『dancyu』編集長・植野広生さんが教える「モテる男になるために知っておくべき食の情報」
文化放送「The News Masters TOKYO」のマスターズインタビュー。食いしん坊で、料理大好き。将来は(?)漁師になりたい!というパーソナリティのタケ小山が今回お迎えするのは、食の情報誌「dancyu」の編集長・植野広生さん。学生時代に銀座のキャバレーでの黒服を始め、鰻屋や珈琲屋など様々な飲食店でアルバイトを経験、趣味は料理と音楽という植野さんがdancyu編集長に就任されたのは2017年4月。一目会った瞬間からおおいに意気投合した二人が「こういう男は(きっと)カッコイイ!」論を"期待"を胸に語り合います。
●「朝ごはん」を大事にする男はカッコイイ!
「朝ごはんは一日の活力です!」と植野編集長。
「ガッツリ、しっかり食べる。それで元気に一日が過ごせる。元気な男はモテる!(かもしれない)」
現在、月曜日から土曜日まで早朝の番組でパーソナリティを務めるタケも、この意見には大賛成。
「朝からズドン!と元気にいきたいものですよね」
植野編集長がおススメするのは、「機会があったら、ぜひ築地で朝ご飯を食べてみてください」。観光客にも人気で、早朝からたくさんの人でにぎわっている。築地といえば海鮮丼やお寿司かなと思いきや、「洋食やラーメンをぜひ」。
「大好きでよく行くのは『やじ満(やじま)』という中華のお店。朝から野菜そばとシューマイ半個!を食べます」
「え?シューマイ半個??」と訝しげに確認するタケ。半個と言っても、一個のシューマイが半分ということではなくて、一皿4個入りが半分の2個で出してもらえる注文の仕方なのだ。「あ、それはちょっと常連さんって感じでカッコイイですね」と笑うタケに、20年通っているという植野編集長は、こんな風に頼みますと実演してくれた。
「野菜そば、味噌で、辛め。シューマイ半個ね!」
さて、そんな築地朝ごはんが大好きな植野編集長だが、もちろん自宅で朝ご飯という日もある。どんな朝ごはんを?と気になるところ。「食パンのトーストです!」という答えに、「意外に普通ですね」と返すタケだったが、ここから「バターの乗せ方」についての熱い語りが始まった。
「バターをどのタイミングで食べるか?溶けかかったときなのか、溶け切る前なのか...」とハムレットばりに悩む植野編集長。現時点でのベストの答えは「焼きたての熱々トーストにまずはバターを薄く塗る。→溶けかけたところに、冷たいままのバターをプラス。→溶けたバターと冷たいバターのダブルトーストの出来上がり!」
大声で(ちょっと呆れたように)笑うタケに、重ねるように植野編集長からはこんな言葉が。
「ダブルバターのトーストを食べると、朝からハッピー。自分がハッピーでないと相手をハッピーにできない。相手を100ハッピーにしようと思うと、自分は200ハッピーでないといけない」。
――思わず「参りました!」とうなるタケだった。
●「下町の名店」を知っている男はカッコイイ!
「今、東京のイーストサイドが来てます!」と植野編集長。これまで渋谷・原宿・六本木で遊んでいた女性たちが「今は、浅草に来ています!」
dancyu5月号でも「美味下町」という特集を組んだばかりということで、これまた熱い語りが始まった。「これまでは『下町は安い』というイメージで語られることが多かったのですが、安いだけじゃないんです。『おいしい』『愛がある』『雰囲気がいい』それに加えてなおかつ『安い』!それが大きな魅力です。『安い』だけが注目されるのは、違うと思います」とキッパリ。
そんな植野編集長が個人的に特におススメする下町は「浅草の観音様の裏辺り」。商店街のように店が連なっているのではなくて「いいお店が点在しているんです」。民家の間にポツン、ポツンと店の灯りがともる。一つのお店に通うことで、下町ならではの良さや奥深さに触れることができる。それを「人情の厚さが違うんですよ」と表現する。
「もちろん渋谷にもいいお店はありますが、下町の人情の厚さは格別。通えば通うほど深いところまで行けるし、仲良くなれる。イコール自分にとっての"いい店"になります」。たとえば、通っているうちにお店の人に顔や好みを覚えてもらえると「今日はこういうお肉があるけど、どう?」というように、おススメしてもらえることがある。
「分かる!そういうのって本当に嬉しいですよね」と共感するタケ。「ただ、調子に乗りすぎてはいけない。これは、自戒を込めて...」と続ける植野編集長。「女性を連れて行ったときなどについやっちゃいがちなんですが、常連ぶって『あれ、出してよ』なんて、薦められる前に言っちゃうと、『なんだこいつ、調子に乗って』と思われて、大将の眉毛の左端がぴくっとなって、そんな対応を見ていた女性の眉毛の右端もぴくっ...」----笑わせながらも大事なことを教えてくれる編集長であった。
●「地方の食」を語れる男はカッコイイ!
「地方には、すごい食材や料理、食べ方がたくさんあります」という植野編集長。「だけど、そのことを地元の人は気づいていないことが多いんです」。たとえばこんなことがあった。静岡県の浜名湖の舞阪は「しんこ」(こはだの稚魚)の名産地で、東京のお寿司屋さんでは初夏の旬のものとして喜ばれる高価な逸品だが、取材に行った際に地元の漁師さんからこう尋ねられたという。「こんなに小さいこはだを、どうやって食うんだ?」
ということは、と植野編集長は考える。「僕たちの知らない食材が、地方にはきっとまだまだたくさんあるにちがいない」。
『dancyu』では、毎回巻頭で地方の食材や料理法を紹介している。最近では宮城の閖上(ゆりあげ)の赤貝を取り上げた。ここでひとつ、ちょっとカッコイイ!と思われるかもしれないうんちくをひとつ。「お寿司屋さんで身が厚くて味の濃いおいしい赤貝に出会ったら、『これ、閖上の?』と聞いてみてください。親父さんが『お、お客さん、わかってるね』なんて言ってくれるかも」。味だけでなく香も非常に濃厚だという閖上の赤貝、これはぜひ覚えておきたい。
これまで数えきれないほどの地方取材を重ねてきた植野編集長に、「ひとつだけ、おすすめを教えてください」と無理をねだるタケ。教えてくれたのは兵庫県の明石浦漁港。「あまりにも素晴らしくて何度も通っています」。明石浦漁港には、全国的に有名な明石の鯛や蛸以外にも、年間を通じて様々な種類の素晴らしい魚が揚がるという。「しかも、あんなに魚を大事にしている漁港は他に見たことがない」。
水から揚がった魚を、一瞬たりともストレスを与えないように走って大きなプールのような水槽にそっと入れるのだという。「通っているうちに漁協の方とも仲良くなって、地元の名店にも連れて行ってもらったりしています。世界一おいしい焼うどんも、ここにあります!」いかや蛸、丸ごとのしゃこなど魚介がたっぷりで出汁がきいているというこの焼うどん、「いつか食べてみたい!」。
●カッコイイ男の「デートごはん」マナー
「女性連れのときのカッコイイ食事のマナーも、教えてください」と聞くタケ。
植野編集長いわく「大事なのは"適度"、さらっと、軽い、プチプチトリビア程度にしておくことですね」。たとえばお造り(刺身)に添えられてくる穂紫蘇。これをどうやって食べるのがスマートでカッコイイか?いろいろなやり方があるが、正式には「お造りの上に散らす」とされている。それを、連れの女性に「知ってる?穂紫蘇は正しくはね...」と語ってしまってはいけない。それでは適度を超えていて、いやらしくなってしまう。
「え?じゃあどうすればいいんですか?」
――その答えは「先にさりげなく自分がやってみせる」。で、女性の視線を感じたら「実はこれが正しい作法らしいよ」と軽く伝える。「そうすると、ですね」と続ける編集長。「女性は、『この人、いろんなことを知っているのね!』と、思ってくれる...と思う」(笑)
「言葉で語るのではなく、所作でこなす!これがまずはポイントですね」
続いて聞きたかったのは「カッコイイメニューの選び方ってありますか?」。これについては、「個人的にやっていることですが」と前置きしたうえである技を教えてもらった。「注文を取りに来た方に、こう聞くんです。あなたが個人的に『今日これだけは食べておかないと嘘だろう』って思うのはどれ?と」。
お店のおススメは?と聞いてしまうと、打ち合わせ通りの「売りたいもの」が出てくることが多い。でも、目を見つめて「あなたはどう思う?」と聞くと、一生懸命考えて教えてくれるそうだ。
ステーキの焼き方を聞かれたときにも応用できる。どんなときでも決まり文句のように「ミディアムレアで」と答える人が多いが、植野編集長は「今日のお肉に最適だと、焼く人が思う焼き方で」と頼むそうだ。「一番おいしい食べ方を知っているのは、焼く人ですから」
「うっほー」と、感心しきりのタケ。ついでにこれまで気になっていたことも聞いてみた。「ワインリストからのスマートなワインの選び方は?」ここで、これまで知らなかったワインリストの使い方を知ることになった。
「ワインリストはワインを選ぶためのものではなく、ソムリエさんに今日の予算を伝えるためのものです」
つまり、向かい側の女性には見えないように「例えばこのワインはどんな感じですか?」などと質問しながらワインリストの値段の欄を指差して示す。「ソムリエさんもわかっているから、『ああ今日のワインの予算は6000円なんだな』と察して予算内でおいしいワインを選んでもらえるというわけです」。たしかに女性を前にして「今日の予算は●●円までです」とは言いにくい。このテクニックはぜひ覚えておきたい。
●「食べることを愛する」男はカッコイイ!
植野編集長が今最も注目している食材の一つが「羊」だ。「羊ってちょっとニオイが気になるとか、どうも固くて...というイメージがいまだにありますが、今の羊は全然違いますよ!」
羊の大きな魅力は、牛や豚とは全く違う香りと味わい、食感があること。さらに、焼いても煮ても蒸してもおいしいという使いやすさも備えている。「羊というとジンギスカンかラムチョップくらいしか思いつかない人も多いのですが、普段豚肉を使っているのとおなじ場面で羊は使えます」。
植野編集長のいちばん好きな羊料理はシンプルに、長ネギと羊肉を塩で炒めたものだ。それを食べると「人間という動物が落ち着ける場所はここだったんだと感じる」とまで言うほどで、羊への愛があふれる発言にタケの心にも火が付いた。「羊!実は私も大好き。今すぐ食べたくなっちゃいましたよ」。
御徒町にある「羊香味坊(やんしゃんあじぼう)」というお店では、中国東北地方の羊料理をメインに出している。「そんなふうに地方を限定しても26種類の料理を出しています。羊料理のバリエーションの豊かさがよくわかります」。羊の人気は今年から来年にかけてますます広がっていきそうだという植野編集長。「なんてったって、羊料理には『メ~店』が多いですからね!」......
お得意の(?)ダジャレが飛び出して微妙な空気になったスタジオ内だったが、気を取り直して(笑)植野編集長の『メ~言』ならぬ『名言』を最後にご紹介しておきたい。「dancyu」は、これまでは取材不可でメディアへの掲載は一切NGだったお店や人の紹介を実現している。その取材にはどんなコツがあるのだろうか?
「愛ですね」と、まずはサラッと言い切る植野編集長。
「取材は困るというお店がある。僕たちも店に迷惑はかけたくない。ただ、読者である食いしん坊の皆さんにこんなに素晴らしいお店があることを知ってほしいという気持ちもある。だから、その愛を、その想いを、とにかく伝え続けるんです」
取材拒否を受けても、一般の客として何度でも通う。「ただ食べに行くんです」。そして、その店の料理をほぼ食べつくしたころに再度お願いをする。熱い想いを伝える。
「これは、ビジネスでも対女性関係においても大変有効かと思います」
文化放送『The News Masters TOKYO』のタケ小山がインタビュアーとなり、社長・経営者・リーダー・マネージャー・監督など、いわゆる「リーダー」や「キーマン」を紹介するマスターズインタビュー。音声で聞くには podcast で。The News Masters TOKYO Podcast
文化放送「The News Masters TOKYO」http://www.joqr.co.jp/nmt/ (月~金 AM7:00~9:00 生放送)
こちらから聴けます!→http://radiko.jp/#QRR
パーソナリティ:タケ小山 アシスタント:西川文野、長麻未(文化放送アナウンサー)
「マスターズインタビュー」コーナー(月~金 8:40 頃~)
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