寺島尚正 今日の絵日記
2017年5月15日 梅雨は遠くない
5月14日、母の日。
3か月前に倒れ、先月退院した米寿の我が母。
「母の日は何もいらないよ、迷惑かけたから」
本人はそう言うけれど、
少しでも体力が戻る贈り物をと考えていた。
そういえば卵焼きが好きだったな・・
台所で使い込んだ卵焼き用フライパンは見かけたが
恐らく使えない。
2年前、母の視力が衰えてきたため
火災予防を考え、ガスからIH(電磁調理)に変えた。
ご存知のように
同じ形のフライパンでも
ガス火専用とIH対応があるのだ。
現在母親、料理は出来ない。
平日はヘルパーさんにお願いしている。
ホームセンター行ってみた。
取っ手が着脱出来、卵焼き用と、
深いフライパンとセットの物を選んだ。
家に戻り、母親に1日早いプレゼント。
「あら、有難う!買おうと思っていたのよ。
一昨日ヘルパーさんが作ってくれようとしたのだけれど
あのフライパン、どうしてもIHが反応しなかったの」
久しぶりの笑顔だ。
「卵焼き、卵焼き、美味しいのよねえ、早く食べたいわ」
外箱の縁を手で摩っている。
夕食後なのに食べたそう。
「試しに作ってあげようか」
「ホント!?お願いね!
明日の朝も食べたいから、卵3つくらい使ってね」
食欲旺盛なのは、母にとっては良い事。
新しい卵焼きフライパンを取り出し
1度洗ってからサラダオイルをひく。
溶いた卵に三温糖を多めに入れ
隠し味に出汁醤油を少々。
フライパンに注ぎ入れる。
中火で焦げ目をつけてから
弱火にして巻いていく。
まだ少しとろみが残っているうちにIHを止め
余熱を利用し完成。
「いい匂いがしてきたわ」
母は、待ち切れずベッドから調理台に来ていた。
熱々の一切れを皿に乗せて渡すと
母はそれをさらに半分にして口に入れる。
目が糸になった。
そして、残り半分の皿を持ち歩き始めた。
どうするのか、ベッドで味わうのかと思ったら、
ベッドを通り過ぎ、よろつきながら仏壇へ。
その背中を見てジーンときた。
仏壇には夫(私の父)がいる。
昔2人は目が合えばがみがみ言い合っていたのに・・。
余程嬉しかったんだなあ、卵焼き。
何より嬉しい贈り物は、豪華なものより真心なのだ。
ようやく1つ親孝行できた気がした。