寺島尚正 今日の絵日記
2013年4月7日 昼の顔
週末花見をした。
自宅近くの公園角にあるソメイヨシノ。
幹の太さは約80センチ。
枝先までの高さは6?7メートル。
2月の大雪、近くの車庫屋根は幾つも潰れた。
しかし桜はそれに耐え
今年も見事に無数の花をつけた。
木の下にベンチがある。
それは、花をめでるためではなく
やがて青々とした葉を茂らせ夏を迎えた時、
木陰で休む目的で出来たものだ。
腰を下ろすとそれがわかる。
花を見るには左に体をよじり、見上げねばならない。
その恰好は5分と持たないのだ。
夜10時。もう犬の散歩にも来ない時刻。
焼酎をロックグラスにたっぷり注ぎ、家を出た。
オレンジの街灯が公園を照らしている。
幹に近づき見上げてみる。
昼間見る華やかさと違い、
それは、どこか悲哀を帯びている。
さだまさし氏が、この季節になると
1本の桜に会いに行くという。
この1年を報告し、これからの1年を思い描くそうだ。
素敵だと思った。
私も真似てみた。
あれから5年。
今年も無事に乾杯できた。
喜怒哀楽が蘇り、感謝と反省を心に刻む。
そして、明日からの1年を思った。
辺りはかなり冷え込んでいる。
幹も冷たくなっているだろう。
少しでも温めようと、ベンチにグラスを置き、木肌に触れた。
「あ?!!」
声を漏らした。
温かいのだ。
仄かな温もりが伝わってくるのだ。
昼間の温もりを体で受け止めているからなのか、
花を咲かせるために体が熱くなっているのか・・・。
寒風に抗わず、しかし、感化されない芯のある温かさ。
何かが込み上げてきた。
本当の優しさを感じ、自分は生かされているのだと悟った。
来春まで、また恥じない毎日を送ろうと思う。
この桜と笑顔で乾杯するために。