寺島尚正 今日の絵日記
2019年3月11日 本陣宿泊
3月11日。
東日本大震災の発生から8年になる。
今年も、宮城県・気仙沼市にお邪魔した。
都合9回訪れているが、限られた時間の中の為
そのたびに、驚きや考えさせられる事に出会う。
今回新たに体験したのは「津波」だ。
気仙沼市唐桑半島にビジターセンターがある。
国立公園に指定されている唐桑の美しい自然と海と共に
生きる人々の暮らしや文化を紹介している所だ。
そこに、津波体験館がある。(有料380円)
この体験館は、東日本大震災の記録や教訓も加えた
防災教育に役立つ映像内容に音響や振動などを組み合わせ
津波の疑似体験ができる施設である。
48席のミニシアターの様な空間が体験室である。
体験自体も有意義だったが
体験前に係りの女性の発した言葉が今も耳から離れない。
「それでは、これから津波体験をしていただきます。
津波体験館は 防災教育の一環として
昭和59年に造られ、その後リニューアルされ
今日に至っています。
この地区は明治29年の三陸大津波など様々な津波の被害にあっているのです。
そして、2011年に東日本大震災が起き、津波が来ました。
唐桑地区は約6000人が暮らしていますが、あの津波で
およそ130人が死亡または行方不明となりました。残念です・・。」
全国初の津波体験館がありながら、唐桑で130人もの犠牲者が出てしまった。
まさに痛恨の面持ちだった。
天災は人間の予想をはるかに超える、そう思わなければならないことが
女性の表情から伝わって来た。
東日本大震災の津波で多くの犠牲者を出したのが
岩手・宮城・福島、東北の太平洋沿岸地域だ。
しかし、 震源地から遠く離れた関東地方にも、
津波で大打撃を受けた場所がある。
茨城県内では24人が死亡、1人が行方不明となり
災害関連死は42人に上っている。
そして 千葉県旭市。
旭市では震災で死者13人、行方不明者2人を出した。
千葉県内の死者20人、行方不明者2人だから、大半が旭市だ。
地震発生から2時間半以上が経過してから押し寄せた大津波が、
海岸沿いの飯岡地区を飲み込んだ。
市内の飯岡地区に津波の第1波が到達したのは、
地震発生から約1時間後。
海岸に近い家々は浸水し、一時避難した人もいた。
それほど大きな津波ではなく、いったん波が引いて
落ち着いたように見えたという。
1960年のチリ地震の津波も経験していた人がいて、
感覚的に大丈夫と判断したようだ。
住民がホッとして避難場所から家に戻った後の17時26分、
高さ7.6メートルの大津波が飯岡地区に襲いかかった。
建物や車を次々と破壊。
地震発生から2時間半後の「まさか」の事態。
一度は避難したのに、家に戻り巻き込まれた人たちが多かった。
津波警報が出ても、仮に1メートル程度なら「避難するのは大げさじゃないか」と思った人もいたようだ。
過去の経験からの「油断」、「思い込み」。
災害心理学では「経験の逆機能」と呼んでいる。
災害の時だからこそ、人は判断力がおかしくなるという。
日頃の災害に対する知識と訓練が改めて必要だと感じている。
いつ起きてもおかしくない首都直下地震と南海トラフ地震。
「我が家、津波は関係ないや」ではなく、
あなたに襲い掛かりそうな災害を想定し、
どう対処するか行動の仕方を考えておいて欲しい。
そしてラジオを持っていて欲しい。
起きてほしくはないけれど
その時、私達ラジオに携わる人間は、全力で情報を送りますから。
あなたに・・。