2017.10.05

「ザクとうふ」も「のむとうふ」も豆腐界の革命児、相模屋食料社長の描く夢

nmt事務局
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文化放送『The News Masters TOKYO』内で、組織のトップの生い立ちや経営哲学を伺う「マスターズインタビュー」。今回の舞台は、日本人なら誰もがお世話になる豆腐業界。そこに、『ザクとうふ』『飲むとうふ』などこれまでにない商品を開発・販売し、業界に革命をもたらした相模屋食料。その中心人物こそが、相模屋食料社長の鳥越淳司氏である。文化放送『The News Masters TOKYO』のパーソナリティでプロゴルファーのタケ小山が、豆腐業界の今、そして様々な豆腐革命の神髄に迫った。


◆雪印から相模屋へ。


171005相模屋商品&小尾.JPG


タケ「相模屋に入社されますが、豆腐業界に入って感じたことは?」


鳥越「思っていたイメージと同じでした。豆腐業界にいる人たちは、"これ以上やってもしょうがない""何も変わらない"と悪い意味で誤解をしていて、モチベーションが低かった。輝かしい未来も無いし、いかに今より落ちないようにするかという雰囲気だった。」


業界への新参者・鳥越社長に対し、他の豆腐メーカーの社長からも「ここでは何もしないことが良いんだよ。」と言われた。


タケ「それを聞いてどう思いましたか?」


鳥越「何を言っているんだ?と。でも豆腐価格が落ちていって、価格競争にさらされ、ウチは潰れそうだとか、そういう企業ばかりだから、そういうイメージになるのもしょうがないですね。」


しかし、ここからが違ったのだ。後ろ向きなイメージが蔓延するこの豆腐業界にて、自分が「やれるぞ!」と思えば面白いことになるのではとも思った。


そこで、最初は豆腐作りを基礎から学んだのだ。鳥越社長は元々、雪印乳業で営業を担当。相模屋食料に来てからは製品と販売両方をやった。このキッカケになったのが「雪印食中毒事件」。大阪に「お詫び行脚」に行き、お客様からの「なんでこうなったの?」という質問に、製造上でのリスクなどを知らなかったために答えることができなかった。

鳥越「モノづくりの会社の営業マンがモノの作り方を知らないというのはあってはならないですから。」


◆機動戦士ガンダムファン垂涎の『ザクとうふ』はこうして生まれた


171005相模屋鳥越社長2.JPG


鳥越「ザクとうふは、ある意味、自分へのご褒美だったんです。相模屋食料の工場も拡張し、基本的な事業は良い状態に来たっていうことなので。」


そこで誕生したのが『ザクとうふ』。言わずと知れた、人気アニメ『機動戦士ガンダム』に登場するキャラクター・ザクの頭部の形をした豆腐なのだ。


反響が大きかったのは鳥越社長と同世代の40代男性。朝9時半からスーツでスーパーに行き、かごの中に『ザクとうふ』だけを沢山いれて帰っていくという珍妙な光景を見たのだという。最初、スーパーのバイヤーに「ザクとうふ」を見せた時、ガンダム好きな人は「おお!!」と盛り上がってくれたが、知らない人からは「鳥越さん、もっと真面目にやったら?」と言われたそうだ。当然、そこに馳せる思いも強烈。


鳥越「これは、ザクの一番かっこいいシーンを再現しているんです。ザクはジオン軍のスペシャルな機体。」


タケ「ガンダムの頭でも良かったんですよね?」


鳥越「あ、それはダメですね。全くもって、ダメですね。」


ザクと豆腐には共通点がある。一番大きいのは「量産型」であるという点。一機だけだと力にならないが、沢山いると力になり強い。この熱弁ぶりにタケは圧倒される。『ザクとうふ』の製造にあたって、ザクのライセンスを持っている会社に話をしたが、「お豆腐を通じてガンダムファンの輪が広がる」と話すも、担当者は「ぽかーん」としていた。


結果として「ザクとうふ」はシリーズで460万機販売となる。(※『ザクとうふ』は、一丁二丁ではなく、一機二機と数える)


一方で、社長の息子が好きで「仮面ライダー鎧武豆腐」を作るも、こちらはまったく売れず。「99%売れ残ったと思う。」と当時を振り返る。


鳥越「何でもそうですが、人の評価を気にして、自分を曲げて尖っているものを丸くするのではなく、やりたいものをドーンとやる。批判はいいけど、責任は自分が取る。やれば評価してくれる人は必ず出てくるんです。」


◆アイディア商品の生み出し方とは


171005相模屋商品.JPG


アイディア商品を生み出すコツは「常に自分で考えていること」。街を歩いていても「これは何かに使えないか?」と考えるのだという。「ザクとうふ」に関しては、ガンダムのプラモデル30周年の記念イベントで、全日空のガンダムコラボの飛行機模型や日清食品のガンダムコラボのカップヌードルの展示を見て、普通の人は「こういう企業もやってるんだ」で終わる。しかし、それを見て思ったのは


鳥越「うちもできるんじゃないか?」


そう思えるかどうか。それで熱を持っていろんな人に話をすると、必ず夢は叶うのだという。しかし、そうしたアイディア商品は、売れると思ってやっているわけではなく、豆腐が注目され、豆腐の素晴らしさ・進化している様を感じてもらう方が大きいのだという。


鳥越「むしろ一番は木綿と絹。この二つが廃れると、心配になりますが、アイディア商品は売れようと売れまいと関係ない。お客も潔さを感じるのか、"いいじゃん!"と思って頂ける。やっぱり遠慮してはダメなんだなと思いましたね。」


しかも、この開発は、鳥越社長一人でやっているのだ。「こういうものを作りたい、世に広めたい」という思いからの商品開発。「こんな面白いことは人にやらせられない。」のだとか。


◆転職について


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雪印乳業には6年ほど勤務し、29歳の時に鳥越社長は、相模屋食料に転職。転職への決断をもっと早くしていれば、色々なことを吸収できたと今でも思うのだそうだ。


タケ「転職を考えている人へのアドバイスは?」


鳥越「ごちゃごちゃ考えないっていうことです。」


熟慮を重ねて選んだものは、なんでこれ選んだんだろうとなる。なにも考えずに「これだ!」と言って決めた方が、その分早い。高校生・大学生の時に思っていたことだが、先生が「君たちの前途は明るい!無限の可能性がある!」と言うが、その後の進路相談では「大学に行く?就職する?大学行くとしたら3校は受けろとなり、4つしか選択肢がない」と矛盾する結果となる。


目の前に「これだ!」というものを決めて、やっていれば、早ければ早いほど成功率は上がると思う。


鳥越社長は熟慮を重ねていたら、豆腐業界は選ばなかっただろう。「豆腐は伝統食で、(業界は)ドロドロとしていて、職人さんたちを相手にする」ということを思うと他の職を考えるのではないか。

鳥越「目の前にあるのは"これ"が課題なのだから、"これ"の中で夢を見つけたりしていった方が絶対早い。迷っていてもいいことはない。」


◆鳥越社長の夢と豆腐のこれから


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タケ「今後は、どんな会社になっていくんですか?」


鳥越「色々な豆腐を広めていこうとは思っていますが、基本は木綿と絹。豆腐の業界や事業を確立していきたいです。これはトップメーカーとしての使命。今、町のお豆腐屋さんはどんどん無くなっています。」

競合が無くなること、一見良いことのように聞こえるが、悲しいことだと語る鳥越社長。続けててもダメだから、良いうちにやめようという人がほとんどで、そのお店が廃業を選ぶ。一方、豆腐メーカーは破たんしていっているのが現状。


タケ「小売を相模屋食料のフランチャイズにして出来立てを食べさせるとかできないんですか?」


これには鳥越社長も「うっ。仰る通り」と核心を突かれた様子。豆腐屋さん用の豆腐を作って、廃業しようとしている豆腐屋さんにこれを売ってもらう。また、豆腐屋さんからの「こんな豆腐がほしい」というものを会社に来て、作ってもらい、それを息子さんなどに売らせる。そういうことが仕組みとしてできてくれば、豆腐店事業はもっと幅広くなってくると思っている。しかし、常識はまだそこを打ち破れていない。そこは今後、しっかりやっていきたい。


171005相模屋鳥越社長握手.JPG


その他にも「売上1000億」「豆腐を日本の文化として世界に広げていく」といった目標も掲げた鳥越社長。しかも売上1000億円は、ちょっと見えてきたというのだから驚きである。これまで不可能と思われていたことを可能にしてきた鳥越社長。従来の考えに縛られない、一途過ぎるまでの姿勢は本当に日本の伝統食品・豆腐にさらなる革命をもたらしてくれるだろう。

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