや)という草で編んだ輪のこと。
昔より、日々生活していると、様々な罪や穢れが生じると考えられてきた。
そこで、茅の輪や形代(かたしろ)などで罪や穢れを祓う
大祓を行うようになったという。
6月末に行われるものが「夏越の祓」(夏越大祓)で、
12月末に行うものを「年越の祓」(年越大祓)。
夏越の祓は今年前半の穢れを祓って、無事に過ごせたことに感謝し、
後半も元気に過ごせるよう祈る行事なのだ。
茅の輪くぐりは、日本神話に基づいているといわれている。
昔、北の湖にいらした武塔神(むとうしん)という神が、
南の海の神の娘に求婚をしに旅に出た。
その道すがら日が暮れてしまった。
日の暮れた場所にはある兄弟が住んでいた。
兄はとても貧しく、反対に弟は裕福。
弟の土地には家と倉が合わせて百もあるほどで、
武塔神は弟の家に行き、一夜の宿を請うた。
しかし、弟は武塔神の姿を見るなり嫌な顔をした。
武塔神は質素な旅装束に身だったのだ。
弟は武塔神を蔑み、家に入れなかった。
それを見ていた兄の蘇民将来は武塔神を家に招き、
貧しいながらも座る場所を用意し、粟ご飯も炊いて歓迎をした。
翌朝、武塔神は南の海に向け旅立った。
それから数年後のこと。
武塔神は無事に南の海の神の娘と結婚し、八柱の子を授かり、
北の国に帰ることにした。
その途中に、兄、蘇民将来の厚意のお返しをしようと村に寄った。
そこで、蘇民将来の娘と妻に会い、「茅の輪を腰の上につけなさい」と伝えた。
言う通りにしていると、その晩に疫病が発生した。
疫病は、茅の輪を着けていた蘇民将来の娘一人を除いて、
人々をことごとく殺し滅ぼしてしまった。
生き残った娘のもとに武塔神が現れた。
「私は、武塔神と名乗っているが本性はスサノウの神である。
後の世に疫病が発生したならば、お前の一族は『蘇民将来の子孫だ』
と言って、茅の輪を腰に着けるように。そうすればこれから先も、
疫病の難を逃れることができるであろう」
この話に基づき、茅の輪くぐりをしたり、家の玄関に蘇民将来のお札をつけたりするようになったという。
午前八時、境内で巫女さんがお札の準備などし始める中、
ひっそりと茅の輪くぐりを済ませた。
しずけさに包まる雨の夏越かな
貴方が、今年後半、笑顔で過ごせますように。