寺島尚正 今日の絵日記
2009年12月14日 植治の世界
12月12日、知人の結婚式と披露宴の司会を務めた。
前日までの雨が嘘のように晴れた午前10時半、
六本木・鳥居坂近くにある国際文化会館の庭園で人前結婚式が行われた。
作庭者は「植治(うえじ)」の愛称で親しまれた7代目小川治兵衛。
庭園好きにはたまらない佇まいだという。
六本木の喧噪は一切無く、尾長鶏や鳥たちが元気に囀(さえず)っている。
人前式とは、神仏の前で二人の結婚を誓うのではなく、親族はじめ親しい人達の前で
結婚を誓うもの。自由なセレモニーからか最近増えてきているという。
概(おおむ)ね式の手順はこうだ。
1.新郎入場
2.新婦と新婦の父入場
3.赤いバージンロードをある程度歩いたところで、父と新郎が交代し祭壇へ
4.誓いの言葉(新郎新婦二人で声を合わせる)
5.指輪の交換
6.ベールアップ(ウェディングドレスのベールを上げる。二人の垣根を取り払う意味)
7.結婚証明書に二人がサイン
8.司会者が代表になり、二人の結婚宣言を唱え、列席者から賛同の拍手を頂く
9.新郎新婦退場?フラワーシャワー
時間にして、20分から30分の儀式である。
これはこれで、手作り感があってよいものだ。
人前式は3度司会をしたことがある。
しかし、屋外は初めて。
今回、スタッフの見えない努力に胸を打たれた。
前日までの風雨で芝生自体に枯れ葉や枝が散乱している。
それをスタッフ総出で竹箒によって丁寧に掃く。
本番1時間前にリハーサルをする。勿論本番通りに動く。
新郎新婦が歩いた後は、赤い絨毯が芝や枯れ葉でかなり汚れる。
レッドカーペットは、クルクルクリーナーでとった後、
取り切れなかった物は指の作業となる。
これを6人のスタッフが真剣な表情でこなす。
「大変ですね」
「はい。でも、新郎新婦やご親族の皆さんには、最高の思い出となって欲しいですから。」
手がかじかむ朝に、スタッフの額には汗が光っていた。
式が始まった。屋外の開放感と共に幸せのエネルギーが庭園に満ちていた。
スタッフを見た。クールな表情をしていた。
ふと一人と目があった。
向こうから笑顔を見せた。
その笑顔には「幸せの瞬間にまた立ち会えた」喜びで溢れていた。
「自分の仕事にやりがいを持つのが至福」・・・改めてそう感じた。