浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2018年2月13日 希望

週末の朝、某鉄道での事である。
各駅停車に乗った。
偶然、新型車両だった。
先頭車両の新しい匂いがするシートの感触を楽しんでいると、
とある駅で特急との接続の為暫く停車。
ホームには、乳飲み子を胸に抱いたお母さんの姿があった。
そして、その手を引っ張る 3歳位の男の子が目を輝かせている。
男の子は電車に近寄った。
お母さんは、 ニューフェースをバックに
息子を撮影しようとスマホを構えている。
男の子が電車の運転席に接近した。
すると、運転席にいた制服姿の運転士が
慌てた様な動作で運転室のドアを開けてホームへ向かった。
男の子が電車に触りそうだったので、注意をしに行ったのか、そう思った。
スマホをかざしていたお母さんも「何か悪いことをしたのかしら」
という困惑の表情。
高倉健を50代に戻した感じの
苦み走った顔をしている運転士が男の子に近づいた。
すると、運転士はしゃがみ込み、
男の子の視線と自分の視線を合わせた。
ブルーのセーターを着た坊やはどんぐり眼になっている。
運転士はゆっくりと、男児と目を逸らさず
自分が被っている制帽をとった。
そして、怯える気持ちを隠し切れない少年に被せた。
その後、直ぐに少年と距離をとり、お母さんに頷いた。
「 まあ!ありがとうございます!嬉しい!
〇〇くん、良かったねー!
この子、電車が大好きなんです!今朝も、スタンプラリーの為に待っていたら 新型の電車が来たので 早起きして良かったね、って。
こんなに良くして頂いて・・・」
お母さん、子供以上に感動し 写真を撮り始めた。
高倉健似の運転士は、ほんの一瞬、目尻の皺を深くした。
男の子の瞳で星が光った。
まだ小さい彼の人生の中に「鉄道」の魅力が刻まれた気がした。
それは、電車というハード部分のカッコよさと
それに携わる「鉄道員」の心意気だ。
外はまだまだ寒いけれど、母子を、そして辺りを温めてくれたひと時だった。
92の国と地域が集まった冬のオリンピックが始まった。
大会で繰り広げられる悲喜交々のドラマ。
多くの老若男女が感動し
大会をきっかけに、スポーツを志す若い力が何人も生まれることだろう。
ベランダの沈丁花が赤紫の蕾から白い花を覗かせ始めた。

希望
希望

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