浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2011年2月28日 温かな霧に包まれて

息子の受験慰労を兼ねて温泉に行った。
近頃は1泊しなくとも、日帰りで天然温泉に浸かれる。
客側のニーズに合わせ、様々な形態に応えてくれるのだ。
彼のリクエストで、何度か行ったことのある、
硫黄の香りがする湯を目指した。
「ゆ」・・紺地に白く染め抜いた暖簾の切れ目に頭を潜らせる。
いつもだと大賑わいの脱衣所は驚くほど静か。
まるでエアポケットのようだ。
20近くある唐編みの籠が全部伏せてある。
ニコニコしながら、競うように服を籠に放り込む。
浴槽へ通じる引き戸を開けた。
あっという間に花火の残り香に似た霧に包まれる。
桶に手をやった。
「カラン!」という音が壁に当たる。
それは湯気に包まれ、少し丸くなって戻ってくる。
早く肩まで沈みたい・・・体を洗う行為ももどかしい。
その時、お互いどんな単語が発せられるだろう。
いよいよ湯船に足を入れる。
共に「うお?!!」という雄叫び。
それは、正確に言えば驚きと忍耐の表現だった。
60度近い源泉は加水されているとはいうものの、
冷えた体には一瞬火傷するほど熱く感じたのだ。
10秒ほど耐え、そろりそろり体を沈める。
湯面が首に近づく頃には体がほぼ馴染んでいた。
去年までの彼ならば、他に客がいなければ迷うことなく温泉水泳大会。
それが今回は首の後ろを揉みながら湯をかけている。
15歳のその行為は、大人しいというか爺臭いというか・・・
「泳がないのか?」
思わず聞いた。
「あはは、温泉の良さが分かってきたと言うのかな・・」
何という台詞だ!?
湯気の中、じっくり浸かる息子をながめながら思った。
「大人への階段を上がっている・・・か」
帰りの車中、堪えきれず助手席で眠る息子を見つつ、にんまり。
「おい、まだまだ階段はあるぞ・・・俺も上っている最中だ」

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ほっとする

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温かな霧に包まれて

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癒しの源

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湯気の行方

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