キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、今回も鳥の話です。先週トキという鳥の話を聞きましたけれど、そのほかにも絶滅危惧種という本当に絶滅しそうな鳥が日本にはいるんですよ〜。これも人間によって数が減っちゃった。じゃあ、「人間がどうやって救えるのか?」というお話で、聞きごたえがあるのでしっかり聞いてください。お知らせの後。
今週のサイコーも、山階鳥類研究所の尾崎清明さんです。こんにちは。
こんにちは。
前回はニッポニア・ニッポン−トキ。絶滅寸前のトキを何とか繁殖し、今200羽近くになっているというお話をうかがいました。山階鳥類研究所では、アホウドリの研究もされている。
写真提供:「(公財)山階鳥類研究所」
はい、そうですね。
アホウドリってみんな知ってるけれど、具体的に何かよくわからないですよね。
名前も変ですしね(笑)。
そう。あれは絶滅危惧種ですって?
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そうですね。
ちょっとアホウドリに関して詳しく教えてください。
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はい。アホウドリは非常に大きな、日本で一番大きな海鳥です。
へぇ〜。
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翼を広げると2メーターを越えます。2メーター10センチぐらい。ですから、人間よりも伸ばした大きさは大きいという。ただ体重は5キロぐらいです。
はい。
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絶海の孤島、人のいない無人島に住んでまして、寿命も長いものではたぶん60年ぐらい生きるんじゃないかといわれています。
えぇ〜、すごい!
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アホウドリそのものはわからないですが、コアホウドリという近縁種で60歳という記録がありますので。
すみません、鳥類って平均的に寿命は短いと勝手に思ってるんですけれど。
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小鳥は確かにそうですね。平均寿命は2歳ぐらいです。
2歳ぐらい。
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海鳥は卵を1個しか産まない。1卵産んで大切に育てて死亡率が低いという戦略をとってるので、長生きしないと割が合わないですね。
ほぉ〜。
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そういう戦略の鳥なんです。
だけど、空を飛ぶわけじゃないですか。人間の身体能力は高校生がピークといいますよ。
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はい(笑)。
となると、60歳で空を飛ぶのは相当な体力ですよねぇ。
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そうですね。ただアホウドリは非常に飛び方が上手で、無駄な力を使わない。水面に上昇気流があるんですが、それをないでいくというんですか、うまくグライダーみたいに利用しながらほとんど羽ばたかずに飛ぶんです。
揚力をうまく利用するんですね。
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私どもは発信機をつけた調査もしてますが、1年間に何万キロという距離を飛んでいます。ノンストップです。
へぇ〜。じゃあ、“頭いい鳥”ですね。“カシコイドリ”とか名前を変えてあげたらいいじゃないですか。
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そうですね(笑)。「アホウドリの名前を変えましょう」という話も実はあるんです。
何でアホウドリですか?
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これはどっちがアホウか? たぶん人間がアホだと思うんですが、実は明治時代、鳥島というところにたくさんアホウドリがいることがわかって…。
鳥島って小笠原の?
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ええ。東京都八丈の南にある鳥島ですね。
はい。
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無人島だったんですが、そこに行くとたくさんアホウドリがいて、地上からすぐには飛び立てないんですね。
ほぉ〜。
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翼が長すぎて滑空、滑走してやらないと飛べない。地上で近づくと逃げるんですが、大して速くないのでこん棒などで簡単に殺せちゃったんですね。
助走している最中、人間につかまっちゃう(笑)。
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まぁ簡単にとれるので、アホウだという名前をつけたようですね。
へぇ〜。それは食べられたんですか?
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食べもしましたけれど、メインは羽根をとる。海鳥はたくさん羽根があるので、この羽毛を使う。日本ではあまり一般的ではないですが、羽毛布団の材料に輸出したんです。
いやぁ。
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大きなお金を得て、日本の大きな輸出源でもあったわけですね。
ひどい話だ! そういうことですね。
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それで何十万、何百万というアホウドリが殺されてしまった。
食用ではなくて毛だけむしられて、皮だけになったアホウドリがどんどん捨てられていたんですか?
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そうですね。
かわいそうなアホウドリ! それはいつ頃の話ですか?
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明治時代です。
明治時代。今、アホウドリは何羽ぐらいいるんですか?
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3,000羽ぐらいになっています。
3,000…。
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これもトキと同じぐらいですが、私が生まれた60年ぐらい前に絶滅宣言が出ました。日本からいなくなった。
ほぉ〜。
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1951年にやっぱりちょっといました。1桁、7羽ぐらいだったと思いますが、生き残っていた。それは鳥島にいたんです。それを色々な方法で保護して徐々に増えてきて、今やっと2,300から3,000羽近くなったということです。
これも山階鳥類研究所の?
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もちろん全部ではありませんが、山階の最初の所長が保護すべきだという計画を立てて徐々に増やしてきた経緯があります。
すごい! 今、アホウドリは絶命危惧種じゃないということですか?
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ランクが少し下がりました。ただ、まだまだ人手をかけてやらないとダメだし、鳥島は火山の島なので、せっかく増えた鳥が火山爆発するとまた減ってしまう。小笠原の聟島(むこじま)−昔いて捕っていたところですが、そこに戻してやろうと5年6年かけて私どもがやりまして、今やっと目が出てきたところです。
地図を見ればわかりますが、八丈島の南の鳥島からまたさらに南の…。
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350キロ南の聟島にヒナを運んで育てて、そのヒナが聟島に帰って来て繁殖するというのを心待ちにするプロジェクトです。
尾崎さん、聟島まで行かれて?
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はい、もちろん行っています。
あそこ飛行機もないから。
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もちろん。
24時間ぐらいかかりますよね。
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小笠原からまた船で乗り継いで行くわけです。
あと、有名どころでは沖縄のヤンバルクイナ。あれも絶命危惧種ですね。
写真提供:「(公財)山階鳥類研究所」
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一番危険な状態ですね。
今ですか?
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そうです。今、1,000羽を切っているかなというところです。これはちょうど私どもがトキを捕獲した81年ですが、沖縄で新たな種として発見したんです。
はい。
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それまで地元の人は知っていたんですが、いわゆる学問的には記録になかったヤンバルクイナが認められたということです。ところが、発見から10年ぐらいの間に南のほうからマングースが攻めてきた(笑)。
ハブと戦う動物ですね。
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100年ほど前に動物学者が「ハブを減らすためにマングースを入れましょう」と。
外来種ですか、マングースは?
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外来種です。わざわざ入れたんです。ところがハブは夜行性でマングースは昼間動くので、同じところにやっても全然ケンカしない。お互い避けあって共存してきた。
はい。
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ですからマングースはハブをほとんど食べることはなくて、そのほかの鳥やは虫類や昆虫を食べつくしてしまった。
へぇ〜。
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徐々に徐々に数が増えて、ヤンバルと呼ばれる沖縄の一番北のほうに熱帯林があるんですが、1990年ぐらいに入ってきた。そうすると飛べないヤンバルクイナ、特に卵やヒナをマングースが非常に好んでとったようですね。
ヤンバルクイナって飛べない鳥なんですか?
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飛べない。日本で唯一飛べない鳥です。
えぇ〜! そうなんですかぁ。
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飛べないんです。
ニワトリって飛べる範ちゅうに入るんですか?
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そうですね。非常に不得意ですが、飛び上がって木の上にとまったりすることはできます。
学校でニワトリを飼ってるけれど、あまり飛ばないじゃないですか。逃げる時にバタバタぐらいですけれど。ヤンバルクイナはそれ以下ですか?
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そうですね。高いところから滑空しておりるぐらいはできますけれど、飛び上がることはできない。
じゃあ、高いところにどうやって登るんですか?
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よじ登る(笑)。
ハハハハハッ。
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足を使って、こう上がっていく。
かわいいヤンバルクイナ(笑)。それじゃ、20年ぐらい前に「これはまずいぞ!」と。
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そうです。
つい最近じゃないですか、20年というと。
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その最初の頃に2,000羽ぐらいヤンバルクイナがいたんですが、またたく間に半分になってしまった。一番減った時が700羽ぐらいでした。
ほぉ〜。
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生息場所もどんどんどんどん狭くなって、その場所にはマングースがたくさんいるという状況になったんです。
へぇ〜。
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県や環境省が「マングースを駆除しましょう」ということで徐々に数がコントロールされて、最近やっとマングースが少し減ってヤンバルクイナが戻りかけている。少しいい兆候になってきてますが、まだまだ危険な状態ではあります。
なるほどねぇ。すごい話ですね。今度ぜひ研究所のほうにおじゃまさせてください。
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どうぞいらしてください。
もう時間ですね。今週のサイコーは、山階鳥類研究所の尾崎清明さんでした。ありがとうございました。
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ありがとうございます。
ほんとに種の保存というか、維持するために尾崎さんみたいな方が影で動いて、そして何とかギリギリのところで救っているというお話でした。どうだった、みんな? これがきっかけで、みんなが大きくなってからのことを考えてくれたらいいなぁと思いました。 それでは、また来週も夕方5時半に会いましょう。キッズのみんな、楽しい週末を。バイバ〜イ!