寺島尚正 今日の絵日記
2019年3月18日 水温む
今年もサクラの季節が近づいてきた。
東京のソメイヨシノ開花は
靖国神社境内の標本木に5輪以上の花が咲いた状態となれば出される。
桜の開花予想には、目安として2月1日以降または
そのシーズンの最低気温を起点として
その日「最高気温」の積算が600度を超えると開花する「600度の法則」や、
2月1日以降の「平均気温」の積算が400度を超えると開花する
「400度の法則」などが知られている。
ソメイヨシノは、緑の若葉が出る前に、
木全体を覆うように淡紅白色の花をつける。
花は3、4個集まって咲き、香りはなく、花弁は5枚の一重咲き。
その起源には様々な説があるが、遺伝子解析の結果、
エドヒガンザクラとオオシマザクラの交配によって生まれたことがわかった。
桜と言えば、ソメイヨシノをさすのが一般的。
それだけ全国に多く植えられ、名所があるからなのだろう。
ところで、ソメイヨシノは、クローン植物だというのはご存じだろうか。
ソメイヨシノは、自然に増えることができない。
種子で増やすと親の形質を必ずしも子に伝わることがないため、
ソメイヨシノという優秀な性質を残しつつ増やす方法は、
接木や挿し木などの栄養繁殖という方法をとるしかない。
故にクローンとなるのだ。
ソメイヨシノは、接木など人の手を介さねば
生存することが出来ない品種なのだ。
毎年、桜前線が発表される。ソメイヨシノはクローン植物だからこそ、
遺伝子が同じなので条件が整えば一斉に開花する。
換言すれば、世界でも類を見ない、全国津々浦々に配した
生物気象観測装置と言える。
ソメイヨシノ寿命60年説というのをたまに聞く。
寿命が短い桜だと言うのだ。
一方で寿命60年説に異議を唱える人もいる。
例えば、青森県で樹勢回復に熱心に取り組まれた結果、
多くのソメイヨシノの樹勢回復が成功したという。
大切なのは常に新しく根を更新してあげることだという。
最初は1本から始まったソメイヨシノ。
今年もその木の下でどんな物語が生まれるのだろう。
さまざまの こと思ひ出す 桜かな