寺島尚正 今日の絵日記
2011年11月21日 視界不良
土曜日に、人生2度目の驚きを味わった。
1度目は、今から42年前。
杉並の都営住宅に住んでいたときのこと。
冬の、冷たい雨が落ちてきそうな曇り空の朝。
急に窓ガラスが「ボン!」と音を立てた。
何かが当たったのだ。
それは石やボールが当たったものより、軟らかな音だった。
音のした方を反射的に見ると、茶色く細かい羽毛が2枚浮いている。
雀がガラスに当たったと直感。
直ぐ外に出て、鳥が落ちていないか確かめた。
当たりがソフトだったと見えて、姿はなかった。
ほっとしつつ、間抜けな鳥がいるものだと可笑しくなったのを覚えている。
時は流れて、今回は雨の朝。
南側の窓から紅葉を眺めていた。
すると、突然黒っぽい物体が透明なガラスの上部に20キロくらいのスピードで
ぶつかった。
「ダン!!」
42年前のガラスならば割れていただろうかなりの衝撃音。
白い羽毛が舞い、右斜め下に物体が落下した。
直ぐにベランダを覗くと、そこには鳥が落ちていた。
緑が入ったこげ茶色。20センチ位の鳥だ。
外傷はない。首が少し傾き、白い瞼は閉じている。
細くとがった嘴は開いていない。眠っているようだ。
脳震とうならば、暫くすれば目覚めると思い
雨の当たらない場所に移した。ペーパータオルに包んでおいた。
所用で外出。
日が暮れてベランダを見ると、鳥はまだそこにいた。
全く位置を変えていなかった。体は硬直。
場所を移すことにした。
翌朝、鳥を見た。やはりそのまま。
庭の片隅に穴を掘り、埋め、線香を手向けた。
10年前に転居してきて初めて庭に何かを埋葬した。
不注意だったのか、それとも急に具合が悪くなったのか・・。
調べてみると、「シロハラ」に似ている。
この鳥の一生はどうだったのだろう。
最後の表情が穏やかだったのがせめてもの救いだった。