金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司(青山学院大学法科大学院教授)さんと、団塊世代プロデューサー残間里江子さんが、楽しいセカンドライフを送るためのご提案をお届けする番組『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』。
この記事では、「大人ファンクラブってどんな番組?」という方のために、コーナー「大人ライフ・アカデミー」をもとに作成された大垣さんのレポートをお届け。ラジオとあわせてもっと楽しい、読んで得する「家とお金」の豆知識です。
2020年8月1日の放送は、リスナーメールをご紹介。家の購入時、耐震等級や省エネ基準は気にするべき? という質問です。
建売住宅の購入時、気にするべき基準は?
今回も、お便りを紹介します。
船橋市の、ラジオネーム「ハンムラビ法典対船橋法典さん」からです......すごいラジオネームですね(笑)。
「建売住宅を買う時、耐震等級とか省エネ基準とかって、やっぱり気にしたほうがいいんでしょうか。フラット35が利用可能と大きく謳っているような物件もありますが、違うものなんでしょうか」
ということなのですが。
昨今の地震の多さを考えると、耐震にはお金をかけておくのが安心
順番に考えていきましょう。
まずは耐震等級。これは、最近の大地震の発生頻度を考えると、ある程度は気にしたほうがいいだろうな、とは思いますね。
耐震性というのは、極めて希に(数百年に1度程度)発生する地震力が建築基準法で定められていて、具体的には震度6強から7ぐらいの揺れです。これは、関東大震災時の東京、阪神淡路大震災時の神戸で観測された地震の揺れに相当します。
建築基準法ではこれに耐えられる構造でないと建築確認がもらえません。
住宅の性能評価では、これを耐震等級1としています。
これに対して、その1.25倍が耐震等級2、1.5倍が耐震等級3になっています。
とりあえず耐震等級は2あればかなり安心といってよいと思います。
少し前までは、震度6強~7の地震は、150年に1度ぐらい起こるものだ、というような説明をしていたのですが、最近はいつどこで起きてもおかしくありませんよね。
築20年以上の中古物件を購入する際は、耐震等級は超重要
この相談者の方は新築を購入されるみたいですが、もしリスナーの方で中古の物件購入を検討されている方がいらしたら、耐震等級は必ずチェックしてください。
というのも、実は戸建住宅について、耐震基準が今の基準に改定されたのは、阪神・淡路大震災後の2000年だからなんです。
こういうと、新耐震基準というのはもっと前からじゃないかと言う方があるかもしれませんが、それより前の家は、新耐震でも、今の基準値1を1とすると0.7程度しかありません。
さらに、1981年以前はもっと緩い基準でしたので、調べると多くの場合今の基準値の0.3〜0.4程度しかありません。これが旧耐震基準と言われるもので、それ以降が「新耐震」なのですが、それは2000年を境に新「新耐震」と旧「新耐震」に分かれるわけです。なので、中古の一戸建て住宅を買うときに2000年より前に建った家なのに「新耐震だから安全です」と言い切る人がいたら、ちょっと気をつけてください。
省エネ住宅はかなり快適! でも、費用が高くつきすぎることも
省エネ住宅というのは要するに、断熱性や気密性が高く、エネルギー消費が少ない家のことですね。太陽光発電パネルなどを搭載した住宅なんかも「省エネ住宅」と呼ばれます。
月々の光熱費が抑えられたり、暑さ寒さを感じにくいといったメリットがあります。
一方で、耐震等級のように「最高レベル」があるわけではないので、かけようと思えばいくらでもお金がかかってしまうことは少し考慮に入れておかれると良いですね。
省エネ住宅を建てられる際は、きちんとメーカーさんや工務店さんと話し合いをされたほうが、結果的に自分の納得いく家になると思います。
「フラット35が利用できる住宅」って、どういう意味?
三つ目は「フラット35が利用可能な物件」。これが何を意味するかというということですね。
住宅金融支援機構は、ローンを貸す際に独自の審査を行っています。この審査のことを「適合審査」といい、一級建築士が、家の設計図と実際の工事を照らし合わせて、きちんと建てられた家かどうかをチェックします。
他の金融機関は、こういうチェックを行わないので、そういう意味では安心できますね。
特に、先ほど言った2000年より前の新耐震住宅についても、住宅機構の適合基準では今の基準に近いものが要求されていました。
あとは、住宅金融支援機構からローンを借りると、金利が固定で借りられる上、もしも将来金利が下がった場合は、下がった金利で同じ住宅機構で借り換えができます。
認定長期優良住宅を建てると、ローンにも優遇あり
最後に、こういう基準を一つ一つ考えていくのが大変そう、ということであれば、「認定長期優良住宅」を建てるというのも一つの手です。
認定長期優良住宅というのは、バリアフリー性や耐震性、省エネなどの基準を全てクリアした、非常に安心、安全かつ快適な住宅のことです。
補助金が出たり、税制優遇がある他、住宅金融支援機構から期間50年のローンが借りられるようになります。これが結構、コロナ渦では大きなメリットかな、と思うんです。
50年のローンを借りると、35年と比べて、月の返済額が2割ぐらい下がるんですね。
コロナでどれくらい経済にダメージを受けるのかが不透明な今は、できるだけ固定支出を減らす方法を考えていったほうがいいと思うんです。
とりあえず支払は抑えた上で、余裕があれば、期限前弁済すればよいわけです。
それから手前味噌ですが、私が理事を務めるJTI(一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)では今、認定長期優良住宅を担保とする住宅ローンについて、老後の返済負担が大幅に圧縮される新しい制度を作っているところです。
そういうわけで、認定長期優良住宅はいろいろな面からお勧めです。
少し高くつくかもしれませんが、結果的にかなり安心かつお得になる可能性が高いので、ぜひ皆さんも検討していただければと思います。
今回は、家を購入するときの基準について考えました。
大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ
◆放送日
土曜 6:25~6:50
◆出演者
大垣尚司(青山学院大学教授・JTI代表理事)
残間里江子(団塊世代プロデューサー、club willbe代表)
鈴木純子アナウンサー