京都発 クルマ業界に革命!GLMのEVスーパーカー
文化放送The News Masters TOKYO「マスターズインタビュー」。
今回のインタビューのお相手は、電気自動車の開発、販売を手掛けるベンチャー企業「GLM」の社長、小間裕康(こま・ひろやす)さん。「GLM」は、大手メーカーがしのぎを削る自動車市場に名乗りを上げ、設立からたった4年で量産EV(電気自動車)スポーツカーを開発・販売し、自動車市場に革新をもたらしている。
<京都のベンチャー企業が何故、EV開発に挑んだのか>
京都発のベンチャー企業が自動車市場に一石を投じていることについて、小間社長が「実は、京都はスポーツカーの名産地でもありまして、、、」と話し始めると、「そうなんですか」と、タケ小山は驚きの表情を隠せなかった。
小間さんは続ける。「京都は、トミーカイラ、童夢、コジマエンジニアリングなどレーシングカーやモータースポーツ関連企業が生まれた町でもあり、更に、テクノロジーの町という風にも言われている。京都のテック企業の技術を集めれば、電気自動車の基幹システムは全て出来上がる。まさに、我々は京都の部品メーカーと一緒に車を造り上げた」
「普通に考えたら、自動車産業は無謀だと思うが、チャレンジした理由は?」と、タケは疑問をぶつけた。
「今後は車も電気になる、という発想を聞いた時に、電気メーカーではなく、電気自動車メーカーを造れるのではないか?と考えた。これを100人に言うと、100人共が無理だという。逆に、何で出来ないと思うのか、そのキーワードを1つずつおしえてくれと。それを1つ1つ、つぶしていくと出来るんじゃないか、と考えた」と話す小間さんの顔には、出来ない事を出来る事に変える、上昇志向の強さがにじみ出ていた。
<幻の名車「トミーカイラZZ」を、EVで復活させたプロジェクト>
「GLM」は、1990年代に、京都のチューニングカーメーカーがオリジナルで開発したスポーツカー「トミーカイラZZ」を、EVで復活させ、国内認証を取得し、販売を行っている。EVスポーツカーの国内認証を取得したのは、日本初とのこと。
「最大の難関とは?人?材料?資金力?」というタケ小山の質問に、「全てです」と、即答した小間社長。「最初は、エンジニアに参画してもらうのが大変だった。やがて人が集まってきてくれ、本当のものづくりが出来るようになった。人に悩んだし、当初考えていたような資金では足りなくなってしまう。資金の底がついてしまうと、SONYの元CEOの出井さんや江崎グリコの創業家の江崎さんらが『面白いことやっているね、車造りも良いチームが集まっているじゃないか』と、初期の資金を提供してくれた。
その後、技術が進んでいくと、今度はナンバーが取れない。根本的な安全性に関わる部分というものを、クリアしていかなければならなかった。こういうものを全部、1つ1つこなしていくと、今度は、今まで足りなかった人材が、面白いもの造っているねと、更に集まってきたり、資金の提供者が現れたり、何かを乗り越える度に、リターンが来るようになった」と、語った。
問題をクリアしていくごとに、あいつら本気だなと相手にわかってもらえた。この人達なら大丈夫だと思わせたから投資につながった。小間さんのたゆまぬ努力が実を結ぶ結果となった。
<「GLM」がパリで発表した次世代のEVスーパーカー「GLM G4」>
夢のあるプロジェクト、次世代EVスーパーカー「GLM G4」については―。
「車体もEVシステムも全て1から開発するというプロジェクトだが、実はこのプロジェクト、一旦止めています」と、小間さんから驚きの発言が飛び出した。
「ビジネスモデルとして、まずは完成車を作ってテクノロジーショーケースとしてそれを売る。そして、造り上げた車を、更に大量生産できるようにブラッシュアップしていき、コストダウンしていくことによって、モジュールを他の自動車メーカーに提供するという『プラットフォームビジネス』を展開する。この2ステップで展開する方向で考えていた。
しかし今現在、電気自動車にすぐに市場を変えなければいけないという世の中の流れがあり、世界中の自動車メーカーが、電気自動車に大きく舵を切った。どちらかというと、プラットフォームビジネスの方から、早急に我々の力が欲しいと、依頼が来るようになり、ここに今、チャンスがあるのであれば、集中させていこうと。一旦、自分達のロマンである完成車ビジネスをストップさせて、自分達が食べられる状態にしていこうと。まずはプラットフォーム事業に特化してやろうとしている段階」と、ロマンと現実を行ったり来たりしている現状を、小間さんは語ってくれた。
<GLMの組織論>
約30名の従業員を率いるベンチャー企業のトップとして考える「GLMの組織論」とは。
「私はグイグイ引っぱっていくタイプではなく、プロフェッショナルに全部任せるというやり方をしている。人材採用の時も、自分よりも優秀な人間をどんどん招いて、その人にどんどん任せていく、というスタイル。すると、自由にやっていって、その道で自信のある人が、更に面白い事を見つけていく...ということにつなげられるのではないか、と考えている」と、小間さんは話した。
タケ:「そうすると、社長がいらなくなっちゃいますよ?」
小間:「そうですね(笑)」
タケ:「その時、社長は何をやっていますか?」
小間:「そういう面白い人を集めるという事をやっているのかもしれない」
タケ:「人集めね〜。最近で面白い社員の方はいます?」
小間:「広報の彼はもともとアナウンサーです」
タケ:「本当ですか!役に立っていますか?」
小間:「今まで彼が、(記者としても)取材に行っていた経験を活かし、どういうキーワードがわかりやすいのか、記者目線の発想を持っているので、彼が入ってきてからは、色々なところで取り上げてもらう機会が増えた。そういう一流の人間が集まって来ると、発信力が強くなったり、また、メーカーさんの問い合わせから仕事に変えていくような営業のプロであったり、車を売るプロであったり、エンジニアリングの部品のプロというのが集まるようになると、仕事としても、1つ上の仕事が出来るようになってきているのではないかと思う」
面白い人材を集めるのがどれだけ大事か、ということを思い知らされた。
<今後の自動車ビジネスについて>
電気自動車への移行、自動運転システムの運用など、自動車産業が変革期を迎えている今、タケ小山は、大いに関心のある今後の自動車ビジネスについて尋ねた。
「自動車産業は大きく2つに分かれる。それは、『所有する車産業』と、『所有しない車産業』。実際に、売れていく車は徐々にプレミアムセグメントの割合が多くなってきており、海外を見渡しても、一般車からプレミアムセグメントの比率が上がっているという傾向にある。その中で、我々は『トミーカイラZZ』であったり、『GLM G4』であったり、所謂『面白い車』というマーケットに完成車ビジネスを送ろうとしている。
もう1つの『所有しない車産業』というのは、所謂『シェア』。世の中の傾向として、車の車種で選んでいるのではなく、どういう大きさの車に、どこで乗りたいか、何時間乗りたいか、というところに変わってきている。例えば、沖縄に旅行に行って、どこの車種のこれが欲しいとは指定せずに、『コンパクトカーがいい』、『ワゴンがいい』と、要求する。すると、提示された車も、日本車ではなくても問題はない。どちらかというと、ツールとしての使い方になってきている」と、小間さんは現在のトレンドを含めた細かい説明をしてくれた。
「京都のオフィスでは、自動車メーカー様がいらして、ディスカッションをする機会が増えてきた。我々のエンジニアがよく言う言葉『失敗する開発を、GLMは出来る』。最初から100点が求められる大手の箱の中ではたとえ開発段階であっても絶対に失敗できなかったが、ベンチャーと共同開発であれば、失敗できる環境で開発ができる。失敗を繰り返して、完成品は失敗しないものを造っていく。
そういう試行錯誤を繰り返しながら開発をするという環境が、日本の中に、いつしかなくなってきている。それを我々が提供できるということで、なんとか、この世界の中で会社が存続しているような気がする」と、熱弁してくれた小間さん。「ベンチャーだから失敗できる」だけでは困るが、「チャンスを与えてもらいたい」そして、「絶対に成功させる」という気持ちがこもっている話だった。
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