浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2018年12月25日 プレゼントはそこにある

外国の名言を紹介する。
「クリスマスの朝に目が覚め、もう子供ではないことに気がつく。
この世でこれほど寂しいことはありません」

クリスマスが来ると思い出すことがある。
私が幼稚園から小学校中学年だった頃、
我が家のクリスマスは、聖夜に七夕を合わせた様な催しだった。
クリスマスイブの1か月ほど前に
「サンタさんへお願い」と書かれた短冊の「お願い用紙」に
欲しいプレゼントを書く。
そうすると、イブの2週間位前に
「サンタクロースより」という返事が届く。
その返事は2種類あった。
「願いは叶いそうだよ」と「他の物にしてね」というもの。
今考えれば、理由はわかる。
しかし、当時は理解に苦しんだ。
他の物を選べと言う理由を、
母親は、「きっとサンタさん、忙しいのね」と説明した。
私は不服だった。
「万能であるはずのサンタクロースは
どうして僕の願いを叶えてくれないのだろう・・」
小学校4年だったと記憶している。
どうしても欲しいおもちゃがあった。
それ以外は欲しくなかった。
「お願い用紙」に
「スーパーチャージャーがほしいです。ほかはいりません」
と書いた。
2週間後、母親が言った。
「サンタさんが、どうしてもそれが欲しいのか、と言っているわよ」
「うん」
「クリスマスに間に合わないかもしれないって」
「待つ」
そこからサンタとの連絡は途絶えた。
クリスマスが期待と不安で入り混じった。
イブ1週間前に、父が入院した。
元々、体が丈夫ではなく、冬場はよく体調を崩していた。
私は、漠然と不安になった。
サンタクロースからの返事が父の字に似ていたから。
父は、病室でイブを迎えた。
見舞いに行くと、6人部屋の窓際に父のベッドがあった。
父が言った。
「明日は、お母さんと、お姉ちゃんと3人でケーキ食べるんだぞ」
苦しそうな父の気管から、木枯らしの様な音が聞こえる。
「うん」
私がいけないのだと思った。
私がサンタさんに無理なお願いをしたから
父の健康が奪われてしまったのだ。
その夜、寝床で只管お願いした。
「サンタさん、スーパーチャージャーはいりません。
おとうちゃんのびょうきをなおしてください。おとうちゃんにいてほしいです」

翌日、起きるとスーパーチャージャが枕元にあった。
嬉しかった。でも悲しかった。
父はいなかった。
1週間後、父は退院した。
私は、サンタクロースから一番大切なプレゼントを
あの日貰った気がしている。

「サンタクロースが煙突から入ってくると思っている人は誤解している。
本当は心をつたって入って来るんだよ」
MerryChristmas
プレゼントはそこにある
プレゼントはそこにある

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