キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ今日のテーマはラボのすぐ近く、モノレールに乗るとすぐ到着できちゃう空港についてのお話です。来月、羽田空港の国際ターミナルが新しくなることがニュースになってますけれど、みんな夏休みに空港行ったかな?この話を聞くと、また空港に行きたいなぁと思いますよ。お知らせの後、サイコーの登場で〜す。
今週のサイコーは二度目のご登場、航空ジャーナリストの秋本俊二さんです。こんにちは。
こんにちは。
秋本さん、僕は去年お会いしたサイコーの中で、秋本さんはかなりトップレベルの“ディープ・インパクト”サイコーです。
ほんとですか(笑)。
飛行機に関して何でもご存じで、僕が「飛行機で揺れるのが怖い」といったら、「ビビっちゃいけない。もっと楽しみなさい」と。
いいましたねぇ、確かに(笑)。
あれから楽しんでますけれど。
そうですか。
シークレットラボのある浜松町から、モノレールに乗るともう20分以内で羽田空港に行けちゃうんですよね。
はい。
来月かな、国際線が新しくなるじゃないですか。これでまた羽田も盛り上がりますよね。
そうですね。だいぶ便利になりますよ、海外旅行も。
日本で一番大きい空港って羽田空港ですよね?
ええ。
成田よりも大きいんですか?
やっぱり国内線が中心なので、発着の便数が多いんですよ。成田はどうしても国際線が飛ぶので、羽田に比べるとそれほど発着回数はないんですね。
はい。
だから発着の便数でいうと、羽田は1日に900便ぐらい。
へぇ〜。
成田はもう少し数が少ない。まぁ両方とも日本を代表する空港です。
そうか、900回か。でも時間の制限があって、限られた時間の中で900回ですよね。
でも、これから滑走路ができて早朝深夜枠でどんどん新しい国際線が入りますので、成田に比べるとゆるいんですけれども。
秋本さんは、ソフトバンククリエイティブから『みんなが知りたい空港の疑問50』、それから『ボーイング777機長まるごと体験』という本を去年と今年にかけて出版されてますね。おもしろかったですよ!
ありがとうございます。
これはおもしろかった。科学心をくすぐる空港の疑問があって、「着陸時のショックはどれぐらい大きいのか?」とか、「滑走路に隠された驚きの仕組み」とか。やっぱり空港は飛行機と風の向きが非常に重要だっていうじゃないですか。
そうです。
ちょっとそのあたりのことを教えてもらいたいんですが。
よくパイロットに聞くと、「追い風に乗ってフライトすると楽だよね」とみんないうんですね。風に乗って行くとそのぶん時間も短くできるので、向かい風で飛ぶのと追い風で飛ぶのは全然疲れ方が違うというんですが、ただひとつ着陸と離陸だけは必ず向かい風でやるんですね。
へぇ〜。飛ぶ時は追い風だけど、着陸とか離陸の時は向かい風。
そうです。というのは、前回はどうして飛行機が飛ぶのかという説明をしましたが、大きな主翼の表面に風を受けて、丸くふくらんだ主翼の表面に風を受けることで気圧が低くなり、上に持ち上げる力が働く。簡単にいうとそういうことで、その風はできるだけ早く吹いたほうがいいんですね。
スキーのジャンプの選手と同じですね。
ええ、そうです。
向かい風のほうが飛距離が出る。
ええ。だから向かい風で離陸すると、それだけ飛行機自体のスピードが少なくてすむんですよ。
へぇ〜。でも、それ不思議だなぁ。
風に向かって行くんだから、どれだけ主翼に風が当たる量が増えるかを考えると。
そうか、そうか。抵抗が増えるから浮き上がるのが早いということですね。
できるだけ離陸着陸はゆっくりのスピードでやったほうが安全面でもいいんですね。
はい。
そのためにどの空港でも、必ず今日はどっちから風が吹いてるといって、向かい風に向かって離陸滑走して行くんですが、たまに逆方向から風が吹くと滑走路を逆に使う。
へぇ〜。それも“あり”なんですか?
もちろん、もちろん。
同じ方向で滑走路を使っているのではないんですか?
ええ。
どこの空港でも?
どこの空港でも同じです。
知らなかったぁ。風向きによって、「じゃあ今日はこっちからにしよう」とか「明日はこっちからにしよう」とか。日によっても「この飛行機はこっちから」とかあるんですか?
あります。ただ見てもらうとわかるように、滑走路の向きは変えられないでしょ。
はい、方向はね。
地面にちゃんとできてるから。じゃあ、どうしているのかというと、例えば空港は「作りましょう」と用地を確保した。「じゃあ作ってくれ」というわけにはいかないんですよ。
ええ。
まず1年以上かけて、1年間の風の向きを調査するんですね。
へぇ〜。
この土地のこの空港はどっちから吹く風が多いのかという1年間のデータをとって、年間を通して確実にこの方向から風が吹くので、「じゃあ、南東から北西に向かって伸ばそう」とか決まってくるんですよ。
去年オープンした静岡空港とかいろいろと問題になってましたけれど、あれはあれで1年かけて入念に滑走路の向きを計画して。
そうです。「地形がこうだから横に置いちゃおう」というわけにいかないんですね。
逆に茨城空港の場合はすでに航空自衛隊が使っていたから、向きは昔から決まっていたわけですね。
そうです。日本列島は、例えば羽田も成田もまったく同じ方向を向いているんですね、滑走路は。
へぇ〜。
南南東から北北西に向かっているんですよ。
興味があったら、ぜひグーグルアースでみんな観てみて。
それは日本列島の特徴で、特に冬場は北からの風が相当強いんですね。
日本は、太平洋側も日本海側も?
ええ。それで南北に伸びるという、だいたいどこの空港もわりと似通ったところが多いんですが、ただ東と西にちょっと傾けてるのは、やっぱり季節風があるので夏場は南東からの風が強まる日があるとか、そのあたりも考慮して。
なるほど、真北にはしないということですね。
そうなんですよ。
へぇ〜。そのほかに空港の疑問として、「濃霧でも飛行機は着陸できるの?」という。
できます、できます。
見えないですよ。
できないと、だって・・・。世界中の飛行機が降りられない。
でも、有視界飛行が原則じゃないですか?
いえ、今はもう計器飛行ですね。
そうなんですか。
特に大きな旅客機は計器に頼って、ILSという計器飛行装置が各主要空港に取り付けられてまして。
アイエルエス?
ILS。2つの種類の電波を地上から、滑走路から飛行機に向かって飛ばすんですね。この飛行機は今、どっちの方向に向いてる。その横方向、横の角度を教える電波と、それからどれぐらいの高さでどういう進入角度で向かっているかをちゃんと発射して、いわば見えない空中に道をつくってあげている。
機械が、電波がですか?
ええ。それをコックピットの装置が受け取って、その道に沿ってだんだん降りていけるようにしている。
はぁ〜。
だから、僕が最近マレーシアのクアラルンプールから夜行便で、朝着く便で帰って来た時に、そろそろ着陸かという40分前ぐらいに「この便はとりあえず着陸を試みますけれど、できない場合には名古屋へ向かいます」とアナウンスがあったんですね。
ええ。
「あぁ、霧だ」と思って窓のシェードを開けてみたら、何にも見えないんですね。主翼の先のほうがもう見えない。
はい。
「これだったら無理かなぁ。でも成田だったら大丈夫だろうな」と思っていたら、だんだん高度を下げていって、着陸の直前で「あっ、見えた見えた」と思ったらすぐボーンとランディングして。
でもアナウンスでは「名古屋へ着陸も・・・」と。
最後の最後まで見えない時には、着陸を履行するといってやめて、またエンジンをふかして上昇して無理だ。あるいはそれを3回ぐらい繰り返して無理だったら、ダイバートといってあきらめて名古屋へ行くとか、いろいろあるんですけれど。
ええ。
ただ成田の場合は、ILSの中でもいろんなレベルがありまして、一番いいレベルが装着してあるんですね。そうすると、ほとんど視界がゼロでもだいたい大丈夫です。
じゃあ、霧はよしとして、ゲリラ豪雨の中では着陸できるんですか?
豪雨は、雨はあんまり問題ない。
大丈夫、へぇ〜。
雨よりも風ですよね。
あぁ風! 雨は大丈夫。
雨は大丈夫です。
そうか、今年はゲリラ豪雨が話題になりましたからねぇ。
そうですね。
もう、こんな時間だ。この時間、あっという間ですよねぇ。
もう終わりですか(笑)。
番組、短いんですよ、あいかわらず。もうちょっと延ばしてもらえればうれしいんだけど。来週もよろしいですか、来ていただいて?
はい、うかがいます。
今週のサイコーは、航空ジャーナリストの秋本俊二さんでした。ありがとうございました。
ありがとうございました。
そうか、科学があったね。飛行機は、飛んでる時は追い風がすごくスピードに乗るんだけれど、着陸あるいは離陸の時は向かい風のほうがサイエンス的にも効率的ということだね。風が向かってくる。それに向かって翼を向けるとふわっと上がるのが早い。みんな、イメージわかる?僕はすごくよくわかったんだけれど。こういうところにも科学があるんだね。でも空港の話だったのに、何だかんだで結局、飛行機の話を聞いてしまった。秋本さんはほんとに飛行機が好きなんだな、とよくわかりました。 それでは、連休エンジョイしてねっ。バイバイ!