漁師が不足している、そう嘆かれている日本の漁業。「きつい」「汚い」「危険」という3Kイメージが付き纏い、加速する高齢化もあります。そして日本で漁業をするために必要な「漁業権」の取得が極めて困難であり且つ煩雑であることも理由の一つで漁師不足は深刻なものとなっています。
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日本の漁獲量はピーク時の3分の1まで低下
日本で漁獲量が減っているのであれば、他国も減少しているだろうと思うかもしれませんが、実際は日本が減少し、中国やインドネシアの漁獲量は増加しています。日本の漁業は、このままマイナス成長すると推測されています。こういった問題があるにも関わらず、漁師、そして海、漁業について関心を持つ人は多くありません。それは、やはり付き纏うイメージによるものなのかも知れません。
漁師不足、そして漁獲量現象の原因
漁獲量が減少しているのは漁師が少ないから、というわけではなく、漁獲量が減ったことにより結果的に漁師になりたいと思う人々が減ったとも受け取れます。漁獲量が減ってしまったことは環境問題や、これまでに行われた乱獲が原因でもあります。2018年に漁業法の法改正が行われ、水産資源の持続的な利用を確保するといった文言が足され、これからの日本の漁業が、衰退するだけで終わらない様に策を講じてはいますが、危機的状況と言われ続けていたにも関わらず、対応はスピーディーなものではありませんでした。
様々な問題により、漁獲量の低下、人手不足が発生しており、このまま行けばマイナスのままとなってしまいます。海に対する環境問題や漁業に対しての意識改革、そういったものが個人に根付かなくては改善が困難であると思われます。
こういった現状にある漁業について、文化放送のラジオ番組『浜松町Innovation Culture Cafe』2020年8月22日の放送では、ヤフーメディアプロデューサーの宮内俊樹さんと、一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン 事務局長であり、ヤフーの社員でもある長谷川琢也さんにご参加いただき、「漁業の新3K」から「漁業に対してできること」について伺いました。
漁師達の声から生まれた新3K
長谷川 親が子供に漁師を継がない様に言い聞かせるといった状況になってしまっています。命の危険があり、労働時間も不安定で新しいことにチャレンジすることが難しい環境でもあります。しかし、そういったネガティブな状況をひっくり返せる様にしていきたいと思い新3K(格好良く稼げて革新的)という言葉で、漁師の担い手育成、漁業を輝かせるプロモーション事業を実施しています。
入山 長谷川さんは、石巻市に移り住み、地元のコミュニティに参加して事業を立ち上げられましたが、そこに参加していくのは難しいものだと思いますが、どうでしたか?
長谷川 移住したことで本気度を漁師の方々に見ていただけたと思います。スーツを着てパソコンを持ってカタカナの言葉を並べ立てても仲良くはなれないと思うので、そういったことはせずに敬意を持って「下から目線」で接していたことで、信用して頂けたと思います。当初は現地の課題解決が主でしたが、未来に繋がるものを地元の人たちと実施すべきだと思い、その時に未来を見つめている若い漁師達がやりたいと言っていることをサポートする形でフィッシャーマン・ジャパンを立ち上げました。
日本漁業の産業予想は一人負け
長谷川 漁師の数や水揚げの量は減っており、自給率も下がっています。昭和50年前後頃では、日本は世界で一番魚を捕っており、魚を食べていたんですが、どんどん一人当たりの魚を食べる量が減っており、十年前、お肉に抜かれました。今は、他の国にも抜かれてしまっています。国連の農水省の様なFAOと言う機関があるのですが、そちらの産業予想で漁業は他の国では伸びるとされていますが、日本の漁業はマイナス成長すると推測され、一人負けの様な状況になっています。
田ケ原 私たち個人は漁業に対して、どの様なことができるんでしょうか?
長谷川 食べて欲しいですね。我々は魚や海藻を食べて育ってきた国民であり、魚を食べる文化というのが日本を育ててきたと思います。海や魚、食文化というものを考えることが漁業のためにできる一歩なのかと思っています。そういった思いから直接お客様に魚を届ける直営店の飲食もやっています。中野駅から徒歩2、3分のところで「魚谷屋」をやっています。実際に漁師と触れ合うといったイベント等も行っています。まだ課題は沢山ありますし、やれていないこともあるので、色々な方に興味を持って頂き、盛り上げていきたいと思います。
浜松町Innovation Culture Cafe
放送日:土曜 18:00~18:57
出演者:入山章栄
過去回:Podcast
毎週土曜日、午後6時から放送している『浜松町Innovation Culture Cafe』。パーソナリティは早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さんが担当します。
当番組はさまざまなジャンルのクリエーターや専門家・起業家たちが社会問題や未来予想図などをテーマに話す番組です。自身の経験や考え、意見をぶつけて、問題解決や未来へのヒントを探ります。